英雄再来 第二十四話 ツヲ放浪記3

せめて海を見に行こう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

それでも旅を続けた。まだ大陸全土を巡ったとは言い難かったし、どこかにミッドのような「人間」がいるかもしれないという小さな期待も残っていた。何より僕はまだ海を見ていなかった。
大陸の果てには海というものがあり、どこまでも広がる水の塊だそうだ。知識としては知っているし、精霊として感知はしている。しかし、生まれてから今まで実際に行ったことはなかった。

海に近いところまで来た時、一つの集落があった。そして、そこに攻め入ろうとしている盗賊の一群があった。

「ガハハハハハハ!奪えええ!」

頭らしき者が号令を掛け、武器を持った手下が集落に雪崩れ込む。

「こりゃー!何しに来たんとー!」
その集落から一人の女性が姿を現した。手入れなどされていない長い髪、顔にはたくさんのソバカス。服は布地をツタで結んだ簡単装備。武器を持たず、どこにでもいる村娘のような彼女が武器を持つ大人数の大の男達相手に一歩も引かずに怒号を返した。
「ここにゃー子ども達しかおらんよ!食べもんも全然ありゃせん!毎日海に行って、その日食う分だけ取って来ちょうるかんね!あんたらも人様から奪うんは止めて、海さもぐればよか!」

「なんだあ?てめえは、よお…。」

「女の癖にオレらに意見か?百年早えぜ!」

「犯せ!」

次の瞬間だった。見えない力で男共が吹き飛んだ。

「ぐえっ!」
「おいっ!何やってんだ!」
「どけどけ!重いじゃねえか!」
「何でオレ達、吹き飛ばされた!?」
「ま、まさか魔法使い!?」

「その通りやんね!わっちゃ、魔法使えるけん!怪我ばせん内に早う立ち去らんかい!」

男共はそれに怯んだが、逆に盗賊の頭はいいものを見つけたかのような顔をした。

「そおか、お前魔法使いだったのか…。どうだ、女。オレの部下にならないか?」

「か、頭?何言ってんすか!?」
「女なんか仲間に出来ねえよ!」
「それに今やられたカリを100倍にして返さねえと気が済まねえ!」

「おめえらは黙ってな!」
突然の頭の言葉に不平不満を言う男共だったが、それも一喝で収まった。
「どうだ?部下になるってんなら後ろのガキ共も一緒に面倒見てやるぜ?」

ボロボロの建物の影には怯えている子ども達が何人もいた。しかし、その女性は子ども達を庇うように更に前に出た。

「悪いけどお断りやけん。わっちゃ達はもう大人には頼れへんて決めたんかんね。大人達は毎日毎日奪うことばっかり考えて、戦うことばっかりしちょる。その結果がこれよ!親も住むとこも失った子どもがどんだけおると思う?その大抵は野垂れ死によ。いや、野垂れ死に出来るならまだマシかもしんね。ほとんどは戦の時に皆殺しにされるけんね!」

「オレの部下になればそんな連中からも守ってやるって言ってんだよ。お前一人で何が出来る?子どもだけで何が出来る?」

「守る…?ここにいる者は全員、守ってもらえなかったんよ!?今更、そんなこと言ってもなびかんよ!もう大人には頼らんって決めたんやかんね!暴力は暴力を呼ぶんを分からんか!?あんたらの仲間になった方がもっと危険が来るとよ!」

「…女の癖に中々頭のいいことで…。そういう女、嫌いじゃないぜ。だがよお、オレは知ってんだぜ?魔法使いは魔法を使うたんびに疲れるのをよ。オレの部下はまだまだいる。50人で一斉に襲い掛かればお前はすぐに動けなくなってただの女になるんだ。もう一度聞く。オレの部下になれ。この話を断ったらどうなるかぐらい頭のいいお前なら分かるだろ…?」

女性は顔色を曇らせた。盗賊の頭はそれを見逃さなかった。

「交渉成立、だな。ガハハハハハ!」

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この記事へのコメント

2017年09月07日 19:51
わー、せっかくいい感じの娘が登場したと思ったら…。
2017年09月07日 22:45
>すずなさん
こういう盗賊の頭だけあって、タチが悪い。嫌な奴ですよねー。

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