英雄再来 第二十一話 ツレエ4

嗚呼…まだ苛々する…!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ある日、飛鳥花はまだ見ぬツヲの妹二人のことを尋ねてみた。
「ああ、ツレエとフィベだね?ツレエは一言で言うと意地っ張り、フィベは陽気って感じかな。」

そこにオネが首を突っ込んできた。
「かかかっ。当てにならん情報だ。愚弟は色眼鏡で見てるからな。ツレエは情緒不安定で私でも手を焼くじゃじゃ馬だ。フィベは情に厚いが一つのことに入れ込みが激しい。周りが見えなくなって暴走しやすいぞ。」

ツヲはやれやれといった表情で首を横に振る。
「はあ、どうしてオ姉さんは実の妹達を悪く言うかな…。小さな欠点の一つや二つぐらい誰でも持ってるでしょ。」

「フィベに関してはお前の言い分も一理あるだろう。だが、ツレエに関しては完全に的外れだ。」

「いやいや、オ姉さんの前だと二人とも素を出せないんだよ。本気で戦ったりするから…。」

「何だと?戦士が本気を出すのは基本であり、礼儀だ。」

「戦士である前に妹でしょうが…。」

「出た、愚弟の人間理論。いつまでもあいつらを半人前扱いするんじゃない。」

「何言ってるんだよ、オ姉さん。妹達は既に一人前の立派な淑女だよ?一人の女性として見ているよ。ツレエとフィベはもっと美人になっているだろうし、フォウルは観察力や洞察力に磨きがかかったよ。色々と細かい所に気を配ってくれるし。ゼロは最早言わずもがなだね。身長も胸も大きくなって、気持ちの方も色々吹っ切れたみたいで、オ姉さんの前であっても自分の意見が言えるようになったね。いやあ、皆成長したなあ。………ん?飛鳥花ちゃん?何か、雰囲気が…?あれ?僕、何か不味いこと言った?」

「かかかっ!愚弟は女心がまるで分かっていないな。」

「あっ!も、もちろん飛鳥花ちゃんも立派な淑女さ!例えば―――――!」

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マチネ軍を全滅させたツレエだが、未だに苛立ちは収まらなかった。

(嗚呼…苛々する…!)

ツレエを表現する言葉の一つとして情緒不安定が挙げられる。実は、ツレエの苛立ちには訳がある。精霊と人間の子どもであるツレエは精霊の方からは雷の力を色濃く受け継いだ。雷は即ち電気である。人間の部分を持ち合わせているからといって自分の電撃で傷付くことはないが、完全なる精霊よりは影響を受ける。何故なら人間の脳は微弱な電気で体に命令を出しているし、僅かな脳内物質の変化で喜怒哀楽や気分の浮き沈みにさらされる。ツレエは自分自身の精霊としての力が人間としての感情の起伏に影響を及ぼしていて安定しないのだ。

(嗚呼…まだ苛々する…!)

その時だった。ツレエは地面が大きく揺れるのを感じた。

(地震か…。)

ツレエは立ったままで、特に地面に伏せたりすることもなく地震をやり過ごした。安定した体幹と平衡感覚だけで地震を乗り切ったのだ。

(この衝撃…規模の大きさ…。十中八九フォウルだわ…。もうフォウルは復活したのね。まずは皆と合流しようかしら…。)

ツレエは自分の姉妹達の顔を思い浮かべて少し表情が柔らかくなった。

(オ姉は相変わらず無茶苦茶なんだろうなあ…。ツヲ兄が変態紳士なのは変わってないと思う。フォウルは大技放つぐらいには元気なようね。フィベはあの頃みたいに明るく踊ってるかしら。ゼロは…体ばっかり先に大きくなったから、まだ心が幼いのよね。まあ、そろそろ世界は綺麗なだけじゃないって知る必要があるのかしらね。)

その次の瞬間には、ツレエの表情は険しくなっていた。

(その前にやり残したことがあったわ…!まだ力が全然全開じゃない…!トルの奴、まだ生きてるのね…!封印の大概は破壊したけれども完全に解くためには術者を殺すしかないようね…!)

トルに封印を解かせるという選択肢はツレエの頭の中にはないようだった。

(さあ、お礼参りよ…。今まで封印してきた借りを返さなくちゃ…!待っていなさい、トルぅ!!)

冷えて歪な形の鎧となった鉄の塊を身に着けたままツレエは歩き始めた。

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