英雄再来 第十九話 新しい国7

姉の考え。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(さて、いよいよ次か…。)
ツヲは無意識に唾を飲み込んだ。
(確率は半々ってところだろうけれど…。)

「で。」
ツヲはクルリと振り向く。その向きの先には腕組みしているオネがいた。
「オ姉さんはどうなんだい?」










「ん?いいんじゃないか?かかかっ。」
随分あっさりとした返事が返ってきた。
「新しい国造り、結構じゃないか。正直、急ごしらえで家を作ったはいいが雨風を凌げる程度の最低限の防御力しか持っていない。お前達も来たことだし増築が必要だと思っていたところだ。肉は竜を狩ったからしばらくは持つが食うものがこればかりというのもどうかと思う。しばらくは近くの森に果実やらを採りにいくことになるだろうが畑や生簀なども作っておきたい。国の機能としては昔に作った国を参考にすればいい。中身に関してはアールを筆頭に好きに考えて好きにすればいいんじゃないか?」

「じゃ、じゃあ!奴隷(こくみん)は無しの方向で!」
アールは少しばかり緊張しながら言った。

「えー?」
オネは唇を尖らせた。

「オ姉さん。」
ツヲにたしなめられてオネはポツリと呟く。
「まあいいか…。」

(オ姉さんも少しは丸くなったかな…。)
ツヲはそう思って、心の中で安堵のため息を吐いた。

「何せ、引っ込み思案だったアールが自分からやりたいと言ったことだからな。好きにやるといいさ。で、アール、我々は何をすればいい?土木工事か?治水工事か?それとも戦闘訓練か?かかかっ。」

アールは即座に返答した。
「え、えっと!じゃあ、オ姉様は土地を整えていただいてもよろしいですか!?」
アールの瞳が白く変わる。真実の眼が発動し、広大な周囲の状況を把握しているのだ。

「あ、あそこからあそこまでが日当たりよさそうなので畑にしたいと思います。」

「ん、任せろ。邪魔な瓦礫は全て塵にして平らにしてやる。かかかっ。」
オネはアールが指差した方向へと歩き出した。


「オ姉さんは力仕事さえあればしばらくは大人しいだろうね。」
ツヲは歩いていくオネの気配を感じながら呟いた。
(弟妹想いなのも不器用なのも相変わらずそうでよかった…。)

「そうそう、ゼロ。僕達は何をしたらいい?」

「え、えっと…。では――――――。」
ツヲの呼びかけで、アールは再び真実の眼を使い周囲を見渡した。オネと自分自身の戦いによっても、大分とマチネのあちこちは壊れていたが、その中で一番壊滅的なのは中央に空いた大穴だった。
オネがアウトマと戦い、地下にあった領域王道具『表裏皆無(クライ・クライン)』が崩壊したことにより、黒い台座を中心とした場所が大崩落を起こして大穴が空いていた。アールは少し前から、それを巨大な貯水池として活用出来ないかどうかと思っていた。
「ツヲ兄様は中央に開いてしまった大穴に水を入れて生簀を作ってください。後で、川から魚を連れてきて放し飼いもしたいと思います。」

「うん、分かったよ。」


「じゃあ、わたしは?」
フォウルがアールの顔をジッと見る。

「えー、フォウル姉様は周囲の壁の修復をお願いします。平和な世界に辿り着くまではまだこの巨大防壁が役に立つ時が来るかもしれませんし、自然災害から国を守るためにも必要かと思います。それに、目印にもなるでしょう。生き残った人々や戦禍から逃れた人々、またその子孫の人々がここに来る時の目印に…。」

(それに、ここにマチネという国があった証にもなると思う…。たくさんの人がいて、一生懸命生きた証に…。)

