英雄再来 第十九話 新しい国2

毒と薬は紙一重。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「うん、いい答えだ。」
ツヲは微笑んだ。
「僕も同じ気持ちだよ、ゼロ。あの時、途中になってしまった理想の世界を作るための第一歩としての理想の国作り、もう一度始めよう。」
その言葉を聞いてアールの表情がパッと明るくなった。
「…はい!」



「で、飛鳥花ちゃんはどう思う?」
ツヲは突如くるりと向きを変え、飛鳥花に話を振った。

「あ、あたいか?」
飛鳥花は自分で自分を指差しながら聞き返す。
「うん。」
ツヲは微笑んで頷いた。


急に話を振られて少しドギマギしながらも、飛鳥花は自分の思ったことを言葉にした。
「ま…悪くねえんじゃねえか?あたいを閉じ込めていた連中は皆殺しにしたし、攻め込んできたマチネの連中も殺した。そして、今じゃマチネそのものも滅んだ。これ以上、戦う気はないし、戦う相手もいない。これ以上戦った、そいつはやり過ぎになっちまう。今は、これからどう生きるかを考える時だろうな。食べもん獲ってきたり、家とか作ったりしなきゃいけねえ。だから国作り、いいじゃねえか?ここをあたいらの住みやすいところにしようぜ。」
飛鳥花は心なしかワクワクしていた。今まで閉じ込められていたために自分自身で何かをするということ自体が新鮮ということもあるし、人間は何かしらの目的が出来た時に生き生きする傾向がある。また、ツヲと一緒に何かをするということも無意識の内に彼女のやる気を引き出しているのかもしれない。



「で、ゼロ?アール?えっとどっちで呼べばいいんだっけ?」

「あ、じゃ、じゃあアールでお願いします。」

「アール、そろそろ服、着よう。」

「は、はわわ…。」
飛鳥花に言われてアールは顔を赤くしながら慌ててサラシに巻かれた胸と穴の空いたお腹を服の中にしまった。



「しかし、あたいの毒魔法は国作りに向いてるのか?」
飛鳥花が腕組みして呟いたのをツヲは聞き逃さず、すぐに言葉を返した。

「そこは魔法の使いようさ。畑の栄養源である腐葉土を作ったり、不要なものを溶かしたり。毒魔法でも色々出来ることはあるよ。特に国作りなんて大きなことをするためには単純な物を運ぶ作業とかも大掛かりになる。毒精霊(ゲブロボミス)達の出番もたくさんあると思うよ。」

「そ、そうか…。」

飛鳥花の、自分も役に立てるという喜びに満ちた声を聞いて、ツヲは優しく微笑んだ。

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この記事へのコメント

2015年10月13日 23:31
国作りといっても、まずは自分たちの住処を造るところからでしたね。危惧しているようなことが問題になってくるのは、だいぶ先のことかも・・・?
むしろ考えるべきは、ソルディエルの存在か。

佐久間「まったく、誰だろうな。物体を腐らせる能力なんて完成させる意味が無いと言った奴は。」
山田「真黒さんを責めないであげて。」
維澄「人を育てるには、良質な栄養と、良質な毒が必要だと、昔から言われている。」
佐久間「名言だな。」
八武「毒なしでは生きていけないのだよ。」
2015年10月14日 22:07
>アッキーさん
理想の世界の第一歩として国作りがあるのなら、理想の国作りの第一歩としては理想の住処を作ることがあると思われます。人の数も大分と減ったので、再び人が集まるまでは大丈夫かもしれません。しかし、考えておかなければいけない問題ではあります。特に、記憶が新しい内の方が感覚も鋭くなっているので。鉄は熱いうちに打て、というやつですね。そして、共存ということを考えれば、外せないのはソルディエルの存在。今後、彼女の存在がどう影響してくるのか。
どんな能力でも活用方法は必ずある。遊戯王カードでも、他のカードと組み合わせることで絶大な効果を発揮するカードもある訳ですし。それと発想も大切ですね。ツヲさんは常に女の子のマイナスの側面をプラスに変えようとする努力を惜しまない人なのです。
毒を食らえば当然死ぬ。しかし、危険ばかり避けていてばそれが自然なことなのかどうか。危険を避けるあまり不自然になったり、異常になったりしていないか。花粉症などはいい例かもしれません。毒を受け入れる覚悟があれば新しい地平も開けるかもしれない。時には適量な毒も薬と同じく必要なのかもしれませんね。

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