英雄再来 第十一話 ソルディエル29

変わるはずがない。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ジェゼナの部屋を後にした二人は廊下を歩きながら見つめ合った。その時、エクスは僅かにソルディエルを見上げた。ソルディエルがマチネに来た時には、エクスの方が背が高かったが、今ではソルディエルの方が少しだけ高い。

「エクスさん、今後共よろしくお願いします。」
ソルディエルは軽く会釈した。

「もちろんっす。ただし、もう「さん」付けは駄目っすよ。ソルディエルさんは班長なので、アタシのことはエクスと呼び捨てにしてください。」

「えー…。それはちょっと…。」

「駄目っすよ、そんなんじゃ。班長たるものビシッと言わなきゃ駄目っす。ちょっと練習でアタシのことをエクスと呼び捨てしてみてください。」

ソルディエルは少し困った顔をした。
「えー…。…分かりました。えっと…。」
今までずっと「さん」付けだったので、ソルディエルはいざエクスを呼び捨てにするとなると何か特別な気がして緊張した。
「エクス………さん。あっ。」
「駄目っす!もう一度!」


「エ、エクス…。」

「もっと大きな声で!」

「エ、エクス!」

「緊張せずに!」

「エクス!」

「班長っぽく命令するように!」

「エクス!!」

「良いっすね。それでこそ班長っすよ。では改めてよろしくお願いするっす。ソルディエル班長。」
エクスは頭を下げた。
「よろしくね、エクス副班長。」

エクスは軽く上目でソルディエルを見た。
「呼び捨てでいいっすよ?」

「副班長って呼んでもいいですよね。」

「ん~、まあそうか…。でも、班長が副班長に敬語はおかしくないっすか?次は敬語をなくす練習をするっすよ。」

「エクス!」

「は、はい!」

「普通、年上には敬語を使います!なのでワタシはこれからもあなたに敬語を使います!これは班長命令です!いいですね!」

「りょ、了解であります!」

エクスが敬礼をして、数秒間の沈黙の後、二人は笑った。顔を見合わせてケラケラと笑った。変わりゆく立場の中で変わらないものを確認出来た安心感から、無邪気に笑った。ソルディエルもエクスも確信していた。例え、班長、副班長という立場になっても、同じ王道具使いで、同じ戦場を駆け抜け、同じ釜の飯を食い、同じ場所で修行の相手を務め、同じ時間を過ごしたことは変わらないと確信した。濃密な時間を共に過ごした二人だからこそ分かることだった。

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この記事へのコメント

2015年02月28日 23:31
火剣「呼び方は重要だ」
コング「きょうも組織論?」
ゴリーレッド「泣くな」
火剣「親しさの度合いも関係してくるが、大して親しくないのに呼び捨てにする幹部は半人前だ」
ゴリーレッド「エクスのように呼び捨てにしてくださいという場合は呼び捨てにしてもいいと思うが、普通は自分が役職上になっても今までと変わらないほうがいい」
火剣「踊る大捜査線で、室井管理官は大幹部だが、平の刑事の和久さんに敬語だった」
ゴリーレッド「ずっと年上で先輩なら迷わず敬語。そこに人間性がある」
コング「女刑事のすみれさんが室井管理官にタメ口叩いても室井管理官は怒らない」
火剣「そういうノリは好きだ。結局は上に立つ者の振る舞いだな」
ゴリーレッド「戦場で命令する場合、スピードが命だから呼び捨てが普通だが」
火剣「要はメリハリだな」
コング「メリハリは大事だ。バストとヒップが同じ数字でもいいが、ウエストまで同じ数字では意味がない」
ゴリーレッド「何の話に飛んだ?」
火剣「ソルディエルとエクスは想像以上に強固な盟友だったか」
2015年03月01日 00:15
あの関係から、どのようにして現在の関係に繋がるのかと思っていましたが、意図的にけじめをつけようと努力した結果なんですね。

佐久間「部分的に、おかしなことになってるがな。」
維澄「どこが?」
佐久間「百合とか。」
維澄「百合はおかしくない。一体全体、何がおかしいというのですか? ふう・・」
佐久間「てめぇ・・・。」
八武「百合うまいモグモグ。」
佐久間「ん、わかった、言い換えよう、過剰なスキンシップだ。」
山田「なあ佐久間、人の振り見て我が振り直せって言葉を知ってるか?」
佐久間「え、何? 聞こえない。」
山田「てめぇ・・・。」
神邪「見方によっては、エクスさんが自分好みにソルディエルさんを育てようとしているような?」
維澄「私も自分好みに佐久間を・・・何でもない。」
佐久間「あ?」
山田「しかし現在に近付いてきたということは、あの場面へ向かっていくのか・・・。」
2015年03月01日 22:48
>火剣獣三郎さん
相手をどう呼ぶか。その一つを取って見るだけでも、その人の性格とかが分かると思います。敬称を付けず、名前だけで呼ぶのはやはり一定以上の関係があってこそ。ちょうど、親友同士が名前を呼び合うとか、恋人になって下の名前で呼び合うようになったとか、そんな特別な関係。
人を大切にする人は役職とか関係なく丁寧な言葉使いだったり、相手を尊重しようとしたり対等に見ようとしたりする。そこに人間性がにじみ出ていると思います。また、タメ口も人と人との関係性で、OKだったり駄目だったり。それから状況にも左右されますね。結局、根底に相手を対等に見ようとしているか、見下そうとしているか、そのどちらがあるかで決まるのかもしれません。
この後から、ソルディエルとエクスは班長、副班長という立場になり、表では上司と部下ですが、本当の関係は変わらない。言葉に表さなくても盟友という固い絆は変わらない。
2015年03月01日 22:49
>アッキーさん
エクスはけじめ半分、自分好みに育てること半分という感じかもしれません。エクスは無意識にソルディエルに死んだ姉の面影を感じていて、ソルディエルを自分の姉のように振舞って欲しいと思っている部分があります。後の百合百合なのは、姉と妹の少々過激なスキンシップ的な感じです。死んだ姉との触れ合えるはずだった、失われた時間の分だけ過剰になっているようですね。
段々と過去から現在へと近づいてきました。ソルディエルの過去から現在に近づくにつれて避けられない未来が迫ってくる。過去編はもう少しぐらい続きますが、それが終わればオネとの戦いの場に戻ってきます。どんな未来が待っているのか…。

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