英雄再来 第十一話 ソルディエル6

『大切』を守るために、生きると誓う。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

特攻隊に入って数ヶ月。数々の特訓に耐え、王道具も体に馴染み、様々な任務をこなして、魔法使いを殺し続けたソルディエル。そんな彼女は、最近になって体調不良が続いていた。

(う…うげええええ…。)

ソルディエルは誰かに心配をかけまいと厠で唾液と胃液の混じった液体を吐き出していた。今までに経験したことのない謎の頭痛と吐き気。初めは、数日で収まると思っていたが次第に酷くなっている気がする。

(まさか、王道具の拒否反応か…!?…いや、それならば問答無用で死んでいるはず…。ただ、そろそろ王道具の整備の日程も近いし、早めに見てもらった方がいいか…?正直、裸になって物のように扱われるあの検査は嫌だけれども…。)

その時、ソルディエルの通信機に連絡が入った。

『特攻隊各員に連絡する。ジェゼナだ。15分後に緊急会合を開く。場所は会議室。繰り返す。緊急会合を――――――。』

(緊急事態…!魔法使いに何か動きがあったのか…!)

ソルディエルは平静を装い、早足で会議室に向かった。





「全員集合したな。諜報隊より連絡だ。魔法使いの集落を発見した。詳細を。」

「はい。」
特攻隊隊長のジェゼナに促されて、諜報隊の者が皆の前に出て地図を使いながら詳細を述べていく。
「先日、魔法使いの一体を発見したのがこの場所です。遠くから風魔法を使うのを確認しています。」

特攻隊の面々は地図と説明を真剣な眼差しで聞いていた。
「風魔法を?奴らの狙いは?」

「痕跡を確認したところ、その場の草の一部が刈り取られていました。おそらくは目印を付けていたのだと思われます。」

「魔法使い側の斥候と言う訳か。」

「はい。自然には出来ない形で草を刈り取り、『ここまでは調べた』という目印を残したのでしょう。次の探索地点が分かるし、他の魔法使いに知らせる役割もあると思われます。つまり、奴らは支配領域を広げようとしている。」


実際は、その魔法使いは少し遠くまで薬草を採りに来ただけであった。多めに入り用だったので本来なら採りに来ないような場所にまで足を伸ばし、風(ウィンド)で薬草を刈り取っていただけであった。しかし、遠くからではそこまで確認することは出来ない。ましてや、魔法使いに対して恨みを持つ者達の目から見れば、魔法使いが何やら邪悪な儀式をしていると誤解してもおかしくはなかった。


「そして、その魔法使いに気付かれないように追跡した結果、魔法使いの拠点を一つ発見しました。ここです。」

「こんなところに…。」
そこは大陸の周囲からすれば中心に近い場所であった。
「魔法使いの奴ら、勢力を拡大してやがる…。」


魔法使いの都市国家群であるジュールズは大陸の周囲に国を構えているが、それ以外の場所にも魔法使いの町や村は多数存在する。また、それらは山や森などの比較的発見しにくい場所に存在していたため、昔から住んでいたとしてもマチネの目には近年になって侵攻してきたと映った。


「魔法使いの拠点と、今回魔法使いの斥候が目印を付けた場所を考えると…。」
諜報隊員が地図に円を書き込む。
「この円の範囲が魔法使いの活動拠点です。今後、更なる勢力拡大が予想されます。すると、マチネの位置がここなので…。」

「バレるな、確実に。」


当時のマチネには巨大な壁はなく、自然の地形を利用して魔法使いから身を隠すようにして生活していた。そのため、魔法使いにマチネの場所を特定されることは何としてでも避けなければならなかった。それこそ、緊急招集をして、その日の内に出撃する程に。


「なるほど。魔法使いにマチネの場所がバレる前に、この拠点を潰そうって訳ですね。」

「その通りだ。」
ジェゼナが隊長の風格を漂わせた口調で叫んだ。
「魔法使いは我々から全てを奪おうとしている!それは土地も例外ではない!土地を奪い、生活圏を奪い、物理的に我々を圧迫し、屈服させようという腹なのだろう!だが、我々は屈しない!我々の意志がある限り、奴らの好きにはさせない!そして、この戦う意志だけは奪わせない!奪わせてはいけない!それでも奴らが奪おうと魔の手を伸ばしてくるのなら、それを何度でも退けよう!魔法使いが何でも奪えると勘違いしているのなら、その無知蒙昧な者共に思い知らせてやろう!魔法を打ち払い、人間の意志によって作られた機械でもって正しいことを証明し続けよう!これは聖戦!我々の意志を守り抜く戦いだ!何の犠牲もなく、誰も死なずに勝てる戦いではない!が!しかし!それでも、隊長として命ずる!一体でも多くの魔法使いを討ち、そして必ず生きて帰って来ること!全員出撃だ!」

