英雄再来 第十六話 アール1

よろしい、ならば戦闘開始だ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

まず動いたのはアールが召喚した精霊達だった。その中でも先陣を切ったのは女性の姿をした水精霊(アクアリウス)。水の体を武器に変えたり、そのまま包んで溺死させたりする攻撃が一般的な精霊である。

「かかかっ!炎(ブラーゼ)!」
オネは一足飛びで水精霊を迎え撃ち、頭を掴んで炎の魔法を叩き込んだ。ゴボンっという音と共に水精霊は一気に水蒸気になって霧散した。

しかし、消されはしたが水精霊は囮だった。オネの左右から炎精霊(アフレエテ)と土精霊(グノメ)が同時攻撃を仕掛ける準備が整っていた。蜥蜴の姿の炎精霊がオネの足に噛み付いて動きを封じ、豪腕の土精霊が両手を合わせた大きな拳を叩き込む。

「炎(ブラーゼ)!!」
だが、オネの火力は半端ではなかった。その火力ゆえに、土で出来た土精霊すら溶けて朽ちた。炎に強いはずの炎精霊もオネの炎に呑み込まれて振り払われた。

間髪入れずに雷精霊(デンリュウ)と風精霊(シルフィール)の遠距離攻撃が飛んで来た。激しい電撃と鋭い風の刃がオネに迫る。
「炎(ブラーゼ)!!!」
オネの放つ巨大な炎の前に電撃も風の刃もかき消された。雷精霊と風精霊が追撃の魔法でその炎を相殺した時にはオネの両腕が二体を捉えていた。
「炎(ブラーゼ)!!!!」
右手で一発、左手で一発。撃ち出された炎によって雷精霊も風精霊も焼き尽くされて消滅した。

その時、炎で振り払われはしたが、何とか消えずに残っていた炎精霊がオネの背後から襲い掛かる。オネは振り向きもせずに右手だけ後ろに向けて、炎精霊を握り潰した。

精霊達を蹴散らしたオネの関心は既に目の前に迫る魔法攻撃に向けられていた。アールが巨大な魔法弾を放っていたのだ。
(大破動弾…!チュルーリの得意技で、継承したのはゼロだったなあ…。)
「炎(ブラーゼ)!!!!!」

巨大な魔力の塊に対してオネは巨大な炎で対抗した。その炎が大破動弾を打ち消すか、対消滅するかという瞬間だった。
「極大・破動弾!!!!!」
その両者共を呑み込む程の巨大な破動弾がオネに向かって飛んで来た。その大きさ故に回避は不可能だった。

「噛み砕け、炎神霊(サラマンデル)!」
オネの呪文で、地の底から炎が吹き出て巨大な炎の蜥蜴が出てきた。その炎神霊(サラマンデル)の大きさはソルディエルが対峙した炎精霊(アフレエテ)よりも更に大きかった。その巨大な口は極大・破動弾を噛み千切り、その巨大な体は極大・破動弾を押さえ込んだ。


瞬間、一筋の光が全てを貫いた。

「破動砲!!!!!」

アールの必殺技の破動砲が炸裂した。本来なら極大・破動弾を撃ったすぐ後に破動砲は撃てない。魔力を収束させるだけの時間が足りないのだ。しかし、アールには兄ツヲから学んだ追加詠唱があった。精霊達が戦って時間を稼いでいる間に極大・破動弾を放ち、その裏で必殺の破動砲を撃つ準備を整えていたのだ。

破動砲の威力はデタラメなほど強力だった。炎神霊(サラマンデル)を消し飛ばして、そのままオネに命中した。
「ぬおおおおお!!!!」

既にオネによって大半が焦土になってしまったマチネだが周囲の強固な壁は未だに健在である。オネに当たった破動砲は、そのまま遥か後方のマチネの壁を砕き、撃ち貫いた。対ペリドット戦では上空に向けて放ったので地上への被害は少なかったが、古代魔法銃デスチル・ジュールの一撃と相殺するほどの威力を秘めていることが実証されている。


その破動砲を受け、マチネの外まで吹き飛ばされて尚、破動砲の威力は続く。しかし、オネもやられっぱなしではなかった。
「ぬるいわああああああああ!!!!」
戦いによってオネの力はどんどん解放されてゆく。ついには体の全てが白熱し、さながら人型の溶岩のようだった。オネの周囲には粘土のように変化する高密度の炎が生まれ、それらが破動砲を少しずつ削り落とし、打ち砕き、かき消していく。そして、オネは極めつけの呪文を唱えた。

「灼熱の炎よ!闇の爆炎よ!精霊すら喰らう真の炎よ!その姿をもって、眼前の敵を破壊せよ!炎大神霊(ジャグルドーマ)!!」

オネが召喚したのは余りにも大き過ぎる炎の怪物だった。それはオネの持つ熱と魔力をかっ喰らって生まれた炎のお化けだった。ダイダラボッチという存在がいるのならちょうどこのような大きさだったのかもしれない。炎大神霊(ジャグルドーマ)の召喚、それは精霊召喚が奥義や禁術と呼ばれている最大の理由を見る者に理解させるのに十分だった。精霊召喚を極めれば国一つ滅ぼすことの出来る怪物を呼べるのだから。炎大神霊(ジャグルドーマ)の巨大な炎の両腕は、破動砲を握り潰し、その巨体ごと倒れ込んで押し潰し、破動砲を消し潰した。

