脱衣決闘 第一話4

8ターン目、熊平のドローフェイズ前
キャロル・キャロライナ・クリスティーヌ加藤 LP1900
手札:1枚
モンスター:カオス・ソルジャー -開闢の使者-(攻3000)
魔法&罠:なし
ペンデュラム:EM(エンタメイト)ラクダウン(スケール2)

ブレイズ熊平 LP100
手札:1枚(ラヴァル炎湖畔の淑女)
モンスター:なし
魔法&罠:なし

状況を確認してみれば圧倒的に熊平が不利である。ライフポイントは残り100で、フィールドは空っぽ。一方の加藤は攻撃力3000のカオス・ソルジャーを従えている。

サレンダー、という単語が過ぎらなかった訳ではない。しかし、同時に熊平の脳裏には憧れのデュエリスト、ダンディ岸本の姿が浮かぶ。



「世界大会で待っているぞ。」



(・・・あの人なら、絶対に諦めはしない・・・。だったら・・・!)

「オレの、ターン・・・!」

(岸本さん・・・!オレは必ず辿り着いてみせます!)

熊平のデッキは残り2枚。この大会のために最後の最後までデッキ調整していた熊平は、今デッキの中に何のカードが残っているのか分かっていた。

(1枚は炎熱伝導場。今こいつが来ても、どうしようもない・・・。オレが引きたいのは、もう1枚の方だ・・・。頼む・・・デッキよ、オレに応えてくれ・・・!)

「ド、ロー!」

熊平は力強くカードを引いた。

(・・・来たっ!)

熊平が引いたカード
真炎の爆発
通常魔法
自分の墓地から守備力200の炎属性モンスターを可能な限り特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時にゲームから除外される。

(ありがとう・・・そして、ありがとう!お前らは、いつも、いつでもオレの気持ちに応えてくれる・・・!)

熊平は改めて状況を確認する。そして今、自分が勝つために出来ること、すべきことは何かを考えた。

(加藤の手札は1枚。もし、あれが防御系カードだとしたら・・・。いや、そうだと想定するべきだ!あれが2枚目のダメージ・ジャグラーの可能性は十分にある・・・。手札を考えれば、呼び出せるシンクロモンスターは2体・・・。誰を出すべきか・・・。)

その時だった。熊平のエクストラデッキの一番下のカードが光った。

(・・・?)

それは熊平の目の錯覚だったのかもしれない。しかし、熊平はカードに呼ばれた、そんな気がした。

(召喚してくれって言ってるのか・・・?分かったぜ!)

熊平は決意する。そして、再び必殺のカードを掲げた。

「行くぜえ!二度目の正直!真炎の、爆発だあ!!」

それは蝋燭が燃え尽きる前の最後の輝きのようだった。残りライフ100ポイントという後のない状況下からの猛反撃。全てを焼き尽くさんとする業炎がフィールド上を埋め尽くす。

「墓地より蘇れ!ラヴァル炎火山の侍女、ラヴァルのマグマ砲兵、エンシェント・ゴッド・フレムベルううう!」

ラヴァル炎火山の侍女
チューナー(効果モンスター)
星1/炎属性/炎族/攻 100/守 200
自分の墓地に「ラヴァル炎火山の侍女」以外の「ラヴァル」と名のついたモンスターが存在し、このカードが墓地へ送られた時、デッキから「ラヴァル」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。

ラヴァルのマグマ砲兵
効果モンスター
星4/炎属性/炎族/攻1700/守 200
手札から炎属性モンスター1体を墓地へ送って発動する。相手ライフに500ポイントダメージを与える。この効果は1ターンに2度まで使用できる。

エンシェント・ゴッド・フレムベル
シンクロ・効果モンスター
星7/炎属性/炎族/攻2500/守 200
炎属性チューナー+チューナー以外の炎族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の手札の枚数分まで相手の墓地のカードを選択してゲームから除外する。このカードの攻撃力は、この効果で除外したカードの数×200ポイントアップする。

「レベル4のラヴァルのマグマ砲兵にレベル1のラヴァル炎火山の侍女をチューニング!炎火山の頂きに住まう竜神よ!荒ぶる力を以って眼前の敵を吹き飛ばせ!シンクロ召喚!レベル5、ラヴァルバル・ドラゴン!!」

ラヴァルバル・ドラゴン
シンクロ・効果モンスター
星5/炎属性/ドラゴン族/攻2000/守1100
チューナー+チューナー以外の炎属性モンスター1体以上
自分の墓地の「ラヴァル」と名のついたモンスター2体をデッキに戻し、相手フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。選択したカードを持ち主の手札に戻す。

