英雄再来 第十四話 エクス14

『化け物』、笑う。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

――――――――――――――――――

それは過去の一場面。まだ大博士が生きていた頃の何気ない会話。

「大博士。」
一緒に歩きながら、エクスは隣の大博士に声をかける。
「ん~。何じゃ、エクス。」

エクスは自分の両手をギュッと握った。
「アタシは、この世界が好きだよ。隊長がいて、ソルディエルさんがいて、アウトマがいて、特攻隊の皆がいて、大博士がいるこの世界が。」
「そうか、そうか。」
大博士は飄々として言った。
「エクスなら本当に使いこなせるかもしれんな。両腕王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』を。」

――――――――――――――――――





「うああああああ!!!!」
エクスの両腕王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』から化け物に向かって砲弾が放たれる。
『ギギギギギギガガガアアア!!!』
それに対し、化け物は体にあるいくつもの口から火を吐いた。それはさながら火炎放射器のようであった。

砲弾は炎で爆発。その爆煙に紛れて化け物は迂回し、エクスの背後を取った。化け物の巨体からは想像も出来ない速さだった。
「ああああああ!!!」
背後から迫る化け物に対し、エクスは振り返ると同時に両腕王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』から取り出した大剣を思いっきりブン投げた。
『ギャガギャギャアアア!!!』

ガギンッ!

化け物の口の一つが大剣を噛んで止めた。そして他の口から火炎放射が放たれる。
『ギギギギギギギ!!!』

「舐めるなあ!!」
エクスは鋼鉄の板を取り出し、炎を防いだ。この板はペリドットの風の刃を防いだものと同じく防御用の厚手の特注品だった。炎の切れ間を見計らい、反撃しようと鋼鉄の板の影から飛び出したエクスに化け物の更なる攻撃が飛んで来た。
『ギャギャギャギャアアアア!!!』
化け物は口から黒くて太い針を何百本も撃ち出してきたのだ。

「ちいぃ!!」
エクスは即座に退いた。後には針山と化した鋼鉄の板が残った。その針のいくつかは鋼鉄を貫通しており、留まっていれば針鼠にされていただろう。

エクスはある程度の距離を取った段階で退くのを止めたが、化け物の方は追ってこなかった。エクスが注意深く化け物を見ていると、先程の光子力放射で付けた傷がみるみる内に回復していた。

「っ!!!」



『ゲギャギャギャギャギャギャアア!!』
化け物は笑った。複数の口が一斉に下卑た笑い声を上げる様は見ているだけでも不快なのに、その耳障りな声と相まって更に不快であった。それと、いくつかの口は人の言葉を喋っていた。
『回復ハ任セテ。回復ハ任セテ。ゲバババババアアア!!』

(こいつ…!)
エクスは顔をしかめ、歯をギリリと鳴らした。
(アタシの部下の口真似を…!!)

『許サンゾー。許サンゾー。焼キ尽クセー。ゲギャガギャギャギャギャ!!!』
化け物は再び炎を吐き出した。

「クソがああああ!!!」
エクスは巨大な鋼鉄の弓を取り出した。その弓に備え付けられているのは巨大な鋼鉄の矢。熊ほどの大きな生き物であっても食らえば致命傷は免れない。ただ、相手の大きさはエクスが今までに見た生き物のどれとも比較しようもないぐらいの巨体。強いて言えば、マチネの機械兵器ロボトがようやく匹敵するほどの大きさ。鋼鉄の弓矢であっても、どこまで手傷を負わせられるか分からなかった。

エクスは何本もの鋼鉄の矢を放つ。荒れ狂う炎を貫通し、矢は化け物へと向かう。面での範囲攻撃を主とした火炎放射に対して貫通力特化の弓矢は有効だった。
『溶カシ尽クセー。溶カシ尽クセー。ゲギャガギャギャギャギャ!!!』
ところが化け物の口から炎の代わりに大量の液体が吐き出された。鋼鉄の矢は、それらの液体に溶かされて化け物に辿り着く前に地面に溶け落ちた。

『喰ラエー。喰ラエー。ゲギャガギャギャギャギャ!!!』
鋼鉄の矢を全て溶かし切った化け物は次の攻撃に入った。何と口から無数の砲撃を放ってきたのだ。

「ああっ!!?」
戦場は爆音に包まれ、爆煙が上がった。
『ゲギャギャギャギャギャギャアア!!』
化け物は六本の足を高速で動かし、爆煙の中のエクスに向かって突撃した。化け物の口が爆煙ごとその場を噛み砕く。

ガギンッ!

