英雄再来 第十話 オネ18

鹵獲開始。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

オネは周囲を見回した。周囲の建物は全てドロドロに溶けて地面と一体化して、更地に近い荒野が広がっていた。そうでない場所も、あちこち壊れているか、燃えているかしていて、無事な場所はどこもなかった。
(…少し遊び過ぎたかもしれん。人間はたくさんいるとは言え、殺し過ぎると後がつまらんからな。寝床などのいくつかの施設を簡単に整えたら人間狩りを始めるか。いずれ、愚弟や妹達も復活してたらここに来るだろう。そしてここに国を造る。私好みの国をもう一度…。)
オネは少し昔のことに想いを馳せた。
(あの頃は、チュルーリがいて、愚弟がいて、他にも色々いて、遊び相手には困らなかった…。思えば、チュルーリを黒い台座に封印したのが、母親への最後の手向けになった訳か…。…。ぶふー、母親とか私が言うの似合わね~。あ、そう言えば、一緒に黒い台座に封印されてたゼロはもう復活してるんだろうか。いや、まだか。もし復活してるんだったら、私が来る前にマチネが滅んでるはずだ。よし、まずは黒い台座に行って…。)

オネがマチネの中心部に足を向け、歩き始めた時だった。

「ごっ…!!げっ!!げほっ!!げほっ…!!」

後ろから聞こえた咳き込む声。オネは歓喜の表情で振り向いた。
(こいつ…死んだと思ってたのに、自力で呼吸を始めやがった…!!)

「魔法…使い…!どこ…だ…!」
喉も焼けて、かすれ声ではあったが、ソルディエルにはまだ戦う意思が感じられた。

「私はここにいるぞぉ!」
オネはまるでお気に入りの大きなヌイグルミに抱き着くかのように倒れているソルディエルに飛び乗った。
「がっ!!」
「かかかっ!生きてたよ、こいつ!」

「離…せ…!卑怯…者め…!」
「ん?」
「手足を縛って…!しかも、目隠し…などと…!」

その言葉でオネは気が付いた。相手は、目も焼け爛れて何も見えておらず、両手両足を失ったことも気が付いていないことに。そして、そんな状態であっても残っている四肢を僅かに動かして抵抗の意思を見せている。
「あはっ!」
オネは馬乗りのままソルディエルの髪の毛を掴んだ。
「ぐっ!!」
焼け爛れた髪は掴んだだけで半分ほどが抜け、火傷している頭部の表皮に激痛が走る。オネは更に左手をソルディエルの首に添えた。
「さっきにはよくも首を貫いてくれたなぁ…。」
ソルディエルの体がビクリと反応した。
「魔法使い…何故、貴様は…生きている…!?どうして、首が炎に…!」
ソルディエルは先程の戦いを思い返していた。『初志完鉄』が相手の首を貫いて勝ちを確信した瞬間に見えた恐るべき光景。首を貫かれた相手が笑っているという不可思議な光景。貫かれたはずの首が炎に変わっているという不可解な光景。

「ああ、かつてチュルーリを封印した時の戦いで体全部を失ってしまってな。今じゃ炎を体の代わりにしてるのさ。まあ、体を失わずに勝てるような甘い相手じゃなかったから当然といえば当然の結果か。しかし、惜しかったな。あれがもっと魔力の篭った攻撃だったら傷ぐらいは負わせられただろうに。かかかっ。」

「化け、物め…!」

「そうさ、私は化け物なのだよ。しかし、逆に聞こう。お前、よく生きてたな。普通ならどう考えても死んでる場面が少なくとも二回。両方とも外道具が身代わりになったみたいだがな。」

「王道具…だ…!」

「ああ、そっちでは王道具って呼んでるのか。まあ、何でもいい。王道具を体に入れて、それで生き延びる奴なんて始めてみたぞ。運がいいなんて言葉じゃ済まされない。これだから人間は面白いんだよなあ…!かかかっ!気に入ったぞ!お前が欲しい!タイチョー、私の部下になれ!

