英雄再来 第十八話 再会10

それが彼女の照れ隠し。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ほんの少しだけ時間を遡る。



兄ツヲ、姉フォウルと妹のアールの感動の再会も、ツヲの失言からの姉オネの介入で半ば強制終了してしまった。ただオネがツヲの首根っこを掴んで引っ張っていくが、そこに流れる空気は温かかった。フォウルもアールもクスクスと笑ったり、微笑んだりしていた。死闘ではなく、家族のじゃれあい。そこにトゲトゲした雰囲気はなかった。


その間、飛鳥花はオネからもらった美味い肉に夢中だった。
(この肉、マジで旨え…。)

最初こそツヲ達の再会を邪魔しないようにと考えていた飛鳥花だが、当然ツヲ達の方を見ていた。しかし、気が付けば肉を食うことに夢中で、食べ終わって一息ついた時にはツヲはもうオネに連れ去られた後だった。

(しまった…。)
遠くの方に引きずられていくツヲを追いかけようにも、今動くのはどうにも機会を逸していて格好悪いような気がした。それに何かの肉を食べて腹が膨れたこともあってか、気持ちが穏やかになっていて追いかける気になれなかった。
(…まあいいか…。あいつはツヲの姉貴な訳だから、積もる話もあるだろう…。)


引きずられる遠くのツヲを見つめながら、そんなことを考えていた飛鳥花のところにアールが近付いてきた。

「あ、あの!」

「ん…?」

「初めまして、ワタシはアールと言いま――――――!」
飛鳥花に近付いた瞬間、アールは地面にあった石につまずいた。
「あ、きゃあああああ!!」

「お、おい!大丈夫かよ…。」
飛鳥花は盛大にこけたアールに手を差し出す。
「あ、ありがとうございます…。」
アールは照れ笑いをしながら、飛鳥花の手をつかみ立ち上がった。


その時、飛鳥花は何かに気が付いて手を振り払った。
「っ!!」

「ひゃわ!?」
アールは驚きのあまり変な声を出してしまった。
(ワ、ワタシ、何か失礼なことを――――――!?)

だが、驚いたアールよりも飛鳥花の方が青ざめて鬼気迫る表情だった。
「溶けてないか!?お前!手、溶けてないよな!」

「え…!?」
アールは自分の手を見たが特に何もなっていなかった。
「え、ええ…。と、溶けてません、溶けません…。」
アールは自分の手のひらを開いて飛鳥花に見せた。

「…そうか、よかった。」
飛鳥花は安堵の溜息を吐いた。その隣にフォウルがやってきた。

「飛鳥花、大丈夫。中和魔法の有効期限は今日の夜ぐらいまで続く。それに、さっき毒精霊(ゲブロボミス)を召喚したから魔力が放出されて、しばらくは自動魔法発動はない。」

「ああ、そうだな…。えっと、アール、だっけ?悪りいな。急に振り払ったりして…。」
飛鳥花はバツが悪そうに頭を掻いた。
「あ。い、いえ…!とんでもないです!」
アールは首と手のひらを横に振ってそれを否定した。


「アール、紹介する。わたしの友達の飛鳥花。」
フォウルは目線で飛鳥花を指し示した。
「毒魔法が得意で、色々無意識に溶かすこともあるけど、凄く良い人。」
次にフォウルの目線はアールを指し示した。
「それから飛鳥花、紹介する。妹のアール。少しドジなところもあるけど、凄く真面目で良い子。」

「あ、改めまして飛鳥花義理姉様(とぶとりかねえさま)。ワタシはアールと申します。」
フォウルの紹介に合わせてアールは深々とお辞儀をした。

「ああ、よろしくな。…って、姉様!?」

「あ、はい。飛鳥花義理姉様はツヲ兄様の婚約者ではないのですか…?」

「ほぼ正解。」
驚き、顔を赤くする飛鳥花に代わってフォウルが、少々困惑した表情を浮かべるアールに勝手に返事をした。

「フォ、フォウル!」

「飛鳥花、素直になろう?ツヲ兄ちゃんは後ひと押しで落ちる。そうしたら、二人は恋人未満から恋人同士になる。」

「か!…か、簡単に素直になれたら苦労しねーよ…。」
飛鳥花は頭から湯気を出しながらそっぽを向いた。

「はわわ…。友達以上の恋人未満で現在進行形だったのですか…!ごめんなさい、早とちりしてしまいました…。」

慌てて謝るアールに対し、フォウルは首を横に振った。

「アール、もっと恋人だとか言ってやって。たくさんの後押しがないと飛鳥花が大人の階段を登れない。」

「お、大人の階段…!口付けを交わすとか、でしょうか…!?」

「な、なんで知ってんだ!?」
飛鳥花は瞬間的にツヲと口付けを交わしたことを思い出し、頭が沸騰した。

「や、やっぱりそうなのですか!流石は飛鳥花義理姉様!ご、ご結婚おめでとうございます!!」
アールも顔を真っ赤にして訳の分からないことを口走る。
「け、結婚式を挙げるための巨大な教会の建造を今日から着工いたします!」

「ば、ばっきゃろー!」

ついに飛鳥花の羞恥心が臨界点を超えた。恥ずかしさから精神を守るために飛鳥花の魔力が暴走を引き起こす!



