英雄再来 第十六話 アール4

手の内の読み合いだな。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「かかかかかっ!そうでなくてはな!」
ブッ飛んだオネは即座に跳ね上がるように起き上がった。同時にオネの周囲に粘土のような炎が戻ってきた。先程は攻撃に周囲の炎を使い過ぎたために自分自身を守る炎がなくなってアールの肘打ちを受けてしまったが炎が戻ってきた今のオネに死角はなくなった。

臨戦態勢のオネに対して、アールはどこを見るでもなくフラフラしていた。その瞳は真っ白で、視線はどこを見るでもなくフワフワと漂っていた。

(…そうか、ゼロも魔法「真実の眼」を使いこなせるようになったか…。)

オネやアールの母親であるチュルーリはありとあらゆる魔法を習得していると言われるほど多彩な魔法使いでもあった。その中でも自分の視力を一時的に飛ばし、周囲全体を把握する「真実の眼」と呼ばれる魔法は利便性が高かった。白兵戦であれ砲撃戦であれ、周囲の状況を一気に把握して、敵の位置や何人いるのか、次にどんな攻撃を仕掛けてくるのかが分かるのだから、次に自分がどんな行動をすればいいのかが分かるのだ。

(今までは中途半端に発動したり、無意識で勝手に発動したりしていたが…。ん?今も半ば無意識なのか?じゃあ…。)

オネの瞳も真っ白になった。
「手の読み合いだな。」

オネの一手目は周囲の炎を使った遠隔攻撃だった。粘土のようにグニャグニャと動く炎が左右からアールに向かう。

(避けなきゃ…。)
アールがそう思った時に、既に体は動いていた。側面からの攻撃なので逃げるなら前か後ろ。しかし、前に行けばオネに接近することになる。近接戦では勝ち目がないのでアールは無意識に後ろへと飛んでいた。

(当然の選択だな。)
オネは片手に魔力を収束させた。
「炎(ブラーゼ)。」
それは先程の広範囲に広がる炎と違って弾丸のように撃ち出された。攻撃範囲は小さくなったが当たれば爆発し、身を焼かれる炎の弾丸。力押しで魔力量だけ適当に調整して放っていた先程の炎とは違う、技術の入った攻撃だった。

「水精霊(アクアリスス)…。」
アールはオネの狙っている攻撃場所を予測すると共にそこに水精霊を呼び出して攻撃を弾いた。周りの空気は乾燥していて水を集めるのが厳しかったが、水精霊(アクアリウス)を小さく召喚し、斜めに構えて防ぐではなく弾くことでオネの攻撃の威力を横に逃がした。

瞬間、オネはアールに足払いを仕掛けていた。水精霊(アクアリウス)の召喚に時間を使わせたオネは一気にアールに接近出来た。

(あ…。)

アールは足払いを受けて盛大に転んだ。オネはすかさず地面に倒れたアールに向けて思いっきり拳を振り下ろした。

(避けなきゃ…。)
アールがそう思った時に、既に体は地面を転がってオネの攻撃を避けていた。オネの拳は地面に命中し、その爆風でアールは更に転がり安全圏まで脱出した。アールがいた地面には穴が空き、攻撃を受けていれば身体を貫通したかもしれなかった。

(なるほどな。足払いはわざと受けたのか。道理で感触が軽い訳だ。)
アールはオネの足払いを受けると同時にそれに逆らわず自分自身で倒れに行った。そのために受身を取って衝撃は分散したし、次の転がり回避にすぐに繋げることが出来たのだ。