ジェゼナの激励に隊員達が一斉に答える。
「はい!!」
「おう!!」
「了解!!」
「ガッテンです!!」
「了解しました!!」
「はいっ!!」
「もちろんです!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「必ず生き残ることを誓います!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」

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この記事へのコメント

2015年01月05日 22:24
火剣「体調不良?」
ゴリーレッド「心配だな。こんな大事な時に」
コング「裸になって物のように扱われるあの検査?」
ゴリーレッド「その不謹慎な笑顔を3秒以内に消さないとフェイスクラッシャーしか待っていない」
コング「・・・」
ゴリーレッド「フェイスクラッシャー!」
コング「NO!」
火剣「前に言っていた検査とはこのことか」
ゴリーレッド「軽い気持ちで検査を受けなさいなんて言われたらキレるのも当然だ」
コング「身体検査は大事だ」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「待てえええ!」
火剣「魔法使いの集落? 誤解と相互不信で戦争が起きるんだな」
ゴリーレッド「アニマルには自分の匂いを木につけて縄張りを教える習性があるから、そんな感じなのかと誤解したかもしれない」
火剣「憎悪からは相手の良いところを見ようなんて気持ちはゼロ%だから、全て悪いほうへ考えてしまう」
コング「で、ソルディエルの身体検査はいつやるんだ?」
ゴリーレッド「しつこい」
コング「ついでにエクスも受けなさい」
ゴリーレッド「浴びせ蹴り!」
コング「違ううう!」
2015年01月05日 23:58
吐き気と頭痛。まさか・・・!?
PTSDでも同じ症状は出ますが、しかし例の魔法使いに体を奪われていることを考えると・・・。

山田「便利さも、時と場合で大きな誤解を招いてしまうのか。見つかった時点で、どうあっても疑われていただろうが・・・。」
佐久間「百年前の人間が現代を見たら、便利だと思うより先に恐怖が勝るかもしれん。そんな極端な喩えでなくても、異文化交流はしばしば、こうしたことが起きる。」
維澄「嫌われ者の老婆が、悪さをする子供を叱りつけたら、『魔女が呪文を唱えてる』と村人に思われたらしい。その子供が別な悪さをしているときに、誤って事故死すると、もう大変だ。魔女の呪いだと、村人に恐怖と不信感が広がる。魔女狩りの始まりだ。」
八武「悲しいことだ。風魔法をスカートめくりに使うという、平和的な発想が出てこないものか。」
山田「本気で言ってるなら殴るよ?」
2015年01月06日 17:23
>火剣獣三郎さん
謎の体調不良がソルディエルを襲いますが、戦士に休息などないし、どんな時でも戦わなければならないのが辛いところです。個人的な経験ですが大事な時ほど、体調が悪くなったり病気にかかりやすくなったりする気がします。
火剣さんの言う通り、前にマチネの事務部と言い合っていた検査のことです。王道具は貴重だし、何よりデータが徹底的に不足しています。なので王道具使いもかなり綿密に検査されるし、あまり人道的でない検査も行われます。それに加えて、ソルディエルは例の魔法使いに乱暴されたことで肌を見せることを極端に嫌う性格になりました。隊長になった時に軍服を来ているのも、着替えが異様に早いのもその表れの一つです。
さて、魔法使いの集落は実は発見されてないだけで結構あったりします。その内の一つを発見したマチネは殲滅に乗り出す。相互不信がなければ起こらないはずの戦いですが…。草を刈って目印にする行為は、縄張りの主張などにも使われますね。他にも森の中で迷った時に、木に目印を付けるような感じかもしれません。
魔法使いの行為全てを悪意に取るマチネ。その根底にあるのは憎悪。憎悪というフィルターで世界を見れば全てが敵に見えてくる。常に最悪を想定し、先手必勝で動く。この戦いの果てにあるものは…。
2015年01月06日 17:23
>アッキーさん
ソルディエルが助けられて数ヶ月後に起こった吐き気と頭痛。これが意味するものとは一体…?一つの可能性としてそれも存在しますね…。
魔法は使いようによって便利だったり、役立ったり、様々な可能性を秘めています。それこそ魔法が使えれば、動けなくても風魔法で物を運んだり、洗濯物を早く乾かせたり、夏場に扇風機代わりにしたり、色々出来ますね。
今では便利な電化製品や車、新幹線、テレビ、パソコンなど、百年前からみれば確かに…。タイムスリップで現代にやって来た者が車を鉄の猪と言って怯えたりする漫画の話が頭をよぎりました。文化の違いを急に受け入れることが出来る者は多くないでしょう。
魔女狩りも生活の苦しさや不満が、憎悪や嫌悪という感情と結びついて爆発し、集団リンチと化した現象なのかもしれません。根底の苦しみが世界を更なる苦しみの世界へと変えていく負の連鎖を断ち切るためには平和利用や平和的な発想が必要不可欠でしょう。殺し合いをするより、スカートめくりの方がよっぽどKENZENか。もっとも、八武さんの案はビンタのお返しが避けられませんが。

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