そして、辺り一帯は溶解液まみれとなってしまった…。

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この記事へのコメント

2015年09月05日 21:29
これまでのシリアスが嘘のように、ラブ、もといハートフルコメディ展開!

佐久間「忘れそうになっていたが、トリカブトはそういう力を持っていたな。」
山田「飛鳥花だ。」
八武「大人の階段? おぢさんが教えてあげよう。この下卑た快感は何だろう!」
山田「冥府へ消えろ。ゴーズカイエン!」
八武「ぎゃあああ!?」
維澄「何だか逆に照れ臭いね。」
神邪「僕たちは過激さを求めすぎて、大切なことを見失っていたのかもしれない。」
佐久間「そうでもない。」
神邪「ところで何かの肉って、何なのでしょうね?」
八武「人肉?」
佐久間「ドラゴンかも。」
維澄「あんまり美味しそうなイメージは無いけどね。」
八武「溶解液まみれか・・・ぬるぬるプレイというわけだ、わかる、わかるぞ!」
山田「まだ冥府が恋しいのか?」
佐久間「冥府の階段下りる♪君は八武、死・根・也さ♪」
維澄「私は佐久間とのキマシタワーを建設しようかな。」
佐久間「やめろ絶対やめろ。」
2015年09月06日 20:04
>アッキーさん
本来は人畜無害なアール、実は人間に期待したいフォウル、自分を閉じ込めた者達への復讐を終えた飛鳥花。ここにいる三人は率先して戦ったり争ったりする意思のない者達ばかり。ようやくシリアス展開からコメディ展開へ移行しました。こんな状態がいつまで続くかはさておき、シリアス展開の主な原因はバトルマニアのオネなのか?もしそうならオネがツヲさんを連れて行っている今が癒し回。
ツヲさんとは普通に手を繋げるようになった飛鳥花ですが、他の人間だと溶かしてしまうのではないかという恐怖が未だに癖のように染み付いています。ちなみに、チュルーリ一家のアールならば抵抗力もあるので、万が一溶解液に触れても握手ぐらいならばすぐに完治するでしょう。
飛鳥花の照れ具合やアールの暴走を見ていると、私自身が昔持っていた純粋な心を思い出すと共に、すっかり汚れた大人になったなあとシミジミします。昔のピュアな心を取り戻さなくては…。
このお肉は一体何の肉なんでしょうね~?近くにある巨大な丸焼き物体といい、一体何の肉なんでしょうね~。それはそうと、ドラゴンの肉は鶏肉的な味がするらしいですよ。地方(世界?)によっては高級食材なんですって。
さて、溶解液が撒き散らされて大変なことになってしまいましたが、きっとツヲさんが何とかしてくれる(丸投げ)。
2015年09月06日 20:23
火剣「そうか、まだ溶けるのか」
コング「アールとも打ち解けている」
ゴリーレッド「フォウルもアールと呼んでいるのか」
火剣「ギリネー?」
コング「待て、それじゃあバトルにならないではないか。何という欲と闘争心のないアール」
ゴリーレッド「闘争心はある。コングの思い通りにはいかない」
火剣「飛鳥花はシャイで純なのか。怒らせてもいけないが、恥ずかしい言葉を連発すると死人が出る」
コング「危ないヤツ」
ゴリーレッド「婚約者?」
火剣「アールは嫉妬心ないのか」
ゴリーレッド「無意識層はともかく、意識の中ではツヲ兄は兄でしかない」
コング「結婚式まで行ってしまったぞ」
火剣「まだツヲ兄の気持ちを聞いてねえ」
ゴリーレッド「シャイ純コンビか」
コング「そんなに純朴だと結婚してもアレができないな」
ゴリーレッド「それ以上喋ったら溶かす」
コング「待て」
2015年09月06日 20:54
>火剣獣三郎さん
飛鳥花はまだ自分の魔力のコントロールが完全ではないので油断すると溶かしちゃいます。一応、毒精霊の中和魔法でどうにかなっていますが、かつて意図せず家族を溶かしてしまい、人との触れ合いを癖のように恐れている面がありますね。いずれは打ち解けていけるとは思いますし、既に打ち解け始めている様子。
オネとフォウルはアールの意志を尊重して生まれ変わった名前で呼んでいますが、ツヲさんは昔のゼロの名前で呼んでいますね。ツヲさんの場合は、生まれ変わっても自分の大切な妹であることは変わらないという意味を込めてゼロと呼び続けていると思われます。
さて、アールVS飛鳥花…となると思いきや、アールは速攻で飛鳥花をツヲの嫁として受け入れる決心を固めている様子。まあ、飛鳥花はツヲさんと手を繋ぎながらやってきた訳ですから、アールも勘違いしてしまいました。そんなやり取りの中で飛鳥花の羞恥心が爆発。牢屋に閉じ込められていた分だけ世間を知らないので、ある意味純粋に育ちました。
無意識にはともかく、意識としては兄と妹。アールは人間の倫理観で生きているので結婚とかは出来ないと考えています。もちろん大好きですが、それはあくまで兄妹の範疇という感じ。
ツヲさんは飛鳥花との結婚となれば即決でOKを言うでしょうね。結婚したらツヲさんは大胆になるのか。それとも、飛鳥花の羞恥心が邪魔して夜も溶解液祭りになってしまうのか、それは結婚しないことには分かりませんが。

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