英雄再来 第十一話 ソルディエル24

ジェゼナは変わらんのう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ジェゼナはゆっくりと言葉を紡いた。
「…同じ、マチネの仲間じゃないですか。魔法使いに居場所すら奪われ、世界を彷徨いながらようやく一つの場所に辿り着いた者達じゃないですか。確かに彼らの先程の姿はとても見ていられるようなものではなかった。酷く醜い存在だった。ただ、人間は完璧ではない。間違いを犯し、道を外れることもある。けれども、その間違いを指摘するのもまた別の人間、正しい道に引っ張り戻すのもまた別の人間の行い。ボクもまた完璧には程遠い一人の人間。間違う時が必ず来る。でも、その時は他の誰かが正してくれる。だから、今回はボクが正す側の人間だった、ということです。」

「…だから赦したの?」

「はい。彼らは必ず自分達の間違いに気が付くと信じているので。」

「信じる…ねえ…?」
大博士は眉にシワを寄せた。
「変わんないねえ…。未だに人間で有り続けたい訳だ。」

「ボクは人間です。人間として魔法使いと戦っているのです。」


「…王道具、本当に捨てる気だった?」

「ジィ(大博士のこと)が彼らを庇うか、賛同するなら技術部とは決別しようと思ってましたね。ボクの部下の心を踏みにじるようなところからの支援は受けませんので。」

「それで魔法使いに負けることになっても?」

「負けませんよ。」

「んん?」

「人間は魔法使いに負けません。必ず勝ちます。人間の心まで魔法使いは縛れない。縛らせてはいけない。現に魔法使いが恐怖と力で支配出来なかった人の心が結晶となって魔法使いを駆逐する力となっている。兵器も武器も王道具も、人の心があってこそ生まれた物。王道具を優先して人の心をないがしろにするのは本末転倒。人の心を守るために王道具をどうしても捨てなくてはならなくなった時は躊躇しません。最初に戦いを始めた時は王道具もなかった。それでも、人間は魔法使いに勝ってきた。人の心を弄び、支配しようとする魔法使いに負けるなんて有り得ない。ボク達は必ず勝ちます。」

「別に魔法使いを殺せるのなら人や心にこだわらなくてもいいじゃろが…。そもそもお前の両手両足を王道具にしたのも魔法使いに対抗出来るような人を超えた何かに成ると思ってやったのにお前ときたら…。」

「人間でなくなってしまえばボクは人間のためには戦っていないと思うけど。もちろん、両手両足をくれたこと、今でもたくさん感謝してる。」

「ほんと、変わらんのう…。特に魔法使いに対抗出来る唯一のものが人の心だと思っとるところが、じゃ。武器も兵器もカスじゃったあの頃とは違うのじゃよ、あの頃とは。それと、ジェーが思っとるよりも魔法使いは弱い。」

「分かってる。魔法使いも無敵じゃない。弱点もあるし、勝つことは不可能じゃない。それでも、魔法使いとボク達の差は未だ天と地以上に隔たってる。これは厳然たる事実だ。」

「…ジェーは人の心で魔法使いを殺す気じゃろうが、ワシの考えは違う。ワシが作り出した武器や兵器が魔法使いを根絶やしにするんじゃ。もちろん王道具もその一つじゃ。人の心なんぞ、魔法使いを殺すためには持っていても邪魔なだけじゃろ。」

「ジィのその心がなければ武器も兵器も生まれなかった。それらの武器や兵器で魔法使いを根絶やしに出来ればそれは人の心の勝利じゃないかな?」

「それは違う。ワシはとうの昔に人間を辞めているのでな。まあ、魔法使いを殺せるのなら人の心でも、武器でも兵器でも王道具でも何でもよいわぃ。ただ、人の心を貫くのなら、人間を辞めなかったから魔法使いを殺せませんでした、などというくだらないことは言うなよ。」

片眉を釣り上げた大博士に対してジェゼナはまっすぐな瞳で返答した。
「もちろんだよ、ジィ。」


(ジィ。ボクはあなたに、王道具をもらったこと以上に感謝していることがある。それは両手両足のないボクを人間として扱ってくれたことだよ。ボクは人間を辞めない。信じているから。そして確信しているから。人の心の強さを。)

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この記事へのコメント

2015年02月16日 23:45
大博士はGでしたか。段々とアルファベットが出てきましたね。思えばソルディエルはLなのでしょうか。
それはさておき、大博士のツンデレぶりオイシイです。

