英雄再来 第十八話 再会5

まずは殴り合いから始まる。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

姉との感動の再会もどこへやら、口論からついに殴り合いにまで発展したオネとツヲ。オネの腕は短いが瞬発力が尋常ではなく、ツヲの攻撃が当たる前にその拳が顔面を直撃した。瞬間、ツヲの顔は水に変わり、水滴が少々辺りに飛び散ったぐらいですぐに元に戻った。同時にツヲの拳がオネの腹部を直撃。しかし、オネの体が炎に変わりツヲの攻撃はオネの服に穴を開けるだけの結果となった。

「馬鹿が!」
オネはツヲの腕を破けた服に絡ませつつ、それを起点にしてツヲを床に叩き付けた。
「自分から捕まりに来るとは…。」

「受けたんだよ…。」
ところがツヲは床に叩き付けられると同時に、その反動を利用して逆にオネを床に叩き付けた。
「ワザとね!」
ツヲの腕の可動域は人間の限界を遥かに超えていて、無茶な体勢からでも反撃が可能だった。しかも服が絡まっているためにオネは交わせなかった。

「ボケがあ!」
ところがオネは叩き付けられたすぐ後に飛び上がるようにして起き上がり、服ごとツヲを振り回した。
「やるならもっと工夫しろぉ!」
そして、遠心力を加えながら壁際まで移動し、再度ツヲを叩き付けた。その際、床ではなく壁の側面に叩き付けることで重力加速も加えたためにツヲは壁の外面にめり込んだ。

「こんなふうにかい!?」
今度はツヲの反撃。外壁にめり込んだことをいいことに服を引っ張り返してオネを壁に叩き付けた。この瞬間、ビリリッという音と共にオネの服は完全に千切れた。オネが瓦礫の下から見つけ出したマチネ特務隊の丈夫な活動着が見るも無残であった。



「おい!お前ら…!」
飛鳥花が制止しようと壁際に近寄った時、フォウルが叫んだ。
「あ、今近付いたら…!」
「ん?」



「愚弟!今日こそ貴様の根性を叩き直してやろう!」
外壁にめり込んだまま、オネは巨大な炎(ブラーゼ)を放った。その炎は、同じく壁にめり込んでいるツヲに命中しただけでなく、火柱となって壁の一番上まで届いた。



飛鳥花がフォウルの方を振り返った瞬間、オネの炎(ブラーゼ)の余波が背後をかすめた。
「うお!あぶねえ!」



「オ姉さんに叩き直されるほど曲がっちゃいないよ!」
壁も溶けるぐらいの特大の炎(ブラーゼ)を受けて尚、ツヲは即座に反撃した。今度は壁にめり込んだオネに向かって高水圧の水(ワーテル)が襲い掛かる。それは激しい滝のようで、オネは剥がれた壁の一部ごと地面に叩き付けられた。

ツヲは壁から飛び出し、オネが落ちたところ目掛けて魔法を放つ。
「水大砲(ワーアノン)!!」
水の砲弾が飛び出し、爆発と共に下は水浸しになった。
「天に唾吐け!水神霊(ウンディーネ)!!」
そのままツヲは召喚した水神霊と共に自由落下し、更に追撃をかける。

「その程度かあ!噛み砕け!炎神霊(サラマンデル)!」
落下したオネの場所から大量の炎が逆三角形の形を描いて吹き出した。それは何か巨大な生物の口だけのようにツヲも水神霊(ウンディーネ)も呑み込んで辺りの空を赤く染めた。



オネの炎神霊(サラマンデル)の炎はまたしてもマチネの壁の上まで届いていた。
「うおっ…!…おいおい…これはやり過ぎだろう…。」
飛鳥花は目の前で起こる神霊使い同士の戦いに半ば呆然としていた。その横にフォウルがやって来て言った。
「ううん…。いつものこと。」

「いつものことって…。神霊まで使ってかよ…!」

「うん。周りが見えなくなるのも含めて、いつものこと。いつも何かのことで言い合って、決着が付かなかったら殴り合うの。オ姉ちゃんとツヲ兄ちゃんは精霊に近くて、精霊は死なないから…。」

「…。」
飛鳥花は気を付けながら壁の下を覗いた。既に戦いは地面での肉弾戦に変わっていた。
「…あたいと戦った時は本気じゃなかったのか…。」

「それは違うと思う。ツヲ兄ちゃんはいつも本気。でも、相手に合わせて、今じゃ癖のように自分の強さを抑えてしまうの。本当に全力で、全開で戦えるのはオ姉ちゃんが相手の時だけ。」

「なんでそんな癖が…?」

「もう、誰も傷付けたくないから。無くしたくないから、って…。」

「昔、何かあったのか…?」

「わたしも詳しくは知らない…。あまり話したがらないから…。」

「…。」
飛鳥花は再び、壁の下の地面に視線を移した。
(あたいはまだツヲの隣に並んでなかったのか…。)

