英雄再来 第十八話 再会6

姉弟喧嘩の結末。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「かかかっ!どうした愚弟!動きが鈍いぞ!」
マチネの巨大防壁の外に広がる平原をオネは身軽に動きながら次々と炎(ブラーゼ)を放つ。

「気のせいだよ!オ姉さん!」
ツヲは紙一重で炎(ブラーゼ)を交わしながら、間隙を狙って高水圧の水(ワーテル)を放つ。しかし、オネもまた絶え間なく動き回り、水(ワーテル)を交わしていく。辺りは火柱が何本も立ち上がり、その一方で池が次々と誕生していた。

「『真実の眼』を使えばいいものを!未だに水分把握で代用しようとしてるから私のような水気をかき消す相手に弱いんだ!」

「魔法には使いどころがあるのさ!」

オネの目がギロリと光った。
「抜かせ…!視力を失ったのと引き換えに『真実の眼』の常時発動が出来るようになったのに気が付かないとでも思ったか…?」

「…。」

炎に紛れてのオネの飛び膝蹴りをツヲはギリギリで交わした。

「ゼロは過去を振り切って先に進んだぞ…。今度はお前の番だろう…!?」

「…なんのことやら…!水剣(ワーオルド)!!」
閃光一閃。ツヲの手に水剣が出現して空を斬り裂く。その鋭い水の勢いで地面に大きな断裂が入った。オネは間一髪で交わしていた。

「かかかっ!少しずつ、らしくなってきたじゃないか…!」
(ツヲ…、この戦いでお前の心に火を点ける…。振り切れ…!爆発しろ…!人間には過去の出来事を持ち続けることで強くなる者と、過去の出来事を引きずって弱くなる者がいる。どちらも人間の性質だが、お前が受け継いだのは満場一致で後者だ。確かに強さと引き換えに失ったものは多いよなあ、ツヲ…。だが、失ったからこそ得たものもある…。『真実の眼』の常時発動もその一つだ…。恐れずに使え、ツヲ。大切なものと引き換えにしたからこそ使わなければならんだろうが…!)

オネは自分の手に炎を集めた。
「炎剣(ブラオルド)!」
炎は形を変えて長剣となる。オネのひと振りで熱風と共に炎の刃が発生し、大地を焼いた。










その時だった。空から多数の溶解液の塊が降り注いだ。
「おっと!」
オネもツヲも急なことではあったが即座に対応し、安全地帯を割り出して交わしていく。
「うおっと!」

だが降ってきたのは毒の塊だけではない。何体もの毒精霊(ゲブロボミス)、更には三つ首の毒精霊(ゲブロボミス)に乗って飛鳥花までもが乱入してきた。

「てめえら!いい加減にしろ!人のことほっといて暴れ回りやがって!」

「と、飛鳥花ちゃん!?どうしてこんなところに!?あ、危ないって!」

「あー、そうだな!確かにこの戦いを見てりゃ分かるぜ。あたいはまだまだツヲの横に立ってはいない。だがな!守られっぱなしっていうのは性に合わねえ!あたいはもっと強くなる!強くなってそこの姉貴共々、お前をぶっ倒して今度こそ認めさせてやるよ!毒姫の毒が水も溶かす、世界で一番強力な毒薬だってことをなぁ!」

この事態を想定していなかったのかオネは反撃もせずにポカンとしていた。だが、少ししてケタケタと笑い出した。
「かかかっ!流石は愚弟が連れてきただけのことはある!度胸満点、相思相愛ときたか。なあ、フォウル…。」

「オ姉ちゃん…!飛鳥花には絶対、手を出さないでね…!」
飛鳥花の乗った毒精霊(ゲブロボミス)の後ろから、三体の土神霊(グノメ)を引き連れたフォウルが顔を出した。その眼は軽く血走っていた。

(フォウルの奴、いつの間に来てたんだ…?)
飛鳥花は自分だけが飛び出したと思っていたので少し驚いていた。フォウルをよく見ると足が震えていた。

「飛鳥花、無茶し過ぎ…。」
フォウルは飛鳥花の方を見て、小声で言った。
「オ姉ちゃんの全力はこんなもんじゃないよ…。」

「…分かってるぜ。今でも何でか冷や汗が止まんねえんだよ…。だが、ムカついたから黙ってられなかった。」





「かかかっ。今日は手を出さん。」
オネは両手を軽く上げてフォウルに戦意がないことを示した。
(人間は守るべき者がいる時に強くなる者と弱くなる者がいる。フォウルが受け継いだ人間の性質は前者だ。久しぶりに再会したはいいが、大勢の人間が死んだせいで腑抜けてしまったかと思ってしまった。が、いざという時にはすぐに反応するか。取り越し苦労だった。しかし、飛鳥花か…。時たま、こういう奴が出てくるから人間は面白いんだよなあ…。)