「さあ、今度はこっちの番だあ!やれえ、炎大神霊(ジャグルドーマ)!!!」
炎大神霊(ジャグルドーマ)に熱を与えたことにより白熱化が収まったオネだが、戦闘への興奮は更に高まっていた。炎大神霊(ジャグルドーマ)はオネの言葉を聞いて、ゆっくりと起き上がると両手を自分の前に持ってきた。まるでそこに球体でもあるかのように手を添えると、その両手の中に熱く光る光の球が現れた。

『フッ!!』

炎大神霊(ジャグルドーマ)が光の球を吹いた瞬間、炎の大津波が飛び出した。荒れ狂う炎がマチネという国すらも呑み込みかねない大炎となって向かってきた。

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この記事へのコメント

2015年08月03日 22:02
火剣「エクスたちも魔法使いと変わらないと思ったが、やはり魔法使い同士の戦いは違うな」
コング「オネは余裕の笑顔だ」
ゴリーレッド「アールは必死。まさに命懸けだ」
コング「ミスター勘違いのツヲ兄と特訓した技が今こそ役に立つか」
火剣「ツヲ兄も罪悪感があるから真剣に教えたか」
コング「近親は良くない」
ゴリーレッド「ダイダラボッチ?」
コング「それも狂った時のダイダラボッチのイメージか」
火剣「触れたら死ぬ巨大炎」
ゴリーレッド「水と火では、水が強いとは限らないか。大水と巨大炎の対決」
コング「アールの技は水だけじゃないか」
火剣「負けたら全てを失う戦いは緊張するだろう」
コング「全てを失う?」
ゴリーレッド「喋るな」

2015年08月03日 23:00
えええええ、炎の大神霊が!?
ついにオネ様が本気!! 今までは何だかんだで人間同士の戦争という感じでしたが、ここからはスケールが違いますね。

佐久間「そうか、オネは肉体そのものを失っていたんだったな。それでもダメージを受けないわけではないから、同じことだが。」
山田「ああ、しかし・・」
佐久間「そう。絶望的なのは変わらない。流石オネ、やっぱりオネ、100人乗っても大丈夫!」
山田「イナバかっ!」
佐久間「実際100人がかりでも倒せないだろう。」
山田「ゼロも健闘してるんだが、オネの強さはまさに桁違い。どうすればいい?」
八武「とりあえず私は、撮影係。」
山田「じゃあ俺は、死根也を殴る係。」
維澄「大神霊というからには、アルドンパカやチュルーリと同等ということかな。」
神邪「まさしく、ミニサイズの恒星ですね。」
佐久間「ワクワクしてくるぜ! やっぱ圧倒的な破壊力は、見てて気持ちイイな!」
山田「危険人物・・。」
2015年08月04日 13:52
>火剣獣三郎さん
本来は大魔法使い同士でもここまでの戦いにはなりませんがアールとオネの戦いは最早、それ以上。エクスやソルディエルをも超える程に激しい魔法大戦。しかし、オネはまだ余裕な表情。この戦いにかける意気込みで言えばアールはオネに負けてはいませんが、今まで戦いを渇望し求め続けたオネとそうでないアールの差が出てきたか。しかし、アールにはミスター勘違い直伝の追加詠唱があります。これをうまく使いこなせれば、まだ勝機はあるかも。一方のオネにも炎大神霊(ジャグルドーマ)という隠し球が。どうにかしてこの大き過ぎる炎を消さないとマチネが壁だけ残して国全てが焼失という事態になりかねない。どうにか大量の水を呼びたいところですが、アールは水の専門家ではないのでオネに対抗出来るだけの水は出せるのか。絶対に負けられない戦い、アールの次なる一手は?
2015年08月04日 13:52
>アッキーさん
ついに登場、炎大神霊(ジャグルドーマ)。禁術とまで言われた精霊召喚の最上位を惜しげもなく使ってきました。光大神霊や闇大神霊の時と同じように全てを召喚しきっている訳ではないので、まだどうにかなるかも?いよいよ魔法使い同士による超絶バトル。恐らく大魔法使い同士でもここまでの戦いにはならないかもしれません。史上最悪の姉妹対決と言ってもいいかも。
オネはチュルーリとの戦いで体のほとんどを失いましたが魔力と炎がその代わりを果たしていて、一応見せかけだけですが血が出たりするし、痛みは感じます。でも…。百人の魔法使いの助っ人をアールに派遣出来れば…。うーん…。現在、孤軍奮闘中のアールですが…。
オネ自身が自らを太陽の子と称するだけあって炎魔法はお手の物。威力をコントロール出来る炎から炎大神霊まで何でもアリ。このままマチネは圧倒的な炎の前に全て消え去ってしまうのか。

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