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この記事へのコメント

2015年08月22日 21:57
火剣「殴り合いからほとんど殺し合いに見えるがいつものことか」
コング「激しい」
ゴリーレッド「何を考えている」
火剣「飛鳥花はどうした?」
コング「まだツヲの隣に並んでいなかった。微妙な乙女心。やはりツヲ博士のことが好きなのか。ぐひひひ。♪はーやーく来ーいー来ーいーアール」
ゴリーレッド「なぜアール?」
コング「愚問だ。勘の鋭い飛鳥花なら、アールを見て、同じ妹でもフォウルとは違うと気づく」
火剣「気づくか」
コング「ツヲ兄を巡り、バトル勃発。アールと飛鳥花の壮絶な死闘」
ゴリーレッド「そんなことはツヲ紳士がさせない」
コング「ツヲ博士がオネとのバトルに疲れて寝ていたら」
火剣「ゼロは死んでアールとして生まれ変わったのだから、ツヲ兄の妹でなくてもいいわけだ」
ゴリーレッド「妹は妹」
コング「飛鳥花との対決は避けられない」
ゴリーレッド「人の悲しみや不幸がそんなに楽しいか」
コング「人聞きの悪い。飛鳥花もアールも自分の気持ちに正直になるべきだ」
火剣「オネは何と思う?」



2015年08月22日 22:03
冒頭で吹いたwww
なるほど、フォウルの解説もあって、じゃれあいに見えてきました。その規模が巨大なだけで。

佐久間「なるほど、死根也と栞の予想が正しかったか。」
神邪「確かに、ちょっと深刻に考えすぎていましたね。」
山田「だが、傍迷惑なのは変わらないぞ。」
神邪「精神性の方ですよ。考えてみれば、僕も“人間”やめてしまったわけですし、“人間”に感情移入するのはおかしかったですね。」
山田「おかしくはないが。」
神邪「いえ、オネさんの言う“人間”と、広い意味での知的生物の定義とは、違うってことです。」
佐久間「そう、我々は人間である前に知的生物であらねばならん。“人間”であることに拘るのは、“日本人”であることに拘るナショナリズムと大差ない。長らく人間の肉体で暮らしていると、つい忘れるんだよな。」
維澄「そうしたスケールの大きさは、折に触れて思い返したいものだね。」
佐久間「それはさておき、何か前に見たことあると思ったら、『冷蔵庫物語』の、餅ボクシングだった。」
山田「ああ・・・もちストレート、もちアッパーか。見た目は派手だが、互いにノーダメージ。まさに今の状況そっくりだ。」
佐久間「よし・・・次はジャグルドーマだ。」
山田「煽るのはやめろ。」
佐久間「ダウナー状態だった昨日と違って、今はアッパーな気分なんだ。」
山田「アッパラパーな気分の間違いだろ!」
神邪「ほのぼの展開が続きますね。」
八武「だが重要なことは、再びオネちゃんの服が破れたということ。やはり服を破るのは良いものだ。ツヲは紳士だ!」
山田「このアッパラパーが・・・。」
2015年08月23日 22:20
>火剣獣三郎さん
人間ならば既に殺し合いの領域ですが、半精霊であるオネとツヲにとってはこれが日常(?)のひとコマ。人間で言えば激しい言い合いぐらいのレベル?近付けば巻き込まれること必至です。言葉も届かないし、とにかく今は、バトル終了まで遠巻きに見ているのが安全か。
バトルに突入した二人を見ていることしか出来ない飛鳥花は置いてけぼりを食らった気分。この微妙な乙女心をツヲ博士は理解してくれるのか。そして、オネとツヲの口論の発端となったアールの存在も小さくはありませんね。いずれアールと飛鳥花が出会うのは確実。その時に飛鳥花はどんな反応を示すのか。その時の反応次第では嫉妬からの取り合いバトルに発展する可能性も大いにあるかも…。まあ、ツヲさんがいい感じに止めてくれるでしょう(丸投げ)。頑張れツヲさん。しかし、妹ではなくなったアールは恋愛的な意味でも強敵か…?アールがツヲさんに抱いているのは兄への尊敬の念が強そうなので、恋愛的には飛鳥花が一歩リードしていると思われます。でも、飛鳥花もまだまだ照れで素直になれない部分もあるので果たしてどうなることやら…。
オネは弟が誰と付き合おうと構わないと思われます。半精霊であるので人間の倫理観とか、近親相姦のタブーとかを破っても気にしないので。
2015年08月23日 22:22
>アッキーさん
殴り合いはご挨拶、とでも言わんばかりのバトル展開。人間なら死闘のレベルですが、半精霊であるオネとツヲにとっては日常のひとコマに過ぎないようです。大分と迷惑極まりないことには変わりありませんが。
人間の凄いところは、自分達と種族も違うし言葉も通じない相手との意思疎通を試みることが出来ることかもしれません。犬や猫の鳴き声を解析して意味を調べたり、イルカやゴリラに「言葉」を覚えさせて対話を試みたり。もし、言葉が通じれば相手が生物学的な人間でなくとも友好関係を結べるかもしれません。人と精霊が手を取り合い、魔法使いとそうでない者が同じテーブルを囲んで笑い合える世界の実現も可能性としては存在していました。これから先の未来においてそういう世界になるかどうかは今現在の事柄が大きく関わってくることは間違いないでしょう。
さて、オネもツヲも実の話、人間として生まれた体の大部分を失っていて、魔力と炎、水でそれぞれが代用しています。見た目は普通の人間の体ですが、魔力を開放し始めると崩れるし、魔力の篭っていない銃や剣なんかはすり抜けます。あまり多用はしませんが、自分から体を崩してダメージ分散や攻撃を素通りさせるなどという芸当も出来ます。このまま激化すればジャグルドーマも出てきかねない。それでも二人ならじゃれあいの範疇か…?一応これもほのぼの回にカウントしてもいいのかな?結局、オネの服は破けるし、ツヲの服は多分もう炎神霊で燃えてケシ炭になってるはず。困った…。このままでは魔法使い=露○狂という間違った方程式が出来かねない…。

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