一度オネの瞳は黒に戻った。
「八手先までは読んだか。じゃあ次は何手先まで読めるかな?かかかっ。」
オネの瞳が再び真っ白になった。

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この記事へのコメント

2015年08月06日 16:31
火剣「戦闘中に力の差を感じるのは辛い」
ゴリーレッド「ソルディエルという守るべき人がいるからどんなに辛くても降参はできない」
コング「後頭部エルボー。なるほどオネとツヲ兄のバトルの記憶か」
火剣「白い目同士」
ゴリーレッド「手の読み合い。プロレスから将棋か」
コング「プロレスのほうが好き」
火剣「わざと足払いに逆らわない手か」
ゴリーレッド「押されたら引く、引かれたら押すの合気道の原理か」
コング「オネの拳。よけなかったら貫通って、デスマッチか」
火剣「妹でも容赦はしないのがオネか。まさに命懸けの闘いだ」
コング「命乞いしたら許してあげようよ」
ゴリーレッド「ゼロからアールになった。もはやアールはオネの妹ではない。覚悟の戦士。命乞いなどしない」
コング「誇り高き正義のヒロインが命乞いする姿って」
ゴリーレッド「足払い!」
コング「何をする!」
2015年08月06日 23:02
なるほど、“真実の眼”で回避したわけですか。やおら頭脳戦になってきましたが、つまりオネにも隙が無くなってきたということ・・・?

佐久間「相手に合わせて戦う。この喜び。」
山田「何となくわかる気はする。」
八武「逆に言えば、ここでオネはパーッとやってしまうことも出来るのかね?」
佐久間「出来ると言えば出来るだろうけど、流石にオネといえどもチャージの時間を必要とするからな。」
山田「その間にアールも波動を溜められるわけだ。」
八武「なるほど。」
維澄「規模こそ小さくなったものの、一手でも読み違えば命が危ないか。」
神邪「まだ余裕ですね。服も着てないですし。」
佐久間「そこに注目するとは・・・やはり真実か・・・。」
山田「まあ、人間の体を失っているから、恥ずかしくはない・・・のか・・・?」
神邪「人間じゃないから恥ずかしくないもんっ、てやつですね。」
八武「むしろアールは人間だから、服が燃えていくほど萌える!」
維澄「何故こんな話に。」
神邪「すいません。」
佐久間「“真実の眼”の錬度はオネが勝るだろうが、時として無意識の集中力は爆発的だ。この勝負、濡れるぞ。」
山田「荒れるだ。」
2015年08月07日 09:58
>火剣獣三郎さん
生き物は生存本能から、戦いの中で敵わないと分かると逃げ出すという選択肢があります。逃げることで自分の命だけは守ろうとする。しかし、この戦いは逃げる訳にはいきません。守るべき人を守るために始めた戦いに逃走は有り得ない。
ここでアールの真面目な性格が実を結びました。かつて強くなるという目標を持って兄姉の戦いを観察していたことがここで役に立つ。また、戦いの中で白い眼の魔法が開眼。先の先や後の先を取り合うような戦いにシフトしました。合気道の原理は色々なところで応用出来そうな気がしますね。力押しだけでは難しい場合、敢えて相手に合わせて動くのもあり。
相変わらずのオネの攻撃力の高さ。アールも妹であることを捨て、オネも相手を妹ゼロではなく特務隊アールと見なしている状況。命乞いは許されない、まさしく命懸けの戦いです。
2015年08月07日 09:59
>アッキーさん
ド派手は魔法戦から一転し、相手の間合いや先か後かを奪い合う頭脳戦に。大雑把な攻撃ばかりしていたオネですが、やろうと思えばこういう精密な攻撃も出来ます。こうなると隙も少なくなりますね。オネの場合、実は戦えば戦うだけ自分の中に炎と魔力が溜まっていくのです。以前に準備運動がどうとか言ってたのは、それのこと。今現在は炎大神霊召喚に大量の熱と魔力を消費した状態ですが、いずれ…。
今現在は省エネモードといった感じのオネですが、通常攻撃が一撃必殺級であるのに変わりがないというデタラメな強さ。体が白熱すれば服はすぐに焼けてしまうので着直してはいません。人間の感覚が薄いので着るものにそこまでこだわりはなさそう。別に着ないという訳ではないのですが…。何だか魔法使い=裸という公式が出来上がり始めているのか?
魔法「真実の眼」対決はどちらが制するのか。熟練のオネか、無意識のアールか。試合の行方が荒れてきたか。

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