英雄再来 第二十四話 ツヲ放浪記1

父の死の果てに。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

現在。
両腕のない少女フォウルが腕の代わりの土神霊(グノメ)を背に、ポツリと言った。

「ミッドが死んだ日のことは、よく覚えてる。空が壊れたかと思うぐらいの音で目が覚めたの。」

少女の瞳は今現在の光景に当時の光景を重ねていた。

「外に出たらオ姉ちゃんもツヲ兄ちゃんもいて、光の降り注ぐ方を見ていた。」

「うん、母さんが悲しみを紛らわすためにエターナル・フォール・ブラストを放ってるところだったね。」

ツヲもその時のことを鮮明に覚えている。チュルーリの必殺技とも言うべきエターナル・フォール・ブラストを見たのはそれが初めてだった。自身の有り余る膨大な魔力を解放し、ただ相手に向かって落とす単純にして究極の攻撃方法。威力は術者の魔力がそのまま反映される魔法だった。

「空からの光が途切れた後、大型の魔法が何十と見えた。山は噴火し、大雨と嵐が来て、雷が降り注ぎ、大地が休みなく揺れた。」

「本当に盛大な葬式だったよ。」
オネも当時のことを思い出して唾を飲み込んだ。アールもつられて唾を飲み込んだ。
アールはミッドの顔も知らないし、当時はチュルーリのお腹の中にいたので状況を知っている訳ではない。が、チュルーリの実力は、実体験している兄姉達ほどではないにしても、その体験者達から色々と聞かされているので当時の情景が容易に想像出来た。

フォウルは遠い目をして語る。
「本当に、あの時は世界の終わりって、こんな感じなんだって思った。お母ちゃんは、その気になれば本当に世界を滅ぼすことが出来るんだって、改めて思った。」


飛鳥花は話の規模が大き過ぎて呆気にとられていた。飛鳥花はフォウルの戦いも、ツヲの戦いも、オネの戦いも見ているので、知っているし分かっている。この三人がどれほど強いのかを。
飛鳥花はチュルーリを知らないが、フォウルの口から出た言葉―――世界を滅ぼす―――に嘘偽りも誇張表現もないことを確信するには十分だった。

「凄えんだな、お前の母ちゃん…。」
飛鳥花はツヲの横でポツリと呟いた。

「うん、そうだね。その時に世界を滅ぼさなかったんだから…。」
ツヲもまたポツリと呟くような声で言葉を返した。



「その後、わたしが生まれたんですよね。」

アールの言葉にフォウルが頷く。
「うん。母ちゃんはその後すぐに冬眠しちゃったけど、皆でアールを育てたよね。ただ…しばらくしてツヲ兄ちゃんがプラッと住処を出て行っちゃった…。それで…。」

「ああ…。」
ツヲは自分の見えない目玉を瞼の上から触った。
(僕は失って帰ってきたんだ…。視力と共に大切なものを…。)



ツヲの意識は自身の記憶の海の中に沈んでいった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2017年09月03日 22:01
英雄再来が更新されている!
人間の文明が滅んだこともあって、神話のような雰囲気がありますね。
マダンt・・・何でもない。

思えば神というものは、何らかの身体的欠落があることも多いようです。蛭子とか。
畸形を“人ならざるもの”、すなわち神として祀る文化は、様々な地域にありますね。それは差別と裏表の関係ではあるのでしょうけれど・・・。

八武「神話だったのか。」
佐久間「神なき時代に人が生き、人なき時代に神代が再来する。」
山田「なるほど、英雄とは神代の概念だ。」
維澄「今更ながら気付くタイトルの意味。」
2017年09月05日 00:13
>アッキーさん
久々の更新でございます!まさか一年も経過しているとは…。
チュルーリさんがイーリストもウエリストも滅ぼして人の時代が一時期終焉を迎えた後はしばし、神話が語られる。マチネとジュールズが滅んだ後もしばし、神話の時代が訪れるか。
全ての魔力が暴走を…。いや、止めておきましょう(笑)

神話の神様や怪物は、人間に似ているけれども一つ目であったり、手がたくさんあったりして人間とは違う形をしているかもしれません。しかし、ベースは人間の姿。その差に畏敬を感じるか、はたまた恐怖を感じるかで違うのでしょうね。

さて、最初の英雄が世界を去って次なる英雄が登場し、そしてその子ども達はその次の神代を生きることになりました。では、神代の時代の物語の再開です。
2017年09月06日 13:58
待ってました。『英雄再来』の再開!
あのまま打ち切り…なわけなかったですね。
ツヲの過去が語られる話ですね。興味津々です。
2017年09月06日 22:10
>すずなさん
一年以上もお待たせしましたー!
という訳で過去回想編で、ミッドの次はツヲさんに焦点を当てていきます。どうぞお楽しみに。

この記事へのトラックバック