英雄再来 第二十二話 過去のツヲ9

最後の最後まで足掻く。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

残り19秒。大量の水と化したツヲは完全にミッドを飲み込んだ。このままでも溺死は免れない。しかし、今のツヲがそんな時間のかかることをするはずがない。一気に収束し、内部の水圧を鉄と同等の強度まで上げる。それでミッドは潰れて死ぬ。この勝負、あと一秒あればツヲが勝っていた。

バチンッ!!

ツヲがミッドを圧死させようとするまさにその瞬間、ツヲは外部から強烈な電撃攻撃を受けた。

(『なっ!?』)

それはミッドが捨てたはずの短剣からだった。持ち主が離れているにも関わらず発動出来る遠隔操作型の魔道具は非常に珍しい。そして扱いも難しい。だが、ミッドはそれを成しえるだけの技術を身に付けていた。魔法使いであっても早々出来るような芸当ではなかった。

バチンッ!!

『がっ!!』

そしてミッドが捨てた短剣は合計二本。ツヲはまたしても別の場所から飛んできた電撃によって、一瞬体の自由が利かなくなった。ミッドにとってはその一瞬が生死を分ける一瞬であり、決して逃してはならない反撃の機会の一瞬でもあった。

残り13秒。ミッドを包んでいた水が全て弾き飛ばされた。ミッドが前方に放った強烈な勁が発生させた衝撃波によるものだった。本来なら前方の部分しか吹き飛ばないが、この水はツヲという一塊である。一部に当てた強烈な衝撃波が水の他の場所へも伝わり、合わさり、より大きな衝撃波となって水をかき乱し、ツヲは体の制御が出来なくなって飛沫と化したのだ。

『るあああああ!!』

それでも、ツヲは叫びと共に自分の体を寄せ集めた。無理やり自分の体を整え、そして体の水圧を高めてもう一度攻撃に出た。その巨体から繰り出される、地面をも軽々と砕く水の腕が何本もミッドに向かって襲い掛かる。
ぬかるんだ足場の中でミッドはツヲの攻撃をギリギリで避け、シワリジワリと前に出る。大型のツヲ相手なら危険であっても前に出て懐に近い方が、ツヲが攻撃を当てにくいことをミッドは分かっているのだ。

『ぐおおおおお!!』

ツヲも攻撃の手を緩めない。じわじわとミッドの周囲を狭めていく。そして、ミッドがぬかるみと攻撃回避の二重奏で隙が出来た瞬間だった。

『水針(ワーエドレ)!!』

ツヲの体の全てから隙間なく水の針が飛び出した。ミッドがどこに逃げても必ず突き刺さる配置。そして、水圧を上げているために水弾きの衣でも防ぎ切ることは出来ない。





一本の水針(ワーエドレ)がミッドを貫いた。水弾きの衣と水針(ワーエドレ)が朱に染まった。

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この記事へのコメント

2016年08月02日 22:04
真っ赤なレイアウトで、まさか・・・と思いましたが、やはり当たる胸騒ぎ!
包み込む攻撃を回避したのは流石ですが、最後はツヲの勝利・・・?

・・・あれ、しかし1本だけ?
もしかして。

山田「どうなった?」
佐久間「1本だけ受けて、その威力で圏外に逃れたのか?」
八武「にゃるほど。人体には貫かれても大したことがない場所が存在する。痛みにさえ耐えればいいが、ミッドには剄がある。」
山田「そうか、剄の力で痛みを和らげてるわけだ。」
佐久間「痛みは重要な危険信号だが、戦いでは邪魔になることも多いからなァ。」
山田「ミッド、戦いの行方は・・」
2016年08月02日 22:41
>アッキーさん
ついに鮮血の結末!度重なるツヲさんの猛攻を回避し、全身による物量攻撃も切り抜けたその先に待っていたのは串刺し地獄!ツヲさんの勝利か…!?
さて、ツヲさんはミッドの逃げ場を断つためにあらゆる場所へ水針(ワーエドレ)を放ちました。その結果、密集することがなかったので、ミッドが受けたのは一本だけ。今までは威力重視だったツヲさんですが、威力100の技も2000の技もミッドに当たりさえすればほぼ即死。戦いの相手がオネとかばっかりだったので、威力を上げることばかりに囚われていましたが戦いの中で命中率重視に変更。
ですが、ミッドもそこを逆手にとって敢えて一本だけ受けて致命傷を避けた可能性もあります。軍人であったミッドにとって覚悟して受ける痛みは耐えることが可能。剄の応用で耐えた可能性もある。果たして戦いの行方は…!?

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