英雄再来 第二十一話 ツレエ11

やべえなあ…!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

海岸線に巨大な鉄の山がある。これだけの建造物がつい先ほどまでは影も形もなかったなどと言っても、この場にいなかった人間は信じないだろう。戦場に散っていた鉄を磁力で集め、ツレエが作り出した鉄の檻。その中にスハドゥは生き埋めとなっていた。





(『やばかった…。』)

その鉄の檻の中に閉じ込められたスハドゥだが、鉄と鉄の隙間に潜り込んで圧死だけは避けていた。

(『…なんて安心してる場合じゃねえ!急いで脱出しないと、おそらくアレが来る!』)

スハドゥは大慌てで鉄と鉄の僅かな間を縫って匍匐前進し始めた。

(『戦いを通して分かったことが二つある…。一つ目、あいつは天才だ。魔力総量が半端なく高い上に、それを完全に制御している。あいつからすれば大魔法使いの魔法すら児戯に等しいんだろうなあ…。そして、もう一つ。あいつは徹底的だ。徹底的に攻めて、徹底的に攻撃して、徹底的に殲滅してくる!もしあいつが徹底的にやるんだったら殺したかどうか曖昧な今の状況から追加攻撃が来ないはずがない!そしてあいつは必ず二通りの攻撃を用意しているんだ。一つは一歩先のための攻撃、そしてもう一つは二歩先を見据えた準備攻撃!もし、俺があいつの立場だったらこの鉄の塊に雷を降らせて完全に息の根を止める攻撃と、鉄の塊から脱出しようとする相手を狙い撃ちにするための鉄の塊攻撃を用意してるに違いねえ!つまり俺が取るべき行動は…!』)

スハドゥは鉄の塊から脱出する寸前に手のひらを構えた。

(『あいつに向けて破動弾を放つ!あいつの気が逸れてる間に安全に脱出だ!』)

スハドゥはもう魔力の温存など考えていなかった。先ほど、使うかどうか迷っていざ使おうとした時に使えなかったことで初心に返った。

(『温存なんて生ぬるいことしてちゃ生き残ることなんて出来やしねえ!先の百年よりも目の前の一秒を生き抜く!忘れてたなんてな…一瞬を生きるために全力で足掻くことを!』)





一方、鉄の塊でスハドゥを押し潰したツレエはすぐに次の攻撃に移っていた。ひょっとしたら生きているかもしれないから止めの一撃を入れておこうというような話ではない。鉄の塊の下敷きになっていても何らかの形で生きているに違いないから次の攻撃に移ろうというぐらいの早さで動いていた。

「はあああああ…。」
ツレエは魔力を収束させていた。鉄の塊を一つ引っ張ってくるだけでも相応の魔力を消費しているはずで、それが大量となれば消費した魔力も尋常ではない。しかし、それだけの魔力を使ったのにも関わらずツレエに疲れの色は見えなかった。それどころかここから更に大技を放とうとしていたのだ。

「天空の彼方よりほとばしる稲妻と雷の精霊達よ!全てを貫く閃光の刃となりて地上へと―――――!

その瞬間、鉄の塊の一部を吹き飛ばしてスハドゥの破動弾が飛んできた。ツレエは呪文を唱えながら交わした。

「――――降り注げ!巨大雷柱(スンデル・チュルーリ)!」

通常、魔法使いが呪文を詠唱する場合、その場を動かない。正確には魔法を発動させるために集中していて動けないのだ。使う呪文や術者の技量によって動けない時間は変わるが、その時間こそが魔法使い共通の弱点と言っても過言ではない。そこを狙えば魔法の発動を失敗させたり中断させたりすることが出来る。魔法使いが近接戦や相手からの連続攻撃を嫌う理由でもあった。

しかし、ツレエにはそんな常識は通用しなかった。息を吐くように強力な魔法を使い、その間に攻撃されようとも集中力を途切れさせることなく回避する。魔法使いなのにも魔法使いとしての弱点が一切なかった。

スハドゥの破動弾を交わしながら放った魔法は、集まった鉄の山を全て飲み込む巨大な光の柱となって降り注ぐ。轟音が辺りに響き、雷光は全てを照らし、電熱は鉄の山を溶かした。



もし、スハドゥが一瞬でも鉄の山からの脱出を躊躇していたら命はなかった。

(『やばかった…!』)
溶ける鉄の音を聞きながらスハドゥはツレエの様子を伺っていた。鉄の山から脱出したスハドゥはそのまま高速で海岸近くの岩場に逃げ込んでいた。
(『…って、まさか…。』)

岩場からスハドゥが見た光景は溶けた鉄の踊りだった。ツレエは磁力を巧みに操り、溶けた鉄を自在に動かして防具と武具を作り出していたのだ。しかも、防具は今自分が着ている歪な鉄の服にぴったりとくっつく形で形成されていた。


ツレエはまだ熱の残る鉄の防具と鉄の剣を身に付けた。スハドゥのいる海岸の岩場を見ながら。

(『やべえ…。完全に気付いてる…。』)

「雷(スンデル)!」
ツレエの雷が岩場に降り注ぐ。

『ちいいぃ!』
スハドゥはそこから出ることを余儀なくされた。そして、飛び出した先には完全装備のツレエが待ち構えていた。

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この記事へのコメント

2016年05月03日 04:29
もう駄目かもしれない・・・。
“魔法使い”と“魔物”の違いが浮き彫りになっていく状況。思い切って土下座とかしたら意表を突けないかなあ(錯乱

八武「困ったなあ、減少している・・・ツレエちゃんの露出度が・・・」
山田「スハドゥの魔力じゃねえのかよ!」
神邪「しかしボディにピッタリの服というのも乙なものだと思いませんか。」
八武「なるほど、そうだった!」
佐久間「吐く息のひとつひとつが攻撃となる! これぞ、ブラスト・エレキ・・・エレキブラスト!」
山田「ポケスペかっ。」
維澄「そんなエレキブラシみたいな・・。」
八武「ツレエちゃんの吐く息を深呼吸・・・ぐわわ電気が!?」
山田「アホか。」
2016年05月04日 10:00
>アッキーさん
どんどんと戦況はスハドゥ不利になっていきます。ツレエの多彩な即死系攻撃の雨嵐の中、どうにか生き延びているスハドゥですがそろそろチェックメイトなのか。これは本当に思い切った手に出るしかないか?生き残るためなら恥も捨てなければならないか。
そして、ツレエの露出度も減っておりますね。女の子の柔肌をいつまでも露出させておくのはいかがなものかと(キリッ)
まあ、単純に先ほど懐に入られたことを警戒して防御も固めているんですね。電撃をまとっているので実質被害はセクハラだけですが、もしスハドゥの能力が密着状態から素早く魔力を吸収出来るものであれば戦況は違っていたかもしれません。ツレエも決して無敵ではない。実際、オネとツヲには…。
一呼吸、一動作で次々と攻撃を繰り出してくるツレエなら「電気息攻撃」も可能かも。雷(スンデル)の範囲攻撃的な感じかな?一部のマニアには電気息が人気…?

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