「!!!??!?」

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

驚いた

この記事へのコメント

2014年12月27日 19:09
火剣「悲惨で見ていられないが」
コング「オネにはこの激闘が準備運動?」
ゴリーレッド「炎の体に攻撃は効かない。人間に勝ち目はない。人間の感覚で魔法使いを見たら勝てない。ハリーのような人間に近い魔法使いもいるが、オネやチュルーリはモンスターだ」
コング「ゼロへの信頼は笑える。ぐひひひ」
火剣「ゼロがいたらとっくにマチネを滅ぼしているか。滅ぼすどころか隊員になっている」
コング「捕まって拷問されて人間に屈服したわけではないと弁解しないとオネに泣かされる。にひひひ」
ゴリーレッド「笑いごとではない。ソルディエルは瀕死の重傷だ」
火剣「私の部下になれって、無理なことをよくも。鬼か」
コング「モンスターに人の心はわからない。ソルディエルの志までは考えてないかも」
ゴリーレッド「断れば抱きつくのか」
火剣「ソルディエルはソルジャーだ。死は恐れていない」
2014年12月28日 00:46
おお、早くも復活のソルディエル!
しかし惨たらしい状況・・・。
オネの立場からすれば、健闘を称えて傘下へ引き入れようという感覚は自然ですが、受けるとしても寝首をかく為でしょうね。それも織り込み済みで誘っていると思われます。
しかしそれより、チュルーリを封印したのはオネ? そのあたりの事情は非常に気になります。

八武「うふふ、達磨になったソルディエルに、馬乗りで攻める。これだよ!」
山田「お前はソフト方面を追及するんじゃなかったのか!?」
八武「ハードを捨てたとは言ってない。」
神邪「優れた者を部下にしたいという思いは、よくわかります。キューブを作るとき、手近なところではなく、葉継のもとを訪れたのも、結局そういうことなんですよね。」
佐久間「優れた部下を抱えておけるのは、優秀なリーダーの証明だからな。何人の部下がいるかではなく、どんな部下がいるかで決まる。そして、部下に寝首をかかれるなら、そこまでの器だったということだ。」
神邪「それが強者の哲学ですか。」
佐久間「裏切りを恐れないのが良いことかどうかはわからんがね・・。」
2014年12月28日 19:49
>火剣獣三郎さん
ソルディエル自身もボロボロで、マチネ全体もボロボロ。数時間前までは人々が普通に生活していた場所であることを思えば、なお悲惨です。そして、オネが語る驚愕の真実は、これらがオネにとってはただの準備運動程度だということ。意志を持った大火が襲いかかってきたようなもので人間では勝ち目がなかった。ジュールズの大魔法使い五人が束になっても勝ち目はなかったかもしれません。魔法使い目線であっても化け物のような力を誇るオネに対してソルディエルは本当に食い下がった。
最初にゼロが召喚された時、マチネを滅ぼしにかかったので間違ってはいないのですが、今では見事にマチネの一員。これは真実をしればオネも面食らうかも。ゼロは弁解するか、開き直るか。そして、その時オネはどう行動するのか。
そして、瀕死のソルディエルに対してまさかの勧誘。ソルディエルの気持ちなど完全無視で、まさに鬼畜の所業。勝者が敗者にかける言葉は慰めであっても相手を傷付ける。それなのにオネときたら…。断れば更に危害を加えそうな勢い。一度、あの抱き付き攻撃を受けているだけに、恐怖は体に染み込んでいる。しかし、ソルディエルは戦士(ソルジャー)。名前の由来もソルジャーから来てます。例え自分が殺されてもNoと言うでしょう。
2014年12月28日 19:49
>アッキーさん
本来なら致死の熱量と圧力を受けたソルディエルですが、王道具が身代わりとなり命だけは助かりました。しかし、それは他を全て失ったということに他ならない酷たらしい状況です。
この状況を書いていて、三国志や信長の野望などのゲームで戦に勝利し、捕獲した相手の武将に対して登用の勧誘を行うことが如何に残酷なことをしているのかが分かりました。猛反省しております。ソルディエルは絶対に断るか、寝首をかくために敢えて従うか。
オネとチュルーリの因縁もまた長い話になりますが、『英雄の子孫』の時代の後からカトレーアの時代までチュルーリが封印されていたことに関連しております。
そして、このシーンを書いていて、『Engagement ring』でカトレーアがハデスに馬乗りになるシーンが二回ほど存在することを思い出すと共に、自分の趣味趣向はこうなんだなと改めて確認出来ました。赤面しております。
自分と戦った相手を部下に誘う。それは相手が優秀であることを認めると共に、自分自身が寝首をかかれないという自信も存在する。オネの場合、それに加えて、ソルディエルが更に強くなってもっと楽しい戦いが出来るのではないかという思惑も存在します。むしろ裏切ってくれて結構とすら考えているかもしれません。なぜなら、オネは強くなり過ぎて、もう敵がいない。しかし、闘争本能は人一倍。常に敵を欲しているのです。

この記事へのトラックバック