英雄再来 第二十二話 過去のツヲ4

必ず、ミッドを超える。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「申し訳ありませんがそれは出来ません。」

チュルーリが何かを言おうとするよりも前に、ミッドはそう言って僕に向かい深々と頭を下げた。

「何故ですか。」

「チュルーリ様より、ツヲ様の教育を命じられております。死んでは使命が果たせません。」

「勝てない、ということですか。」

「はい。その通りです。」

僕は押し黙ってしまった。それを見ていて、母さんはオ姉さんのいるだろう方へ歩き出し始めた。



「ただもしツヲ様が、このミッドから学ぶことが何一つないと仰るのならば、最後の教育として殺試合(ころしあい)をいたしましょう。」

その言葉を聞いて母さんは振り返り、声を荒げた。

「ミッド!」

「はっ。」

「…。結果の見えていることはわざわざしなくて良い。」
ミッドに向けていた目をギョロリと動かし、母さんは僕を見た。
「ツヲもだ。ミッドを労われ。」

「チュルーリ様。」
その僕と母さんの間にミッドが割って入った。

「ツヲ様の教育はチュルーリ様より拝命いたしました。このミッド、チュルーリ様のご命令の全てを遂行することに命をかける覚悟で臨んでおります。」

「…それは、ツヲの教育もするし、私との約束も違えない、ということか?」

「はっ。その通りです。」

沈黙。その後は重い沈黙だった。時間にして数秒だったか、数時間だったか、覚えていない。張り詰めた空気が僕の体を突き刺し続けたことだけは覚えている。






そして、その沈黙を破って母さんはため息一つ吐いた。

「分かった。ミッドが私の命令を違えるはずがないからな。」

そう言って、母さんはのしのしと歩いて去っていった。



母さんの姿が見えなくなった辺りでミッドが僕に声を掛けてきた。

「ツヲ様、まずは穴を掘りましょうか。この死骸がいつまでもここにあったなら不愉快でしょうから。」

僕はコクリと頷いて水で地面を穿って、人一人が埋まるぐらいの穴を三つ作った。

「流石です、ツヲ様。魔法の扱いも手馴れたものになりましたな。」

その日はミッドと戦う気にはなれなかった。ただ、ミッドを超えたいという気持ちが消えることはなかった。










チュルーリが住処の外まで来た時、そこにはオネが立っていた。

「さっき到着した…という訳ではないようだな。少しは速さが身に付いたか。だが――――。」

「だが、ハイジマバイカには及ばない。そう言いたいんだろ、クソババア。」

「及ばない?「遠く」及ばない、だ。まあ、早く来れたことだし訓練場にいくまで教授といくか。」

そう言ってチュルーリはオネの手を掴んで歩き始めた。直後、オネはチュルーリの顔面目がけて飛び蹴りを繰り出した。チュルーリはそれを交わしつつ、掴んだ手を振り回し、オネを地面に叩き付けた。

「がっ!」

地面がへこんだ。

「オネ。お前の歩く道は険しい道だ。何せ、この世界で一番強くなることだからな。そのために私よりも、ハイジマバイカよりも強くならなくてはならない。しかし、お前が歩くと決めた道だ。とっとと走って、まずは私に追いついてみせろ。」

「言われなくても…!」

大陸中央の住処から遠く離れた場所に行くまでにも、チュルーリとオネの戦いは続いた。

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この記事へのコメント

2016年07月29日 22:59
まあ、そう答えますよね。安心しました。
そしてチュルーリの反応が思ったより強くて、心が温かくなります。
このあたりも含めて、チュルーリに“強さ”を感じますね。オネが勝てない理由が何となくわかる・・・。

山田「流石チュルーリ、強いな。」
佐久間「翼ならオネを正しく導くことも出来るだんろうけどなァ。」
八武「ほう。」
佐久間「私は虐殺が好きだが、それしか頭に無かった頃よりも、守るものが出来てからの方が強くなった。」
山田「確かにそうだな。」
佐久間「まあ、単純に成長したのもあるし、守るといっても支配なんだが・・・。」
山田「いや、言いたいことはわかる。俺も人間は強いと思う。烏合の衆は弱いが、多角的な力を得た“人間”は強い。」
2016年07月30日 11:48
>アッキーさん
ミッド、命の危機!と思いきや、チュルーリとの約束のために戦わないという選択をしました。そして、チュルーリが如何にミッドを思っているのかが伺いしれます。最初の出会いの時からチュルーリはミッドに常に私のそばにいろ、と言い、ミッドはそれを今現在も忠実に実行しているのです。まあ、チュルーリは既に千年を超えるほど生きていますが、オネは生まれて一年前後。年季が違いますね。

さて、良き指導者に巡り合えれば正しく導いてもらえるとは思いますが、現在オネを導けるのはチュルーリのみ。流石に、オネの相手を毎日出来るのはチュルーリか翼ちゃんぐらいのものでしょう。これから先、オネは戦い以外のことを知っていくのかどうか。そして、英雄再来 第二十話 オネの暇潰し4
http://92428657.at.webry.info/201601/article_7.html
でチュルーリが言っていたように人間も強いんだと実感する時が来るのか。その時、オネが一歩成長する時だと思います。

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