英雄再来 第二十二話 過去のツヲ8

なりふり構わず。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

戦いが始まって少ししてチュルーリは、とある音に気が付き隣のオネを横目で見た。


カリッ。カリッ。

オネは自分の爪を噛みながら食い入るようにツヲとミッドの戦いを見つめていたのだ。そしてポツリと呟いた。
「強い…。」

「かかっ。私のミッドは強いだろう?」

チュルーリのその言葉を聞いて、オネは初めて自分が無意識に言葉を吐き出していたことに気が付いて驚いた。咄嗟に何か言おうとチュルーリの方を向いたが、オネは言葉を飲み込み視線を戦いの方に戻した。そして再びツヲとミッドの戦いを凝視していた。





『あああああ!!!』

ツヲは自分の体を思いっ切り振り回した。力を込めたツヲの体の水は水圧が高まり鉄ほどにまで硬さを増す。棍棒で叩かれたかのように周囲の地面は抉れ、刺さっていた短剣はすっぽ抜け、ミッドにも命中して弾き飛ばすことに成功した。だが、ミッドには水弾きの衣がある。受身を取って着地すると体勢を整えてツヲの方に向かってきた。手には長剣。受身を取る時に先ほど捨てた物を拾ったのだ。

「おおおおお!!!」

残り29秒。ミッドは剣を振り切った。その斬撃は水を斬り裂く。だが、ツヲは斬られてもすぐに元に戻る。それだけではない。斬られたと同時に集まった水が巨大な拳となってミッドに向かって飛んできた。

ミッドはすぐに横に飛んで交わした。ぬかるみの中での俊敏な動きは見事であった。だが瞬間、地面から噴き出した水がミッドの素足を掴んだ。ツヲは既に地中の中に自分の手足を伸ばして準備していたのである。

残り25秒。一度はミッドに交わされたツヲの水の腕が、戻ってくると同時に動けないミッドに強烈な一撃を与えた。水弾きの衣を着ているとはいえ足を掴まれている以上、衝撃はまともに受ける。

「がっ!!」

ミッドの全身に大岩が当たったかのような衝撃が走る。水弾きの衣がなければ水圧で押し潰されていたので、威力は軽減されている。と言っても相手は暴れるだけで地形を変えてしまうツヲの一撃。これで勝負が決まってもおかしくはなかった。

だが、ミッドは攻撃を受けながらも反撃に出た。長剣を捨てると同時にツヲの巨大な腕に二つの掌を当てる。

「奮(ふん)っ!!」

またしても勁が炸裂。衝撃波によってツヲの腕が弾けてバラバラになる。しかし、元は水。すぐに元に戻る。そして、肝心のミッドの足は地面から伸びた別の水の腕に捕まって動けない。

残り21秒。ミッドが足の水も弾こうとしゃがんだ瞬間だった。太陽の光が鈍くなった。ミッドの周囲は水と化したツヲが完全に囲んでいたのだ。ミッドは水に押し潰されるようにツヲに飲み込まれた。

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この記事へのコメント

2016年08月02日 12:12
オネが爪を噛んだり、思わず声が漏れてしまうあたりが、何だか凄くリアル。純粋さを感じますね。
戦いは後半、ミッドがいなし続けていると思いきや、ついにツヲの逆襲が・・・? あああ!

山田「チュルーリが可愛いぞ。」
八武「うむ。」
佐久間「お前ら、ミッドを応援しろよ。」
山田「もちろん応援している。いや、信じてる。この窮地もミッドなら凌げるはずだ!」
神邪「あらためて、水の万能さを感じますね。」
佐久間「汎用性ではゼロに次ぐだろうからな。」
維澄「夫自慢をする妻に萌えた。」
佐久間「私も山田を自慢するべきだな。勉強になる。」
2016年08月02日 18:55
>アッキーさん
最初はツヲの圧倒的勝利を予想していただけに、オネにとっては驚きの予想外の展開だったでしょう。ツヲさんの実力が分かっているからこそ手を抜いていないことも分かっている。それだけにミッドの戦いっぷりに目を見張っています。しかし、ツヲさんもやられてばかりではありません。大量の水という優位性を活かしてついにミッドに牙を剥く!しかし、ミッドなら…ミッドなら何とかしてくれる…はず!

そして、チュルーリの自慢げな台詞!本当はこの後からも「魔道具はミッドの手作りだ」とか「毎日鍛錬を積んでいたのだ」とか山ほど自慢したいところですが、一言だけで済ませておくクールさ。カウントもしないといけませんし。さあ、残り時間は三分の一の約21秒。勝負の行方は…?

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