英雄再来 第二十一話 ツレエ14

嗚呼…大分とスッキリ…。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(嗚呼…苛々した…。本当に苛々した…。けれども、これでスッキリした…。)

スハドゥの叫び声が響き渡る中、ツレエは達成感を覚えていた。今まで封印されて窮屈な思いを強いられていたことを清算出来た気がしたからだ。そしてそれは次第に高揚感へと変わっていった。

(嗚呼…何だか興奮してきた…!)

ツレエは仄暗い笑みをこぼしていた。

(あたしは見下されるのが大っ嫌い!封印されて手も足も出ないあたしは、お前ら人間から見れば虫けらのように見えてたでしょうねえ!でも今は違う!今はお前が虫けらのように地面に這いつくばって、蠢いてもがいているのよ!嗚呼…鏡があったら見せてやりたいわあ、今の無様な姿をお前にねえ!
ねえ、悔しい?悔しいでしょ?今まで封印していて好き勝手出来た相手に嬲られるだなんて…。自分の命が相手の手のひらで転がされるなんて…。でも、これはお前らがあたしにしてきたことそのもの!あたしの命の一部である魔力を好き勝手に使ったことそのもの!あたしが何百年も味わってきた屈辱を、今度はお前に味わってもらうわ!)

「さあ、鳴きなさい!喚きなさい!もっと!もっともっと!もっと無様に鳴いて!もがいて!虫けらのように!」

ツレエの放つ電撃が、彼女の感情の昂ぶりと共に強さを増していく。

『がああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』

スハドゥの体が限界を迎えようとしていた。

(『死にたくねえ…!』)

スハドゥはまだ諦めてはいなかった。

(『まだだ…!まだ、まだだ…!』)

脇腹には鉄の槍、左手には鉄の剣が突き刺さり、体全体には電撃がほとばしる。それでも、スハドゥは勝機を掴もうと残った右手を動かそうとした。

その動きはツレエにも見えていた。スハドゥがまだ諦めていないことをツレエも感じ取っていた。だが、スハドゥがどれだけ右手に指令を送ろうとも、ツレエの放つ電撃が強過ぎて思い通りに動かない。

『破…ああああああああああ!!!動…うあああああああああ!!!』

どうにか呪文を唱えようと試みるスハドゥだが、絶えず流れる電撃がそれを妨害する。スハドゥの魔法は完全に封じられていた。


だが。

(『死にたくねえ…!死にたくねえ…!死にたくねえ!!!』)

死ぬ間際の極限の集中力が働いた。スハドゥは混濁し始めた意識の中で、魔法を使った。

トルが魔法を覚えるために体調のいい日に無理のない範囲で練習していた破動弾。その日、眠る前には頭の中で何度も練習風景を反芻していた。スハドゥはそんなトルをずっと見てきた。

(『死にたくねえ!!死にたくねえ!!!あいつの顔めがけて破動弾を撃つんだ!!!それしかない!!!我が眼前の敵を撃ち砕け、破動弾!!!!!』)

実際には、スハドゥは呪文を声に出せていない。右手もかざしていないのでどの方向に撃つかも定まっていない。それでも、スハドゥの頭の中ではしっかりと意識出来ていた。自分が右手をかざして破動弾を撃つ姿を。










ツレエにとってそれは驚くべきことだった。自分の目の前に突如として破動弾が出現したのだから。

(えっ…?)

爆発音が響き渡り、電撃が止まった。

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この記事へのコメント

2016年05月08日 12:02
興奮してきたというのは、性的な意味ではなくて、鬱憤を晴らす意味ですよね・・・多分。
出るか極限状況からの破動弾。しかしツレエに通用するかどうか・・・?

佐久間「油断? これは余裕というものだ。」
山田「そうなりかねないから困る・・。」
佐久間「しかもツヲが身代わりになるというのだから、もう勝機は無い。」
山田「ツヲは出ない。」
佐久間「妹のピンチに駆けつけるのが真の兄だと思わないか。」
山田「そもそもピンチなのはスハドゥなんだが。」
2016年05月08日 21:53
>アッキーさん
ええ、そうですね(目を逸らしながら)。まあ、ツレエにSの気質があるならば、両方ということになるのかもしれませんが。
スハドゥの最後の一手が炸裂。足掻いて、もがいて、必死で生きようとする意志が、最後の攻撃を可能にした。窮鼠猫を噛む。電撃は止みましたが、ツレエはどうなったのか。
この一発は油断でもらったか、それとも余裕で受け止めたか。ちなみに時系列的にはツヲさんは飛鳥花さん連れて、フォウルと戦っている辺りです。なので、残念ながらツヲさんが駆けつけることはありませんね。スハドゥ、ピンチ…。あ、でも、ツヲさんが出たら妹に悪い虫が付かないようにと暴走する可能性大。多分、ツヲさんは来なくて正解だと思います。

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