英雄再来 第十七話 アウトマ5

人間はどこまで私を楽しませる気なのか。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

突然現れた巨大な竜に捕まって、オネは水面に叩き付けられた。

「ごへっ!げぼげぼっ!!」
オネは咳き込みながら水面を飛び出した。
「やってくれたな!アウトマあ!」

その時、オネは周囲が吐き気のする臭いで充満しているのに気が付いた。
(何だこりゃ?)
オネは口の中に入った水を吐き出しながら辺りを見回した。暗くて先の見えにくい、先程とは全く違う場所だった。

(アウトメめ、私を空間転送したな?…それが出来るなら最初からしておけばいいはずだが、発動条件が存在したのか?となるとあの戦いは時間稼ぎか?それと、あの竜は何だ?竜なんて魔物は全てハイジマバイカが殺したと聞いているが…。)

その時、オネは暗闇の向こうから何かが向かってくる気配を感じた。
『ギジャアアアアアアァァァァァアアアアア!!!』
不敗王竜ジェゼナ・グルードラゴンが闇に向かって雄叫びを上げていた。

「かかかっ!」
オネは片手に魔力を集め、同時に瞳を白くした。オネの瞳が周囲の状況を正確に把握する。

「…あ?」
魔法「真実の眼」によりオネは驚くべき真実を知った。水と思っていたものは、なんと全て石油であった。

(これ、全部が石油…?)
オネがいるこの場所は広大な空間だった。周囲には大きな錆びた歯車や機械の一部のようなものがあるが、それを越えた先もずっと空間は続いていてそこにも石油が満ちていた。
(おい…。何だこの量は…。これじゃ、火を点ければ…。)

オネは手に炎(ブラーゼ)を出そうとしていたが、それを止めた。

(私は炎の化身みたいなものだから、この石油全てが爆発しても生き残るだろうな…。炎を全て吸収するか、最悪深傷を負ったところで復活までの時間が少々長くがかかるだけだ。つまり、私は助かっても竜は死ぬ…。ここで私が火を放てば竜の丸焼きが出来てそれで試合終了?いや、竜は私の炎に耐えたから火には強いとは思うが、私の圧倒的有利な状況になるのは間違いない。
…それじゃあ、つまらんな…。いいだろう。何日かかるか分からんが、素手でお前を屠ろう。たまにはそんな泥臭い肉弾戦もアリだな…。)

オネは不敵に笑った。

「さあ、竜よ!ジェゼナ・グルードラゴンよ!私と死ぬまで戦おうじゃないか!」

『ギジャアアアアアアァァァァァアアアアア!!!』

闇から巨大な口が飛び出す。その奥には赤く燃えるような瞳が二つ。石油の海を踏み荒らすのは強靭な四つの足。太い足とその鋭い爪は岩でも鉄でも砕いてしまえそうだった。全身は鱗に覆われて金剛石のような輝きを放っていた。バサンバサンと音を立てているのは巨大な翼。竜の巨体を浮かび上がらせることが出来るだけあって大きさだけでも脅威であり、羽撃く風ですら凶器だった。










これより約二日間、オネはどこかも分からない謎の空間内で一睡もせずに竜と戦い続けることとなる。

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この記事へのコメント

2015年08月13日 17:13
毒沼か何かだと思ったら、石油だった!
相手が火属性と見て、石油のあるところに転送したのは、理屈では失敗だったけれども結果的には正解・・・?
もしもオネの気質まで見抜いて石油の海に転送したのなら、まさに手のひらで転がしているレベルになってきますが、だとしても転がしているのは危険な火の玉。

佐久間「2日?」
山田「ということは地上では、そろそろツヲの出番か。」
神邪「母さんのイメージがあるので、ドラゴンよりフェニックスの方が強そうに思えますが、みもふたもない決着を躊躇うのも、どこか似てますね。」
佐久間「まァ、オネが勝つのは確定事項なんだろうが・・・時間、か。時間稼ぎな。」
山田「転送を繰り返して、永遠に時間稼ぎをし続けるつもりか?」
佐久間「どうかな。それが出来れば、人類にとっては脅威が去り、オネにとっては永遠の闘争。それなりに収まるが・・・しかしツヲは収まらんだろう。」
八武「ツヲはアールが収めるだろう。」
佐久間「ふむ。」
維澄「オネとは違った説得の仕方になるけど、不可能ではないと見る。」
神邪「ところでツレエさんの出番は無いんですか?」
佐久間「それは禁句。」
神邪「そうなんですか。」
山田「フィベも今後は出番が危うそうだしな。」
佐久間「だから禁句だってば。」
2015年08月14日 10:57
>アッキーさん
突然に場面が変わって、どことも知れぬ場所に来てしまいました。本来、王道具『表裏皆無(クライ・クライン)』は自分自身は転送出来ても、他の生物は転送出来ません。この辺りも『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』と似ていますね。しかし、オネは精霊。そして、ジェゼナ・グルードラゴンは王道具『侵食統一(ジェゼナ・グルード)』から生まれたもの。ギリギリ転送可能なのか…?しかし、崩壊中だった『表裏皆無(クライ・クライン)』に転送能力が残っていたのか。そして、転送可能ならば何故アウトマは脱出しなかったのか。そして、この石油だらけの場所は、かつてジェゼナが見た悪夢の世界と同じ場所。これとの関連性は如何に。
ここからはオネと竜が激しい消耗戦を繰り広げ続けます。その間に外の世界でも時間が流れている訳で、そろそろツヲさん達が到着するかも。
時間を稼いでも既に崩壊しているマチネにとっては何の意味も持たない…。かと思いきやこのまま永遠に閉じ込めておくことが出来ればそれは封印したのと同じことになるかもしれません。しかし、オネが封印されたとなればツヲさんはどうするのか。地上にはアールが残っていますが、どうなるのか。
さて、次女のツレエですが、実は全く関係のないところで行動しています。既に復活していることは雷の国から帰るはずだったマチネ軍との連絡が途絶えているので暗に示されていますが、その後の音沙汰がないのは当分ツヲさん達の方に絡んでこないので書いてません。あまりいくつもの場面を混在させるとストーリーを追いにくくする気がするので、各所各所で終わらせてから次の視点に切り替えるようにしています。いずれ、どこかで絡むかも。四女のフィベですが、ペリドットと共に精霊界に還ったので一旦は終わり。でも、世界は繋がっているのでどこかで出てくる可能性は微粒子レベルで存在している、かも…。

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