英雄再来 第十四話 エクス8

守れなくて、ごめんなさい。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ペリドットが古代魔法銃デスチル・ジュールの一撃を放とうという瞬間、一筋の光がエクス達の隣を通り抜けた。

「!」
「っ!」
「!?」
「えっ!?」
「なっ!?」
「!??」
「!!」

その時、光のように駆け抜けたのは特務隊の新人だった。

『消え去れえええええ!!!』
引き金を引くペリドットの前に彼女は立ちはだかった。
「皆は絶対守るんだー!!極大・破動弾!!!」

その細い両腕が上空のペリドットに向けられた瞬間、途轍もない大きさの魔力の塊が飛び出した。その大きさたるや、マチネの巨大防壁の高さを凌ぐほどであった。小さな体のどこにそんな力を秘めていたのか。エクス達、特務隊の面々はただ驚き、見つめていた。突然現れた特務隊の新人アールの姿を。


『ウオオオオオオオ!!!』
ペリドットの放つ魔法銃デスチル・ジュールの魔法弾と放たれた極大・破動弾は真っ向からぶつかった。
「はあああああああ!!!」

その威力は全くの互角。それぞれが更に追加で魔力を込めて、どうにか相手を弾き飛ばそうとするが、それでも互角。多少押し合い巨大な魔法弾が前後するも均衡は破れない。勝負は持久戦にもつれ込むと思われた。




――――――――――――――――――
時間は少し遡る。

マチネの住民の避難中にゼロが上空のペリドットを発見した後、ペリドットの古代魔法銃デスチル・ジュールの一撃が放たれた。

その時にゼロは放たれた魔法弾の強過ぎる威力によって地面の中に埋もれて気絶していた。あれだけ大きな魔法弾を受けて、死なないどころか短時間で復活を果たしたのは驚くべきことである。チュルーリの名を冠し、自らを『世界の真理の名を連ねる、決して完全に損なわれることのない者』と名乗るのは伊達ではなかった。
そして、目覚めて地面から這い出したゼロが目にしたのはごっそりと削られた地面と、その先の平原に転がっているマチネの住民達の死体の数々であった。
まるで地面に大穴が空いたように削られた場所はペリドットの放った古代魔法銃デスチル・ジュールの一撃の跡。その先に広がる死体の数々は風精霊によって惨殺されたマチネの住民達。ゼロは泣き叫ぶことも出来ず、その場に力なく崩れた。

(守れなかった…。)
ゼロの瞳からは涙が溢れていた。
(誰も守れなかった…。)
その涙を止めることなど出来なかった。
(光里さん、響希さん、望美さん…他の特務隊の皆や巡視隊の皆さん…それに何よりマチネの人々を守れなかった…。
マチネで一番高い場所から全体を見渡して知った、この場所に生きている全ての人々の息遣い…。なくなっていい命なんて一つもない。消えていい命なんて一つもない。全て存在しなければならない命。生きなければいけない命。守りたい命、守りたい笑顔、守りたい想いがそこにあった。
ゼロがどこの誰かも分からないのに受け入れて温かく迎えてくれた皆…。ゼロが魔法使いにも関わらず、あの事件の首謀者であるにも関わらず、皆を騙し続けているにも関わらず、皆は優しく接してくれた…。だから、あの時、誓ったのに…。皆を守るって誓ったのに…!)
ゼロはただ体中に力を込めて歯を食いしばって嗚咽を漏らしていた。
(ごめんなさい…。守れなくて、ごめんなさい…!ゼロは…ゼロは無力です…!ゼロがこの世界に復活したのは死んでいった者達が発した英雄を求める強い想いに応えて封印が解けたから…。それなのにも関わらず、ゼロは英雄としての役目を何一つ果たしていません…。誰も守ることが出来なかった…!)

その時、ゼロの耳に聞こえてきたのは戦闘の音だった。爆弾が爆発する音だった。
(まだ誰かが戦っている!?)
ゼロは他のことを一切考えずに音のする方へと駆け出した。駆け出した先にはペリドットと戦う特務隊の班長達の姿があった。
今の自分に何が出来るのか。そんなことすら考えず、ゼロはただ戦場に向かっていた。まだ何も出来ていない自分に出来ることがそこにあると感じていた。まだ、守れるかもしれない。救えるかもしれない。全員を守ることは出来なかったけれども、せめて一人でも守りたい。まだ戦闘が行われているのならば尚更だった。

