女と悪魔

ある所に悪魔が居た。悪魔は人の心の隙間に入り込む。
「いいことを教えてやろう。」
悪魔は人の欲に付け込む。
「その願い叶えよう。」
そして悪魔は人を不幸にする。

ある時、悪魔は思った。
(次はどの人間で遊ぼうか。)
悪魔はたまたま近くを通りかかった女に近付いた。そして囁く。
「よう、姉ちゃん。俺はどんな願いでも叶えるぜ。試しに何か言ってみな。」
ところがその女は悪魔の意に反して素っ気無く答えた。
「別にいいわ。」
悪魔は驚いた。
「おいおい、人間何か欲しいものの一つや二つあるだろう?」
女は素っ気無く答えた。
「今はないわ。」
悪魔はこの女を意地でも不幸にしてやりたいと思った。
「いや、絶対ある!世界一の美男子を夫にどうだ?」
しかし女は興味を示さない。
「お断りよ。」
悪魔は次々と質問を発した。
「永遠の若さはどうだ?」
「誰もが羨む美貌は?」
「山のような宝石は?」
「たくさんの金は?」
「名誉は?」
女は全て素っ気無く答える。
「別に。」
「結構よ。」
「興味無いわ。」
「特に。」
「いらないわ。」
悪魔は顔を歪めて叫んだ。
「じゃあ何が欲しいんだ!」
女は少し考えてから言った。
「じゃああなたの欲って何?」
悪魔は一瞬、キョトンとしたがすぐに不敵な笑みを作って答えた。
「人の不幸を見ることだな。」
すると女はすぐに切り返した。
「つまりあなたの欲は他人に依存しているのね。」
悪魔は嫌な顔をしたがすぐに不敵な笑みを作って答えた。
「俺は何でも出来るからな。自分自身の望みなら何だって叶えられるわけよ。だからもう他人任せなのさ。なあ、哀れだと思うのなら何か願ってくれよ。」
すると女は大きな声で笑い飛ばした。
「それじゃあ何も出来ないのと同じね!」
悪魔は顔を真っ赤にして怒った。
「何だと!じゃあ何か言ってみろ!その通りのことをしてみせる!」
女は少し考えてから言った。
「じゃあ、犬に変身できる?」
「もちろん、簡単さ!」
悪魔はあっという間に犬に変身した。
「どうだい。」
悪魔は得意気に尻尾を振ってみせる。女は少し感心したかのように悪魔を見て、次々に質問する。
「じゃあ猫には変身できる?」
「鼠にはなれる?」
「ゴキブリはどう?」
悪魔は女の言う通りに変身していく。
「ほらよ。」
「軽い軽い。」
「簡単なもんさ。」
悪魔がゴキブリになった時だった。女は悪魔を踏み潰した。そして女は何事も無かったかのように歩いていく。

女はポケットから人形を取り出し、それに向かって喋り始めた。
「お兄ちゃん。今日はうるさい虫を一匹潰したよ。私はお兄ちゃんがいれば何も望まない。」
女は笑みを浮かべて人混みの中に消えていった。

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この記事へのコメント

表裏
2012年06月08日 00:37
なるほど。前の話の少女の復讐劇でしたか。でもこれで悪魔が死んだとは思えませんね。悪魔は大抵不死身ですから…。

というかこのやりとりは「三枚のお札」に出てくる和尚さんと山姥のやりとりに似てますね。
良くあるパターンですが、実践するのは簡単そうで難しそうですよね。
まず何にでもなれる生物(?)と出会わなければなりませんからww
2012年06月08日 21:42
あのときの妹が・・・。ヤンデレおいしいです。
この判断は正解でしょうね。
兄に会わせてと言えば、あの世で再会。
兄を生き返らせてと言えばゾンビ降臨。
ちなみに私は「長靴を履いた猫」を思い出しました。

山田「昔の佐久間は、こんな感じの女だった。」
佐久間「ひょっとして別人の話をしてないか?」
山田「俺も同一人物だというのが信じられん。」
2012年06月09日 02:03
>表裏さん
悪魔は…生きています。皆の心の中に…ではなく、小説的に。不死でなくとも人間よりは丈夫で、強い悪魔ほど『不死』に近くなります。

「三枚のお札」では、最後に山姥がお餅になって食べられるんでしたっけ。相手をおだてて、相手の力を利用して勝つ。自分より強い相手に勝とうとするなら試してみるべき方法ですね。
2012年06月09日 02:04
>アッキーさん
貧しさを背景に、兄の死をきっかけに、彼女は病んでしまいました。病んだことにより直感的な判断力が向上したのか、はたまた病んでるがゆえの興味対象の狭さが幸いしたか。悪魔の倒し方は「長靴を履いた猫」を参考にしました。
佐久間さんが昔はあんな感じだった…つまりこうですか?

佐久間「山田。今日は山田のストーカー、ホーリーシャイニングライトスパークワンダフルを地獄に送ったよ。私は山田がいれば何も望まない。」

…山田さんの溜息が聞こえてきそうだ。

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