化け物は何かを噛んだ感触を得た。しかし、それはエクスではなくエクスが王道具から取り出した鉄の案山子だった。エクスは少し離れたところから両腕で二つの光子力放射を構えていた。

光子力放射は一発撃つだけでも動力消費が激しい。加えて、二つ同時に放つことは技術的にも難しく、時には失敗することすらある。撃った後の反動は一つの時の比ではない。しかし、エクスにはもうこれしかなかった。アイに回復してもらった両手王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』の動力はもうすぐ底をつく。そうなれば両腕はただの鉄の塊になってしまう。そうなる前にエクスは決着をつけなければならなかった。


化け物は本物のエクスに気が付いて、鉄の案山子を噛み砕きながら方向転換をした。そして一気に加速してエクスに向かって来た。
(もう遅いっ!貴様がアタシを噛み砕くよりも一瞬早く撃てる!)
歴戦の経験からエクスは既にこの先の展開が読めていた。どちらの攻撃が先に当たるのか、既に頭の中では計算し終わっていた。エクスは集中した。今度こそ、この二本の光子力放射を喰らわせて化け物を仕留めると心に誓っていた。

化け物の巨大な口が迫る。エクスの光子力放射が光る。
(勝った!化け物、アタシの勝――――――。)

























「「「「「「助ケテ…。副隊長…。」」」」」」
化け物の口が同時に呟いた。その声は間違いなく、特務隊班長のビィ、アイ、オウ、キュウ、ティイ、ユウの声だった。

頭によぎった自分の部下達の顔。一秒の何十分の一の隙が生まれた。エクスの計算が狂った。

ガシュンッ!

肉の砕ける音がした。

『ゲギャガガガガハハギャアアアア!!!』

化け物の笑い声が戦場に響く。

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この記事へのコメント

2015年07月25日 17:31
火剣「まさか・・・」
ゴリーレッド「まさかそれはないと信じたい」
コング「♪まさかり担いだ金太郎!」
火剣「エクスは不死身だ」
ゴリーレッド「敗れるならとっくに終わっている」
コング「でも噛み砕いた男が響き渡ったし、笑っているのは怪物だ。現実から目をそらすな。直視しろ!」
ゴリーレッド「映画の予告編でもよくある」
火剣「映画『相棒』の予告編。眠っている伊丹刑事が遺体を入れる袋に入れられて運ばれた。まさかここで殉職かと思ったら訓練だった」
コング「予告編あるあるだ」
ゴリーレッド「エクスも大丈夫だ」
2015年07月25日 23:13
えげつない・・・!
声真似だけではなく、本当に魂が取り込まれているジンメンパターンも考えましたが、いずれにしてもデーモニック。
この悪魔相手に、エクスは果たして・・・!?

山田「これでは逃げることさえ出来ない!」
佐久間「逃げれば死ぬ。ならば戦って・・・どうだ?」
八武「エクスちゃああああん!!」
維澄「咄嗟に肉の塊を出して身代わりにしたとか。」
神邪「取り込まれているとしたら、助ける方法は?」
佐久間「しかし助けを求める声は、声真似な気がするな。取り込まれているとしても、奥底に押し込められているだろう。」
2015年07月26日 12:25
>火剣獣三郎さん
ついにエクスまでもが噛み砕かれてしまったのか。それとも、映画の予告編パターンか。今までも壮絶な戦いを幾度となく経験してきた不死身のエクス。生き残ってきたこと自体が強者の証。今回も生き残って仲間の仇を討てるのか。
一方の怪物は勝利を確信し笑い声を上げている。これは油断か、それとも本当に噛み砕いてしまったのか。いよいよエクスと怪物の戦いも最後を迎えそうです。この戦いの結末は…。
2015年07月26日 12:25
>アッキーさん
精神的にもエクスを砕こうとする化け物。最初、エクスは挑発のために口真似をしていると考えていました。しかし直前で、もしやと心揺らされた。仲間の絆に付け込む悪魔的な攻撃。エクスはどうなったのか…。
最早、逃げ切るだけの体力は残っていないし、王道具も直に使えなくなってしまう。ならば逃げて死ぬよりも戦場で活路を見出すしかないか。王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』の中には食料を入れておくことも可能なはず。となるととっさの身代わり作戦は成功したか…?
さて、もし特務隊のメンバーが取り込まれているとすると、助ける方法は存在するのか。既に肉体は失われ、魂だけの存在になっていると思われます。魔法使いなら魔法でどうにか出来るかもしれませんが…。

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