英雄再来 第十七話 アウトマ4

化け物め…。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

光子力放射によって生み出された光の力は熱に変わり、辺りはとてつもない高温となった。見た目はそこまで代わり映えしないが、その場に生き物が踏み込もうものなら自然発火し、焼き尽くされる程の状況。その中に立っている者が一人いた。



アウトマであった。アウトマはその灼熱の中でも平然と立っていた。
「終わった…。」

『ん?もう終わりか?それはないだろう。』
その声が聞こえた瞬間、アウトマは悪寒を抑えられなかった。アウトマは反射的に後ろを振り返った。

『せっかくノってきたんだ。まだあるだろう?ここを私の墓場だと豪語したんだ。こんなオモチャごときで私を殺せるはずないだろう?そんなのはお前が一番分かってるだろうから、釈迦に説法か。』

それは人の形をしていなかった。
「化け物…。」
炎の化け物だった。炎で出来た化け物だった。
『かかかっ。』

オネの体全体から灼熱の風が吹き荒れる。体は溶岩のように溶けていて、そこからゆっくりと動く粘土のような炎の柱が何本も突き出す。その炎の柱は腕に形を変えたり、何でも呑み込む口の形になったり、様々に形を変えながら胎動する。そして、それらはオネを包み込むように周囲を蠢く。それは鳳凰が羽根で自らを包み、丸くなっているように見えた。次第に炎の柱は二本の炎の羽根に変わった。オネの姿は伝説に出て来る不死鳥「火の鳥」とそっくりになった。
『お前らの伝説に合わせて火の鳥になってみたが、どうだ?火に焼かれれば蘇る不死というところなんか共通していると思わないか?かかかっ。』

火の鳥はアウトマを見下ろして笑った。

『そうだ、お前の王道具『表裏皆無(クライ・クライン)』の能力は空間転送だな?お前が私の攻撃をヒョイヒョイかわせたのは攻撃する直前に自分自身を別の場所に空間転送したから。武器や兵器も空間転送で持ってきていたのだろう。今でも自分の周囲の空間を転送し続けることで熱を受けないようにしているのだろう?しかし、よくぞまあここまで巨大な王道具を作ったものだ。この地下の場所を構成している壁や床、全てが王道具とはな。』

「!!」
アウトマの顔が驚きで歪む。

『どうにも不思議だった。武器や兵器は溶けるのに、なぜここの床は溶けないのかと。私の体温がどんどん上がっていってるにも関わらず、だ。だが王道具ならば納得だ。これだけ巨大な王道具を作るのにさぞかし多くの命を使ったと思うと感動するな。魔法使いが敗れたのも頷ける。ジュールズが呼びかける停戦の本気度よりも、武器使いが掲げる魔法使い殲滅の本気度の方がよっぽど高い。王道具を体に埋め込む技術も多数の拒否反応者が出たんじゃないか?ここまでたくさんの命を削ってまで勝とうとしたんだ。ジュールズ壊滅は当然の結果だ。だが、一つ知らない真実があったな。それは魔法使いが、世界を滅ぼす力を持つ魔物を封印していたということだ。その一体が私だ。』

「なっ!?」

『誰かは知らんが魔法使いの中でお前ら武器使いを襲った者がいるようだな。それが誰なのかは分からんが、お前の言う悪い魔法使いという奴だ。そいつのおかげで戦争が起こってガーネットが死んだから私はこうして外に出られた。出会ったら礼ぐらいは言っとかんとな。それとお前らにも礼を言おう。ジュールズを倒し、私の封印を壊してくれてありがとう。おかげで窮屈な場所から出られた。タイチョーやお前のような強い人間とも戦えた。感謝している。』

「あ、ああ!?なんじゃと…!?そんな…!そんな…!?」

『ところで時々、私の魔法を妨害している何かがあったな。魔力中和装置まで開発しているとは大したものだ。王道具と魔法中和装置の組み合わせとは厄介だった。おかげで把握するまでに時間がかかってしまった。ひょっとして魔法中和の方も王道具だったりするのか?だが炎大神霊ぐらいの魔力になると消しきれないようだ。そして、私自身が発する熱は魔法ではないので中和出来ない。この姿になった以上、魔法中和すらも意味を成さない。さあ、アウトマ!ようやく準備運動が終わったんだ!さあ、私を殺してみろ!出来るものならなあ!かかかかかかかかか!!!』

「お主を殺しても仲間の仇を討ったことにならんじゃと!?」

『ん?ああ、そっち…?だが、少なくともここに来て暴れた分は私が殺してる。どうやら壁の外にも別の魔法使いが来て大分と殺したみたいだが、私が来なかったらそっちの魔法使いぐらいには勝ててたかもしれんな。どの道お前は私を殺す以外に生き残る道は存在しない。生きて他の仲間の仇が討ちたいのなら私ごとき討ち取って見せろ!さあ、もうじき『表裏皆無(クライ・クライン)』が溶け始めるぞ!?どうする?どう戦う?かかかっ!』



「…。ここまでのようじゃな…。」
アウトマは俯いたまま呟いた。
「『表裏皆無(クライ・クライン)』がもう持たんのは分かるわい…。ワシが戦えるのはここまでか…。『表裏皆無(クライ・クライン)』はワシの全て…いや、今までのマチネの歴史の中での最高傑作…。それが破れるということは――――――新しい最終兵器を出すだけじゃ。」

