英雄再来 第十一話 ソルディエル12

どんな痛みも耐えてみせる。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

マチネによる魔法使いの拠点壊滅作戦は、その場にいた全ての魔法使いの死をもって終了した。魔法使いの拠点にあったものの中で今後の魔法使い討伐に役立ちそうな武器や道具、食料などは持ち出され、仲間の死体を全て運んだ後に火が放たれて魔法使いの拠点の全ては灰になった。


マチネに戻った後、ソルディエルは死の臭いが漂う霊安室に来ていた。この戦いで特攻隊のほぼ四割の人間が死んだ。その中には当然、ソルディエルを庇って死んだボンも含まれていた。
霊安室に安置されている死体の中で家族がいるならば会いに来るのだが、特攻隊にいる時点でほとんどが魔法使いの被害によって孤児になった者達である。死に顔を見に来るのは同じく特攻隊の仲間だけ。最後の別れを告げに来るのも特攻隊の仲間だけ。
ソルディエルは二度と動かないボンの手をもう一度握った。すっかり冷たくなって、あの時とは全く違うもののように感じられた。

(これが死…。温もりは既になく、二度と言葉を交わすことも出来ない…。)

ソルディエルは、目をつぶった。

(だが…。言葉を交わさなくても、我々は約束を交わすことが出来る。ワタシの足が無くなっても、ワタシがまた立ち上がることが出来たように。魔法使いは命すら奪う。だが、それでも奪えなかったものが確かに存在する。ボンの意志を魔法使いは奪えなかった。そして、今ここにある。だから、約束を交わそう、ボン…!その意志を引き継ぎ、魔法使いを必ず皆殺しにしよう!この戦いの先に平和を築こう!誰もが、何も、魔法使いに奪われることのない世界を作ろう!そのための聖戦!そのための王道具!そのための人の意志!世界に平和をもたらすために、どんな痛みにも耐えて、この命果てるまで戦い、理想を実現することを約束しよう!必ず…。必ずだ…。)





しばらくして、霊安室に特攻隊隊長のジェゼナがやって来た。
「!」
それと入れ替わるように霊安室の扉からソルディエルが出て来た。ジェゼナは察した。最後の別れを告げたのだと。
「…ソルディエル君。顔色が良くないね。帰ってきてから治療は受けたかい?」
ジェゼナはソルディエルの顔色が余りにも悪かったのと足元がふらついているのを見て、帰還後からも休息を取っていないのではないかと心配した。

「いえ、まだ…。」
ジェゼナの心配は当たっていた。なのでジェゼナはソルディエルを医務室へ連れていこうとした。
「足もふらついている。ボクも一緒に行こう。一番近い医務室は向こうだから――――――。」

「ジェゼナ隊長、ワタシは大丈夫――――――。」


その瞬間だった。何の前触れもなく、それは始まった。ソルディエルは突然の強烈は吐き気に襲われて、思わず口を押さえて、その場に崩れ落ちた。
「ソルディエル君!――――――!――――――!」
ジェゼナの言葉も耳に届かない程の吐き気に加えて、下腹部に強烈な痛みが突き刺さり、ソルディエルは声を押し殺したが、我慢出来ずに廊下をのたうち回った。
下腹部に突き刺さった痛みは今までに経験した腹痛を全て足して十倍したような激しさとドロドロとしたヘドロが体の中をかき回すような気持ち悪さを伴っていた。

「ああああぁっぁあっぁっぁああああああ!!!!!」

そして、ソルディエルが痛みに耐え兼ねて叫び声を上げ、お腹に力を入れた瞬間、辺りは血まみれになった。ソルディエルの両足の間から大量の血と共に、小さな人のような塊が顔を出していた。それと目が合った後、ソルディエルは気を失った。

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この記事へのコメント

2015年01月11日 21:38
火剣「いったい何があった?」
コング「どんな痛みにも耐えてみせるって、それは無理。生身の人間の体は痛みに耐えられないように出来ている」
火剣「コングが言うとヤらしく聞こえるから不思議だ」
ゴリーレッド「不思議でもない」
コング「医務室にセクハラドクターが待機しているというシチュエーションに期待」
火剣「それより小さな人のような塊って何だ?」
ゴリーレッド「普通ではないな」

2015年01月11日 23:20
うああああ!
これは、やはり妊娠していた・・・!?
暴虐の魔法使いの子供。あまりにもおぞましい。

佐久間「未熟児か。」
山田「うげえ・・・。」
八武「では医務室に私が待機。」
山田「お前はブレないな・・・。」
八武「見慣れているからねぃ。私のところへは、望まれぬ子供を抱えた者が、よく訪れるんだ。たとえ無理やりの結果でも、中絶は悪だという思想が、まだ結構あるんだよ。」
佐久間「カトリック的な倫理観ってやつか。」
八武「もちろん体には大きな負担がかかるわけだけどねぃ。」
維澄「自分に酷いことをした男の子供を産むということが、どれほど精神的に苦痛か。判断は本人の意思を最優先しなければならないね。」
神邪「しかしこれは、ソルディエルさんだけの問題ではないですね。“人間”と“魔法使い”は異なる種だという前提が、崩れそうな・・・。」
佐久間「なるほどな。バウフェーク問題か。」
維澄「邪悪な魔法によるものだと結論付けられるか。とにかく助かる気がしない・・・いや、そもそも現時点で生きてるのかどうか。」
佐久間「死人とでも目は合うからな。」
神邪「肉体の痛みは耐えられても、心の痛みは耐えられそうにありません。」
2015年01月12日 17:24
>火剣獣三郎さん
一体何が起こったのか。おそらくソルディエル本人ですら自分の身に何が起こったのかさっぱり分からない。ボンや他の死んでいった特攻隊の想いを引き継ぎ、決別と決意を胸に先に進もうとした矢先の出来事。今までの無理がたたったというレベルの問題ではなさそうです。
とにかく普通ではない状況。魔法使いに襲われ、また特攻隊として様々な苦難を経験してきたソルディエルであっても、今まで一度も経験したことのない出来事。その正体は…。
2015年01月12日 17:25
>アッキーさん
非常に残念なことにソルディエルは望まぬ妊娠をしていました…。そして、未熟児のまま出産。その事態を理解する前にソルディエルは気絶しましたが、目覚めて全てを知った時にはどうなるのか…。
設備が整った現在でさえ、出産は死の危険が伴う一大事。それと早期出産や流産もある一定の確立で起こること。しかし、この世界には高度に発達した医療技術はないし、医学的知識もまだまだ未発達。妊娠しているか検査する方法もなければ中絶のための方法も確立していません。
奪われ、乱暴され、その上で望まぬ子どもまで。その精神的苦痛は計り知れません。ソルディエルが何を感じ、どんな判断をするのか、それは本人しか分からない。また、このことをもって人間と魔法使いが同じという判断がなされるのか、それとも魔法の力と判断されるのかは、マチネの人間が決めるでしょう。そして、ソルディエルの子の運命は如何に。果たして生きているのか、それとも…。
足を焼かれても雷に撃たれても、それらから立ち上がったソルディエル。肉体的な苦痛は精神力が上回っていると思われます。しかし、心の痛みに耐えられるのか。どれだけ決意しても、その決意に直接大ダメージを与えるような出来事。果たして…。

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