そして、ゼロはペリドットと魔法弾の撃ち合いをすることとなる。

――――――――――――――――――

『ウオオオオオオオ!!!』
ペリドットの魔法弾とゼロの極大・破動弾は一見すると互角だった。
「はあああああああ!!!」

だが、上空から下に向かっているペリドットの方の巨大な魔法弾が少しずつ押し始めた。

(駄目…!このままじゃ…!守れない…!賭けに出るしかない!!ツヲ兄様、ゼロに力を貸してください!!)
ゼロは極大・破動弾を撃ち続けながら呪文を唱えた。それは魔法使っている最中に追加で別の魔法を放つという高等技術だった。
「星々の輝きよ!我が眼前に集いて列陣を成し、森羅万象を貫く光となれ!!破動砲!!!
凄まじい光と音が戦場を包んだ。収束した魔力の砲撃はゼロの極大・破動弾とペリドットの古代魔法銃デスチル・ジュールの魔法弾をまとめて貫いた。

『アアアアアアアアアア!!!!』

ペリドットは破動砲の一撃に巻き込まれた。


巨大な魔力の真っ向勝負に決着が付いた。
古代魔法銃デスチル・ジュールの魔法弾も、極大・破動弾と共に対消滅した。
ゼロは莫大な魔力を放出したことで、しばし放心状態だった。

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この記事へのコメント

2015年07月12日 21:22
ここでゼロ!!
姿が見えないのは、来られないのではなく、ここぞというときに駆けつけるフラグだった!

佐久間「そうか、そもそもゼロがいた。」
山田「今のペリドットに対抗できそうになかったから除外していたが、まさかここまで強いとは。これが意志の力か!」
佐久間「チュルーリ一家としての底力が出てきた。これで勝てる・・・?」
山田「何で疑問系なんだ。」
佐久間「うーん、今のペリドットの状態が、どうもなあ・・・。」
山田「もう死んでいて、残留思念で戦っているとか?」
佐久間「普通に考えれば、そうなんだろうけど・・・どうもなあ・・・。」
山田「三木と戦ったときのミギーみたいに煮え切らないな。」
佐久間「いや、私が考えているのは、ひとつは、こいつ本当にペリドットなのかということだ。」
山田「あん?」
佐久間「いや、もちろん何らかの意味でペリドットではあるんだが、どうもなあ・・・。」
2015年07月13日 21:47
コング「おおお、ゼロ、ヒロピン候補発見! しかも上玉! 頑張れペリドット!」
ゴリーレッド「なぜそうなる?」
火剣「この極限状態なら、魔法使いだとバレるとかバレないとか、そんなことは言っていられないな」
コング「魔女とわかれば磔で火刑だ」
ゴリーレッド「エクスたちはそんなことはしない」
コング「ところでツヲ紳士はどうした?」
ゴリーレッド「命の重さをゼロは知っている。年収がどうだ、肩書きがどうだ、そんなことは命の重さとは関係ない。社会に役に立っているか否かなど、一切関係ない。命そのものが限りなく尊く重いんだ。そこを勘違いしている政治屋はそれこそ消え去れだ」
コング「ドウドウ」
火剣「ゼロは正真正銘の魔女。これは強いぞ」
ゴリーレッド「情がわかるんだ」
コング「情事?」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「がっ・・・アールの女・・・」
ゴリーレッド「ギロチンドロップ!」
コング「があああ!」
2015年07月13日 23:27
>アッキーさん
ようやく登場のゼロです。英雄は遅れてやって来る?最初からいたのに気絶していたせいでかなり駆け付けるのが遅くなりましたが、それでもタイミングはバッチリでした。これって塞翁が馬?
普段はドジっ娘メイドみたいな雰囲気があるゼロですが、やる時はやってくれる。流石にチュルーリ一家の一員は伊達ではなかったということでしょう。チュルーリの大技、極大・破動弾も使いこなし破動砲をぶっぱなす。これで勝ったか…?
しかし、相手のペリドットの状態が気になるところ。勝つための最短は相手を知ること。今のペリドットの状態を知れば攻略法が分かるかも…?このペリドットは残留思念か、それとも別人…?どうにも違和感がある…?
2015年07月13日 23:27
>火剣獣三郎さん
ここでゼロの登場です。今までのゼロの頭の中には魔法使いだとバレてはいけないという意識がありましたが、それも仲間のピンチを見て吹き飛びました。バレる、バレないが頭を過ぎる以前に飛び出していたのです。なので、我に返れば…。さて、ゼロが魔法使いだと分かってエクス達はどんな選択をするのか…。ちなみに次の回想でツヲさん登場するかも。
ゼロはマチネで過ごす中でそこに「命」があることを認識しました。マチネにいたのは短い時間ではありましたが、一生懸命生きている人々の姿を目の当たりにしてゼロはそこにある命の価値に気が付いたのです。人は守るべきものがある方が強いとよく言われます。今のゼロは、守るべき者のためにどこまでも強くなれる。これで流石のペリドットも敗れたか。

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