オネは戦闘時に見せる愉悦の笑みを浮かべていた。ただ、今日はもう戦う気がなくなったのも事実。オネはツヲに言葉を投げかけた。

「おい、愚弟。納得いかないならアールに話を聞くのはどうだ?」

「…そうだね。ゼロとは久々の再会にもなる訳だし、話をしたいと思ってたんだ。」

「決まりだな。んじゃあ、案内しよう。今はまだ小さな我が城へ…。」

オネがマチネの巨大防壁の方に歩き始めた時、飛鳥花が声をかけた。
「と、その前にだ。オネ、ツヲ、お前ら――――――!」

「ん?」
「え?」

「服を着ろ、服を!恥ずかしいだろうが!」

勇者は赤面した。

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この記事へのコメント

2015年08月24日 21:29
火剣「好きなタイプの女と聞かれ、ジャングルで敵と共に闘う女と言うと、たいがい女に受ける」
ゴリーレッド「ほう、れんそう」
火剣「ドラマ『流星ワゴン』でも夫婦仲が上手く行ってなくて、旦那には理由がわからなかった。ある時旦那は優しく『君はそばにいてくれるだけでいいんだよ』と言った」
コング「♪そばにいーてーくーれるーだーけでーいーいー」
ゴリーレッド「何歳だ?」
火剣「妻は喜ぶかと思ったらついにキレて、『それが嫌なのよ!』と爆発。つまりそれって『あたし無能?』と言いたくなるわけだ」
コング「女は難しいな」
火剣「だから密林で一方的に男に守られるお姫様じゃなく、共に闘う戦士になりてんだ」
ゴリーレッド「ましてや強い飛鳥花なら、なおさらそう思うだろう」
コング「オネとツヲ博士よりも、飛鳥花の裸のほうが喜ばれるだろう」
ゴリーレッド「何の話をしているんだ一人で?」
火剣「それにしてもオネは余裕だな。強過ぎる」
コング「いよいよ妹ゼロとの再会。いや、飛鳥花とアールの遭遇か、うひひひ、血で血を洗う準備を」
2015年08月24日 22:44
楽しそうな様相を呈してきましたね。
やはり黙ってはいなかった、飛鳥花とフォウル。この乱入を予期していなかったということは、ツヲとの間にも大きな力の差があるということですね。

佐久間「私は過去を強さに変えるタイプ。リスクやマイナスは起爆剤!」
山田「俺は強さにも弱さにもならない感じか。忘れてはいないんだが、過去は過去って感覚だな。」
八武「私は引きずると弱くなるタイプかねぃ。」
神邪「ドクターもですか?」
八武「傷ついた体を引きずると、傷が酷くなるばかりなのだよ。少なくとも、過去が強さになるタイプではないねぃ。」
維澄「私も過去が弱さになるタイプかな。切り捨てようと思っても、心の奥底にまでこびりついている。守りながらの戦いも向いてない。」
佐久間「守るべき者か・・。私は強くも弱くもならないな。」
山田「俺は・・・強くありたいが、弱くなってしまうかもしれん。」
八武「強くありたいと思う時点で、心が強くなっているのだよ。私は微妙だねぃ。」
神邪「僕もどうでしょう。誰かを守るときではなく、誰かの為に戦うときに、最大限の力を発揮できる・・・ちょっとズレてますかね?」
八武「本質は同じかもしれない。それはさておき、赤面する飛鳥花ちゃんイイね!」
佐久間「おれたっちゃ裸がユニフォーム!」
山田「アパッチ野球軍かっ。」
2015年08月25日 23:18
>火剣獣三郎さん
かつてセーラームーンが記録的な大ヒットをしましたが、あの頃は戦うのは男と決まっていた時に、女の子達が華麗に戦いの中心で輝いていたのが多くの女の子達に受けたのかもしれません。守られるだけの女にはなりたくないという気持ちがたくさんの女の子の中にあったのかも。
生物学的な身体能力で言えば男女に差がある訳ですが、相手と対等でありたいというのは普遍的な感情であり、夫婦は両性の合意で結婚する訳なので余計に対等でいたい気持ちが強いと思われます。対等であれば共働きであれ、家庭と仕事であれ、同じだけ働いているという感覚で良好な関係が築けるのかもしれません。
守られるだけでは、ひょっとするとただの煌びやかな偶像に過ぎないのかもしれない。女性を守りたいというのが男性の一般的な理想ならば、自分自身が行動することで相手の助けになりたいというのが女性の一般的な理想の一つなのかもしれません。女は家庭、男は仕事の時代でも、二人が対等な関係ならば妻は家事をしっかりするということで夫の仕事を支えているという誇りを持っていたのではないかと思います。これが、対等な関係でないなら話は違ってくるかと思いますが。
結局、オネとツヲの戦いは有耶無耶になりました。そして、いよいよアールとの遭遇。またしても血で血を洗うような戦いになってしまうのか。それともツヲ博士が上手く間を取り持ってくれるのか。
2015年08月25日 23:19
>アッキーさん
どこかに注意書きで、この家族はとても仲良しです、とでも書いとかないといけませんね。もしくは仲がいい間柄だからそこ全力でぶつかれるし、言いたいことも言えるのかもしれません。
目の前での激闘に怯む飛鳥花ではありませんでした。ツヲさんの隣に並ぶためなら例え火の中、水の中。もう、ぞっこんラブ。

オネ「まだまだ愚弟は私を越えられんよ。かかかっ。」
白龍「とか言いながら、越えて欲しいと思ってません?」
オネ「過去のトラウマは乗り越えて欲しいところだ。何せ私の弟だからな。」
白龍「さて、今回のテーマは二元論ですかね?」
オネ「まあ、何事にも例外はつきものだが、○○だと強くなるか弱くなるかというのは私の関心事の一つではあるな。」
白龍「誰かの為に戦う時、人はいつも以上の力を発揮すると思いますが、弱くなったりはしますかね?」
オネ「ん~。戦う理由が「自分の為」の時に強くなる者と、「誰かの為」の時に強くなる者がいる、というふうに考えてみればどうだ?」
白龍「なるほど。」
オネ「さて、そろそろ着替えるか。」
白龍「そういうところは人間の感覚なんですね。」
オネ「そこまでこだわらんが戦闘用の服というのには興味がある。動きやすさをとるか、丈夫さをとるか。さっき着てたのは、その二つを両立させるような中々いい服だったんだがあっと言う間に愚弟が破きおったわ。かかかっ。」

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