「そして、ラヴァル炎湖畔の淑女を通常召喚!」

熊平のフィールドにチューナーモンスターが舞い降りる。

「オレはレベル7のエンシェント・ゴッド・フレムベルにレベル3のラヴァル炎湖畔の淑女をチューニング!星々の力を得た百獣の王よ!その咆哮を世界に轟かせよ!シンクロ召喚!レベル10、神樹の守護獣-牙王!!」

神樹の守護獣-牙王
シンクロ・効果モンスター
星10/地属性/獣族/攻3100/守1900
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードは、自分のメインフェイズ2以外では相手のカードの効果の対象にならない。

「ラヴァルバル・ドラゴンの効果発動!墓地のラヴァル・キャノン2体をデッキに戻して、アンタのカオス・ソルジャー -開闢の使者-をバウンスだ!」

加藤は表情を変えずに淡々とカオス・ソルジャー -開闢の使者-を手札に戻した。

(フィールドに2体のシンクロモンスターが並んだ。1体はオレの最強モンスター、神樹の守護獣-牙王!そして、もう1体はラヴァルバル・ドラゴン!その効果で相手のモンスターはいなくなった!)

「バトルだ! 」

(加藤の手札は2枚。その内の1枚はさっき戻したカオス・ソルジャー。仮にもう1枚がダメージ・ジャグラーだとしても、片方の攻撃しか防げない!加藤のライフは残り1900!これで、勝った・・・!)

「ラヴァルバル・ドラゴン、神樹の守護獣-牙王で攻撃!」

熊平は勝利を確信した。

「・・・残念ね。」

(・・・えっ?)

「手札からバトルフェーダーの効果発動。」

「!?」

バトルフェーダー
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

「あなたのバトルフェイズはここで終了よ。」

「あっ・・・ああっ・・・!」

ラヴァルバル・ドラゴンと神樹の守護獣-牙王の攻撃が悪魔の鐘の音によって阻まれる。加藤の手札は防御カード、という熊平の読みは正しかった。しかし、現実は非情である。熊平のモンスターでは加藤の鉄壁の防御を突破出来なかった。熊平の手札は0枚、伏せカードもない。今の彼に出来ることはたった一つ、自分のターンを終わらせることだけ。

「ターンエンド・・・。」

熊平は力ない声でターンを終了した。



「私のターン、ドロー。」

加藤は静かにカードを引く。そして一度だけ墓地に目を落とし、再び熊平の方を見た。

「墓地の闇属性、スナイプストーカーと光属性、魔轟神獣ケルベラルを除外して特殊召喚、カオス・ソルジャー -開闢の使者。」

先ほど加藤の手札に戻った戦士が再び熊平の目の前に現れる。

「バトル。カオス・ソルジャーでラヴァルバル・ドラゴンに攻撃。」

勝敗は決した。

ラヴァルバル・ドラゴン(破壊)

ブレイズ熊平 LP100→0

「あ・・・。ああ・・・。」

(岸本さん・・・。)



「世界大会で待―――――。」



(そちらに行けず、済みませんでした・・・!)

「ああああああああああああああああああ!!!!!」

ブレイズ熊平の体が震える。憧れの人からの期待に応えられない、不甲斐ない自分に対する怒りが熊平の全身を焼き尽くす。血管が浮き出て、筋肉が静と動を激しく繰り返し、流れ出る大量の汗が熱で蒸発していく。そして、燃えた。
比喩などではない。熊平の熱が発火点を越え、最後の衣類に着火したのだ。その炎は全身に燃え広がり、大会運営の係の者達が消火器を持ってきて火を消し止めたが、熊平が身に着けていたトランクスは全て灰となった。

後には、ただ全裸の男が倒れているだけだった。

勝負は決した。
もし、熊平がもっと幼い頃からデュエルを始めていれば勝負の行方は逆だったかもしれない。
もし、スピードデュエルでなければ勝負の結末は違っていたかもしれない。
しかし、勝負にイフは存在しない。

勝負は決した。熊平の敗北という結果で。

女に負けるなんて情けない、と熊平を笑う者はいなかった。
公衆の前面で全裸になるだなんて恥ずかしい、と熊平を貶す者もいなかった。
何がダンディ岸本が認めた男だ、結局は負けているじゃないか、と熊平の実力を低いと評する者もいなかった。
このデュエルに関して、この場で何か一言でも言葉を発することの出来た者は誰もいなかった。

加藤は下着類を拾い上げるとノーパンのままデュエル会場を後にする。すれ違いで担架を運ぶ者達が現れる。熊平はすぐに病院へと運ばれた。

世界デュエル大会一次予選B地区会場の一日目は波乱の幕開けとなった。

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