英雄再来 第二十二話 過去のツヲ7
全身で、全開で。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『水剣(ワーオルド)!』
残り44秒。巨大な水の塊と化したツヲの体から無数の水の剣が飛び出し、動けないミッドに向かって様々な方向から斬り付ける。その斬撃は地面をも深く斬り裂いた。だが、ミッドは斬り裂けなかった。何故なら、その瞬間ミッドは脱出していたのだから。
無数の水剣(ワーエドレ)を回避して、ミッドは尋常ではない高さまで飛び上がっていた。地面にはツヲの手に掴まれた長靴だけが残っていた。
(『靴に強力なバネを仕込んでいたか。でも、空中に逃げたのは失敗だよ!』)
『水針(ワーエドレ)!』
残り42秒。ツヲの体から無数の水の針が回転しながら出現する。ツヲのいる範囲全てが針の床と化した。逃げ場などない。ミッドが落ちてくるまで2秒前後。
その時、ミッドは背中に手を伸ばした。取り出したのは短い棒に平べったい丸いものが付いている武器。だが、取り出した瞬間、棒は長く伸び、丸い部分は膨らみ、大槌に変わった。
(『折り畳み式の武器!?でも、水針(ワーエドレ)が全てを貫く!』)
ツヲの考え通り、水針(ワーエドレ)は大槌を貫いた。だが、振り下ろされた大槌の威力までは殺せなかった。
『ごっ!!?』
瞬間、再びツヲに衝撃が走る。
(『勁による衝撃波!武器越しでも伝えて来れるのか!?』)
大槌から放たれた衝撃は水と化したツヲの全身まで行き届く。その衝撃に耐えられず水針(ワーエドレ)は形を保てず崩れた。ミッドは叩いた大槌を起点にして棒高跳びの要領で遠くに飛んで着地した。そして、素足で濡れた大地をしっかと掴むとすぐさま体を翻し、二本目の短剣を取り出して水と化しているツヲに向かって突き刺した。
「雷(らい)っ!!」
その電撃はツヲの全身まで行き渡った。だが、同時にミッドもその電撃を浴びる結果となった。
『がああっ!?』
「ぐぐ…!!」
残り時間は34秒を切った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『水剣(ワーオルド)!』
残り44秒。巨大な水の塊と化したツヲの体から無数の水の剣が飛び出し、動けないミッドに向かって様々な方向から斬り付ける。その斬撃は地面をも深く斬り裂いた。だが、ミッドは斬り裂けなかった。何故なら、その瞬間ミッドは脱出していたのだから。
無数の水剣(ワーエドレ)を回避して、ミッドは尋常ではない高さまで飛び上がっていた。地面にはツヲの手に掴まれた長靴だけが残っていた。
(『靴に強力なバネを仕込んでいたか。でも、空中に逃げたのは失敗だよ!』)
『水針(ワーエドレ)!』
残り42秒。ツヲの体から無数の水の針が回転しながら出現する。ツヲのいる範囲全てが針の床と化した。逃げ場などない。ミッドが落ちてくるまで2秒前後。
その時、ミッドは背中に手を伸ばした。取り出したのは短い棒に平べったい丸いものが付いている武器。だが、取り出した瞬間、棒は長く伸び、丸い部分は膨らみ、大槌に変わった。
(『折り畳み式の武器!?でも、水針(ワーエドレ)が全てを貫く!』)
ツヲの考え通り、水針(ワーエドレ)は大槌を貫いた。だが、振り下ろされた大槌の威力までは殺せなかった。
『ごっ!!?』
瞬間、再びツヲに衝撃が走る。
(『勁による衝撃波!武器越しでも伝えて来れるのか!?』)
大槌から放たれた衝撃は水と化したツヲの全身まで行き届く。その衝撃に耐えられず水針(ワーエドレ)は形を保てず崩れた。ミッドは叩いた大槌を起点にして棒高跳びの要領で遠くに飛んで着地した。そして、素足で濡れた大地をしっかと掴むとすぐさま体を翻し、二本目の短剣を取り出して水と化しているツヲに向かって突き刺した。
「雷(らい)っ!!」
その電撃はツヲの全身まで行き渡った。だが、同時にミッドもその電撃を浴びる結果となった。
『がああっ!?』
「ぐぐ…!!」
残り時間は34秒を切った。
この記事へのコメント
ミッドは自分の弱さを知っているがゆえに、迷いが無いですね。吹っ切れた全力、開き直った戦い方です。
佐久間「ミッドはツヲの教育係。ツヲの手は知っている。具体的に知らなくても、読める。だがツヲはミッドを知らない。」
山田「次の手が読めないから、てこずっているということか。」
佐久間「時間制限が無ければ、ツヲの勝ちだ。そもそも精霊だしな。だが、敢えて時間を制限することで、ツヲにプレッシャーをかけた。」
八武「うむ、老獪。」
山田「魅せてくれる、ミッド。しかしまだ半分か。」
八武「見てる方が焦るねぃ。チュルーリは気が気じゃないだろう。」
佐久間「チュルーリは別のことも考えてる。」
山田「そうなのか?」
佐久間「ただ死なせたくないだけなら、最初から戦いを許可しない。」
山田「それもそうか。・・・そして、戦いを許可した気持ちがわかる。俺でも止めない。許可しなければならない戦いがある。」
圧倒的なパワーを持つツヲさんですが、得意不得意も存在します。特にこの頃はこの形態になるとコントロールが雑。都市壊滅とかなら向いていますが、小さくとも強力な個を潰すには向いていません。かといって人間形態でも、有利かと言われれば…。
押しているようにも見えるミッドですが実の話一歩間違えれば即死。崖っぷちの状況にいて、全力を出さなければすぐにでもツヲさんに殺されます。それゆえに迷わないし、全力全開、自分の持ちえる力の全てで戦います。
それから事前情報も全然違いますね。ミッドはツヲさんが出来ること、教えたこと、それから可能性のこと、大体全部把握しています。一方で、ツヲさんはミッドが魔道具使いであることすら知らなかった。というか、ミッドが教えなかった(そもそも見せる機会がなかった)だけですが。
それから時間制限は明らかにプレッシャー掛けてますね。普通だと絶対に勝てないことを分かっているので、自分の有利な試合形式を提案しました。あの段階からとっくに試合は始まっていたのです。
時間にしてまだ半分。これほどまでに長くて短い26秒はそうそうないでしょう。こんな状況なので心の中ではかなりカリカリしてそうなチュルーリですが、一方で表面上は冷静に時間も数えているはず。チュルーリ的には少なくともミッドの寿命を縮める戦いであることは間違いないのですが、やっぱり誰しも戦わなくてはならない時というものがありますね。