佐久間「名言だ。人の心を貫くのなら、それ相応の覚悟がいる。この世の中で“人間でいる”ことは困難なことなんだ。」
山田「重い覚悟を感じる。」
神邪「僕は人間やめてしまいましたからね。」
佐久間「そこは私はジェゼナと同じ思考だな。大博士も、お前も、やっぱり人間なんだよ。」
維澄「人間やめなければ辿り着けない境地があると思うのも、やっぱり人間らしさなんだね。逆に、自らを人間と称しながら、愚にもつかないことを言ってる連中は、どれほど人間らしいのか。捕鯨を残酷だと抜かす金持ち連中は、ゴミでしかない。」
八武「どうどう。」
佐久間「ヒューマニストが人の心をないがしろにしていると、人間やめたくなるんだなぁ。」
2015年02月17日 00:46
コング「♪卵が先か、鶏が先か、心が先か、機械が先か」
ゴリーレッド「魔法使いを絶対に許さないという思いは『心』だから、機械は心から生まれたというのが正しいと思う」
火剣「ジェゼナと大博士の考えは微妙に違うのか」
コング「JとG」
ゴリーレッド「人間のために戦っているとなると、人間であり続けるしかない」
火剣「大博士の、人間を辞めざるを得なかった気持ちもわかる」
コング「とても人間の心があったらやっていけない場面というのはあるだろう」
ゴリーレッド「でもそれで冷酷になり、人の気持ちがわからなくなったら、どうなのか。技術部のように『これじゃ魔法使いのほうが人間的だ』なんて思われたらアウトだ」
コング「アウトマはアウトにならなかった」
ゴリーレッド「人の心の強さを信じていく。ジェゼナもソルディエルもその信念で行けばいいと思う。正道だと痛感する」
コング「エクスに貫通」
ゴリーレッド「剣で貫通してほしいと?」
コング「言ってません」
火剣「心を失ったら人間ではなくなってしまう。やはり一番大切なのは心だ」
コング「優等生発言、似合わねえ」
火剣「うるせえ」
ゴリーレッド「心がないと戦う気も起きないだろう」

2015年02月22日 19:00
>アッキーさん
特攻隊ではコードネームを使っている者は多いのですが、他のところでは使う必然性があまりありません。そんな中で大博士は人間を辞める時に名前も捨てて、自らGと名乗っています。ソルディエルは、元々ソルジャーから来ているのですが偶然にもLが入りました。自分でも書いてて、大博士はツンデレだなぁ、と思います。
大博士の言葉は、後にジェゼナがソルディエルに『信じることは修羅の道』と語ったように、人間らしさを保つことは厳しい道です。その道を踏み外さないように歩くのは相当の覚悟が必要ですね。
大博士は自らを人間辞めたと評していますが、ジェゼナは大博士を人間だと評しています。ジェゼナが両手両足を失って、どうしようもなかった時に助けたのが大博士だし、その後、対魔法使いの人材として扱ってくれたのも、両手両足を提供したのも大博士。ジェゼナには、口では人間を辞めたと言っている大博士の言葉が逆に聞こえています。人間を辞めず、諦めず進み続けた境地が後の特務隊に繋がっていると思います。
一方で、世間的にはヒューマニストを語っていても実際はそうではないという者もいるでしょう。違いは多分、行動の内容。大博士は行動で全てを物語っている、そんな感じ。
2015年02月22日 19:00
>ブラックホークさん
卵が先か鶏が先かというのは、色々な場面で使えますね。どちらが先かというのは、問題によってはとても重要な問いになることも。マチネの始まりはやはり心。魔法使いに対する強い感情が機械を生み出しました。後世でその心を持つ者の多くは亡くなり、魔法使いを直接知らない世代がたくさん増え、心は忘れ去られた形となってしまいました。
ジェゼナはどこまでも人間であり続けることが魔法使いに勝つ唯一の方法だと信じています。そして、人間として戦わなければ何のために戦っているのか分からなくなってしまう。ジェゼナはとにかく人間の心ありきなのです。一方で大博士は魔法使いに勝てるなら人間性を捨てても構わないと考えています。何かを得るためには何かを捨てなくてはならない。大博士の場合、捨ててもよいものに人間性も含まれます。それと、人間の心があれば到底耐え難い場面もあり、その時に心を壊して戦えなくなるぐらいなら最初から心を捨てておけば良い、とも考えています。ジェゼナの考え方は魔法使いに心すら壊されてしまった時には戦えなくなる、という心配を大博士はしています。
ただ、技術部は技術に特化して、それを優先するあまり人間性を欠くようなところが多々あったりします。なので、今回のような事件が起こることもあるのです。そんな中でアウトマが反省出来たのは大きいですね。アウトマ、セーフ。
ジェゼナも、その意志を引き継ぐソルディエルも、人を信じ、心を信じることをただ貫くのみ。それが例え、修羅の道であっても。心は、全ての原動力。機械も燃料がなければ動かないのと同じで、人間も気持ちがなければ何もしない。やはり、心は大切ですね。

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