スイカサッカー(前編)

僕の名前は写田 真一(しゃった しんいち)。紋白町にある私立高校に通う高校一年生だ。僕の趣味は写真撮影。なので入学初日に写真部がなくてがっかりしたけど、新聞部に記者にならないかと誘われた。そこでなら写真の腕も生かせるというもの。ただ、入部してみたけど、記事集めって結構大変だ。そんなことをクラスメイトの翼ちゃんに言ったら今日の放課後、運動場でとっておきのネタがあると言っていたので、行ってみることにしたのだが…。

「よく逃げなかったな、園芸部!」
「叩き潰してやるぜ、サッカー部!」
運動場に描かれたバトルフィールドの真ん中で睨み合う二人。それぞれの部活の部長だろうか。その二人の後方にそれぞれのサッカーゴールがある。近くには放送部のテントが設営されていて本格的だ。

『さあ、始まりました。園芸VSサッカー部のスイカサッカー!本日の司会を担当させて頂くのは毎度お馴染み放送部のわたくしに加えまして、解説に歩く図書館の異名を持つ白木 翼(しらき つばさ)さん、特別ゲストに生徒会副会長の日野 光(ひの ひかり)さんをお迎えしております。』
『白木です。よろしくお願いします。』
『日野です。よろしくお願いします。』
『よろしくお願いします。』
和やかに挨拶を交わす三人。
「って翼ちゃん!もう一度説明してくれるかな!?」
僕が翼ちゃんに問いかけると、彼女は笑顔で答える。
『それではここでスイカサッカーのルールをおさらいします。各チーム2名でサッカーボール色に塗ったスイカを相手のゴールに入れることが出来れば1ポイント。制限時間内により多くの点数を入れたチームの勝ちとします。同点の場合は引き分けになります。サッカーのルールに則り、スイカは手以外で扱わなければなりませんが、ゴールキーパーは手を使うことを許されています。また、相手の体に触れるのは反則です。スイカを壊してしまった場合、それを食べ終わるまで試合復帰出来ず、代役の選手も認められません。』
『つまり、スイカを割ってしまえば、事実上1対2になる訳ですね。』
『はい、スイカの扱いは慎重になるでしょう。ちなみに試合終了後のスイカはスタッフで美味しく頂きます。』

笑顔で解説する翼ちゃんに僕はツッコミを入れる。
「いや!違う!そうだけどそうじゃないんだ!僕がもう一度聞きたいのは事の始まりの方!」

『事の始まりは今日の朝のことでした。』



いつものようにグランドで朝練習を始めるサッカー部。この高校のいつもの朝の風景でした。しかし、次の瞬間、その『いつも』は崩壊します。
「うわああああ!サッカーボールが硬い!」
「何事だ!副キャプテン!」
「キャプテン!ボールが、ボールがスイカになってます!」
「なにい!?一体誰の仕業だ!」
そこに現れる麦わら帽子の集団。
「我々だ!園芸部だ!」
「何だと!一体何が目的だ!」
「決まっている!恨みだ!今まで散々サッカーボールを受けてきた植物たちのな!」
訳が分からない人に説明しましょう。サッカー部が使っているグランドのすぐ近くに園芸部の畑があるのです。そのため時々サッカーボールが飛び込んでくることがあるのです。
「今まで散々抗議しても改善されなかった!これは当然の報いだ!」
「何だと!だったらサッカー倉庫に絡まるツタを先に何とかしろ!」
「ふん!そっちが先に何とかすれば、こっちも何とかしよう。」
「いいや、そっちが先だ。」
「そっちだ!」
「そっちだ!」
「ぬぐぐぐぐ!ならば勝負で白黒はっきり付けようじゃないか!」

こうして戦いの火蓋は切って落とされたのでありました。



『と、いう訳です。お互い公平を期すために両方の要素を持ったゲーム、スイカサッカーで勝負となりました。』

この学校に入学してから約5ヶ月。色々なことがあったけど、ツッコミどころ満載過ぎるだろ…。しかも、それに心地よさを感じている自分がいるし…。これが青春なのか?

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この記事へのコメント

2013年01月13日 14:41
青春過ぎるでしょwww
よくもまぁこんなにもバカげ…いや、素晴らしいことが起こりますね、この町は。いや本当に素晴らしい、いろんな意味で。
呵々闘諍
2013年01月13日 19:33
輪廻「こんなの絶対おかしいよ!洗脳されてるだけだよ!」
愛縷「食べ物は大切にしましょう。スイカサッカー…僕もびっくりだよ。」
輪廻「しかも、さも当然のようにルール説明してるしね。」
愛縷「伝統なのかもしれないね。」
輪廻「恐ろしいよ…。」
2013年01月13日 23:08
何だこれwwwwwww
蹴ったら一発で壊れそうなんですけどwwww
しかも勝負の理由・・・。生徒会は何故、仲裁でなく煽る方へいくのかwww

佐久間「繊細なドリブル技術が要求されるスポーツだ。」
山田「これをスポーツとは認めたくないな・・・。」
佐久間「ま、このスイカサッカー、必勝法があるんだけどな。」
山田「マジか。聞きたくないけど聞きたい。」
佐久間「スイカを口に含んで走り、噴き出してシュート。これだよ。」
山田「聞いた俺が馬鹿だった。」
2013年01月14日 09:54
>表裏さん
王様もビックリ、馬鹿げてるぜ!これが青春なの…?色んなことが起こる町、機会があれば是非とも紋白町へお越し下さい。歓迎いたします。
2013年01月14日 09:55
>呵々闘諍さん
不思議時空が発生しているようで、奇っ怪なことが起こっています。入学して五ヶ月、すっかり感覚が麻痺しているのか、写田君。食べ物は大切にしないといけないですよね、全く翼ちゃんったら…。

パルナ「はくりゅー、それは本当?」
白龍「え?何のこと?取り敢えず続きでも見ましょうか。」
2013年01月14日 09:55
>アッキーさん
初っ端からヘンテコリンなことが起こっています。確かに、壊れやすそうですよね。そして、煽りまくる放送部。止めろよ生徒会副会長。とツッコミどころ満載です。

白龍「テクニックが勝負になりそうですね。」
パルナ「やまだに呆れられてるよ…。」
白龍「なるほど、流石は佐久間さん。素晴らしい必勝法です。」
パルナ「口に含めないっていう事実を無視すればね!」
白龍「私が考えつかない必勝法を平然と編み出す佐久間さんの頭脳に痺れました。」
パルナ「…。」

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