『んん?』
オネは笑顔を止めることが出来なかった。オネを見上げ、睨み付けてきたアウトマの瞳は全く死んではいなかったからだ。

「領域王道具『表裏皆無(クライ・クライン)』は制御装置じゃ…。本来、あの王道具は人間が身に付けるには余りにも強力過ぎた。『表裏皆無(クライ・クライン)』で制御して、ようやく使える程に。その副作用で一時的に目が覚めたのは思いがけない幸運であった。『表裏皆無(クライ・クライン)』が壊れた今、制御するものは何もない!炎の化け物よ!お主は実験第一号じゃ!マチネの王道具の最終兵器の犠牲者第一号じゃ!」

周囲の壁が、床が、オネの熱量に耐え切れずに溶け始める。それと同時に周囲の壁などに亀裂が入り『表裏皆無(クライ・クライン)』が崩れていく。それは卵の殻が割れ、雛が生まれるのに似ていた。蛹が割れ、少し早い羽化が始まったような雰囲気があった。何かの胎動が響いた。何か恐ろしいものの息使いが感じられた。

「『侵食統一(ジェゼナ・グルード)』より生まれし、不敗の王竜ジェゼナ・グルードラゴンよ!悪魔共に死を!世界に平和を!マチネに勝利あれええええ!!!!」

アウトマは崩れゆく『表裏皆無(クライ・クライン)』に呑み込まれて消えた。崩れゆく地下空間からオネは炎の羽根を広げ飛び立とうとした。その瞬間、オネは激しい衝撃に襲われた。何かが自分にぶつかったのだ。今のオネの触れるものは全て溶け、下手すれば気化してしまう。それでもオネにぶつかったそれは溶けずに平然とそこにいて、叫び声を上げた。

『ギジャアアアアアアァァァァァアアアアア!!!!!!!』

不敗王竜ジェゼナ・グルードラゴンが現れた。

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この記事へのコメント

2015年08月13日 00:21
冒頭からしてアウトマ終了の報せかと思いきや、むしろここからが本番だった!?
しかしオネとしては、これこそ望んだ展開であるようですが・・・。

佐久間「真相が明かされてきたな。」
八武「ここまで長かったねぃ。」
山田「オネを殺しても敵討ちにならない。アウトマは冷静だ。」
維澄「このドラゴンは、もしかしてジェゼナの変身した姿?」
神邪「フェニックスとドラゴン・・・ふつくしいです。」
佐久間「確かに相手が“魔法使い”であれば、勝てていただろうな。」
山田「やはり“魔物”に近いのか。見た目はまんま魔物だしな。」
佐久間「魔物、もとい精霊だが・・・そっちからすれば、武器使いも魔法使いも、ひっくるめて人間。とんでもないものを呼び覚ましてしまったのだ。」
八武「ところで手乗りオネちゃんは?」
山田「だから空間転送だって言ってるだろ。」
八武「エクスの王道具と被ってない?」
維澄「能力だけみれば上位互換だけど、持ち運びに難儀するなら相互互換かもしれない。」
八武「む、そうだ。今のオネなら形状は自在! ちっちゃなフェニックス・・・もとい、ちっちゃな女の子になりえってぃことも出来るんだよね!」
佐久間「そのダジャレは高度なのかわかりにくいのか・・・。」
山田「アリエッティ?」
2015年08月13日 15:18
>アッキーさん
ついにオネの本気モード。最早、人間の姿を留めてはおらず、まさに炎の化け物。ついにアウトマの王道具『表裏皆無(クライ・クライン)』はオネに全容を見破られた上に崩壊。しかし、アウトマはあくまで前座に過ぎなかったのか?ついに竜の登場です。かつて、梅花さんと戦いを繰り広げた竜達も元は人間が作った存在。マチネの技術の粋の結集が、ついに魔物を生み出すまでに至りました。
さて、ようやくアウトマは真実の一端に辿り付きました。普通なら魔法使いの言うことだと一蹴するところですが、オネの説明には妙な説得力があった。アウトマは技術部として魔法使いを深く研究する中で、魔法使いも人間の一形態に過ぎないことを理解しました。その下地がなければオネの言葉を信じなかったでしょう。アウトマはオネと対峙して、相手が魔法使いでも、人間でもない、化け物であることを嫌というほど見せつけられたか。
マチネの最終兵器であるジェゼナ・グルードラゴンの正体はジェゼナなのか、それとも『侵食統一(ジェゼナ・グルード)』が変化したものなのか。アウトマのセリフはどちらとも取れますね。とにかく、魔法使いが相手だったらマチネは勝っていたでしょう。しかし、相手はオネという人智を越えた化け物であり、魔法の根源である精霊の化身。『Engagement ring』でも封印を解くことは禁忌だったけれども、それを知らずに破壊し、とんでもないものを呼び込んでしまいました。
さて、『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』と『表裏皆無(クライ・クライン)』の能力がかぶっている件についてですが、流石に鋭いですね。『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』の本質は「しまう」こと。では、『表裏皆無(クライ・クライン)』の本質は?答えは後々の本編の中で明かされていくことでしょう。

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