英雄再来 第二十一話 ツレエ17

嗚呼…ちょっと嬉しいだけ…。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「く、くく…。」

海岸に鎧を着た女性が一人佇んでいる。

「あっはははははは!!」

そして、周囲には雷撃で砕け散った鉄の塊や岩の塊が転がっていた。

「出来た…出来た…!出来たあ!!」

突如としてツレエの周りに電撃が迸る。一つや二つではない。何十、何百と出現し、様々な方向へと走っていく。

「なるほど~。こうすればいいんだ…。」

ツレエは呪文を唱えていない。何かしらの予備動作があった訳でもない。しかし、これらの魔法はツレエが放ったのだ。

「結構遠くにも出せるなあ…。練習すればもっと遠くに出せるかな…。」

ツレエは雷の国の大魔法使いとの戦いで、相手が最後に見せた無呪文、無動作での魔法発動を完全に自分のものにしていた。

(これでようやく戦えるかも…。本気のツヲ兄と…!)

ツレエの脳裏にかつての兄の言葉が蘇る。


――――――――――――――――――――

「―――――これで分かっただろう、ツレエ。今のツレエに、僕は絶対に本気を出さない。」

――――――――――――――――――――


(あたしはオ姉と戦って、オ姉に本気を出させるところまでは戦えた…。でも、ツヲ兄には…。)

ツレエは目を伏せた。だが、次の瞬間にはカラリと表情が変わった。

「ふ、ふふ…!」
(でも、今は違う!あたしは強くなった!今度こそツヲ兄に本気を出させる…!それだけじゃない!そのままツヲ兄に勝つ!あたしがツヲ兄を越える!)

その時、ツレエの中の冷静な部分が語りかけてきた。


ツヲ兄に勝ってどうするの?


(ツヲ兄に勝って?その後…?う~ん…。)

突然、ツレエは閃いた。

「そうだわ、ツヲ兄も調教しよう。そして変態紳士から紳士にあたしの手で進化させればいいんだわ。」





その時、遠くから声がした。
「ツレエ様ー。」
一人の少年が魚を持ってこちらに駆けて来る。
「大物が釣れましたので献上に上がりましたあ。」

「ふふ、流石はあたしの優秀な僕(しもべ)だわ、トール。」

その少年はかつての雷の大魔法使いトルであった。だが生まれ持っての強過ぎる魔力によって常に体が傷付いていて、魔法の補助がなければちょっと走るだけでも息切れして倒れる彼が元気良く海岸を走る姿は異様であった。もし、かつての彼を知る者がいれば大変驚いただろう。しかし雷の国は崩壊し、その生き残りもトル以外にはいない。

何故、トルが常人のような健康を手に入れたのか。それはツレエの主従契約魔法による副次効果によるものだった。かつての大魔法使いカトレーアはハデスという者と魔法で主従契約を結んでいた。ハデスは主人であるカトレーアから一定以上離れると電撃を受けた上に引き戻されるのだが、代わりにどれだけ傷付いてもカトレーアが死なない限り死ぬことはないし傷もすぐに治る。

ツレエもまた魔法によってトルと主従契約を結んだ。それによりツレエはスハドゥの記憶を引き出して、魔法の無呪文、遠距離発動のコツを掴み、自分のものにしたのだ。それが出来るようになったのは僅かに三日後のこと。ツレエの魔法の才能は底なしであった。

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この記事へのコメント

2016年05月11日 23:59
そこには元気に走り回るトルの姿が・・・!
なるほど、結果的にスハドゥの頑張りがもたらした結果なわけですね。

>「そうだわ、ツヲ兄も調教しよう。」
名案ですね!

しかし戦闘能力は、オネ>>>ツヲだと思っていましたが、かつてのツレエではツヲの本気を引き出せなかった・・・?
これはツヲのフェミニズムが筋金入りなのか、オネがすぐ本気になるのか、その両方なのか。

山田「何はともあれ、良かった良かった・・・?」
佐久間「何で疑問形なんだよ。普通に感動するシーンだろ。」
2016年05月12日 00:02
しまった、多分ツレエのセリフが引っかかってBOXへ!
2016年05月12日 21:15
>アッキーさん
コメント救出完了!
スハドゥの頑張りが実を結び、トルの生きながらえる未来が実現しました。先代の雷の大魔法使いである長老や姉のアクア・マリンが見れば泣いて喜ぶ光景かと思います。(僕になっていることを除けば)。めでたし、めでたし…?
そして、ツレエは次なる下僕を求めてターゲットをツヲさんに絞ったようです。昔のリベンジマッチの意味合いも篭っているとは思われますが…。やっぱりツレエは女王様気質があるのか。オネはどちらかと言えば狂戦士の方か。
オネとツヲでは戦闘能力はオネの方が上かと思われます。今までツヲさんはオネに勝ったことはありません。しかし、女好きもとい、フェミニストのツヲさんがオネに本気を出したことがあるのかどうなのか…。まあ、問題はツレエに対して本気を出さなかったのか、それとも出せなかったのかということでしょうか…。オネがすぐに戦闘モードに突入するのは間違いないかと思いますが。さてさて、真相は如何に…。

オネ「姉より優れた弟は存在するかどうか?愚問だな。」
ツヲ「オ姉さんの強さは本物だよ…。」

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