フォウルはコクリと頷いた。
「了解。」


「あたいは何すりゃいいんだ?」
飛鳥花も体を動かしたくてウズウズしながら聞いた。

「えっと、飛鳥花義姉様は近くの森から材木を持ってきてください。それで家を建てたり、溶かして畑の肥料にしたりしましょう。」

「よっしゃ。たんまり採って来るぜ。」
飛鳥花は拳と手のひらを勢いよく合わせて気合いを入れた。





こうしてアールを中心に各人が動き出し、新しい国造りが始まった。

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この記事へのコメント

2016年01月05日 02:33
意外とアッサリ! 炎属性なのに空気が読める!
しかし懸念は他にも残っていますが・・・どうなることでしょうか。

佐久間「オネもアールには甘いな。」
山田「今までが厳しすぎたなだ。」
神邪「残る懸念は2つ・・・いや、3つですか?」
維澄「クライマックスは近そうだね。」
八武「医療と教育を整えよう。」
佐久間「死根也が真面目。」
八武「お菓子の国の人だもん♪」
山田「どういう。」
佐久間「ソルディエルは今どこにいるのやら。」
山田「懸念その1か。アールが仲介してくれるといいんだがな。」
2016年01月05日 14:24
コング「(国民・奴隷)かあ。まず美女及び美少女を面接し」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「まだ何も言ってない!」
火剣「ソルディエルは簡単ではない。命を投げ出している捨て身の戦士の心を動かすのは難しい」
ゴリーレッド「国造りに燃えているアールの目が生き生きしている」
火剣「希望は活力になるな」
コング「穴を埋めるのではなくそのまま貯水池にするか。頭いいなアール。さては素質があるかも」
火剣「飛鳥花のことを義姉様と呼んでいるのか」
コング「ツヲ紳士も満月の夜にはゼロを襲いたくなるかも」
ゴリーレッド「ないない」
火剣「そういう物語でもなさそうだ」
コング「何てことを」
ゴリーレッド「このまま順調に行くのか、大どんでん返しがあるのか」
コング「ツヲ紳士はきっと間違いを起こす」
ゴリーレッド「何を期待している?」
火剣「真冬1月がこの春の陽気」
コング「そう、ツヲ紳士も春の陽気に頭をやられてkinshinsokau」
ゴリーレッド「そんな展開はない」
火剣「あとはやはりソルディエルか。この状況をソルディエルはどう思う。宿敵オネと、同志のアールを目の前にして」
2016年01月06日 21:59
>アッキーさん
こりゃまたあっさりとオネも賛同。実の話、オネもツヲさんも妹達には超甘いです。愛の方向性が違うだけで。
さて、いくつかの懸念が残っていますが、しばらくは平穏(?)が訪れるかも。クライマックスはそう遠くなさそうですが…。
新しい国となると色々と整えなければならないでしょう。土地や建物を整備したら、次は医療と教育の充実。医者はどこだ?教師は…知識量ならオネ達が一番ですが。
ソルディエルは、今は眠っています。生きてはいますが、アールの魔法でギリギリ生きながらえたようなものなので、目覚めるには時間が掛かりそう。目覚めた時には、どうなるのか…。アールが上手く仲介してくれることを願いましょう。
2016年01月06日 22:02
>火剣獣三郎さん
新しい国を作るにあたって、いずれは国民も増やしていかないといけない時期が来るでしょう。しかし、人間の数自体が大変に減ってしまったので国民候補を見つけ出すのにも一苦労だし、無理やりはアールによって禁止されました。
今は眠っているソルディエルですが、どれだけの瀕死状態であってもいずれは必ず目覚めそうです。目覚めた時、仲間にするための説得で心動くかどうか…。マチネを滅ぼしたオネを目の前にすれば、アールの説得でも難しい…。
一方のアールは滅んでしまったマチネの再建というか、更によりよい世界作りという希望に取り組んでいます。この試みが成功すれば滅んだマチネやジュールズの者達の供養になるという思いもあるでしょう。そこには「第十五話 ゼロ2http://92428657.at.webry.info/201507/article_16.html」でソルディエルに頼まれたように、ここであった出来事を後世に伝えるという役目を全うしようとする意思も働いています。新しい国の建設も着々と進んでいるようで、このまま順調にことが運ぶといいですね。それとも、大どんでん返しが…?
2016年01月06日 22:02
ツヲ「さて、今日は妹の素晴らしさについて少しばかり語りたい。」
白龍「急にどうしました?この春の陽気が何か関係が?」
ツヲ「僕が24時間366日妹のことを考えていることは当然知っているね?」
白龍「366?ああ、うるう年の話ですか。」
ツヲ「まず、ゼロの魅力から行こうか。ゼロは妹達の中で一番年下だけれども発育は逆に一番だ。これは魔力総量と人間と精霊の割合とが関係してくるんだけど、僕が言いたいのはね…。ボインな妹って良いよね!ってことだよ。」
白龍「…。」
ツヲ「勘違いしないで欲しいが…。つるぺったんな妹も良いよね!」
白龍「…。」
ツヲ「ぺったんの魅力は後で語るとして、まずは…。」
オネ「まずは?」
ツヲ「何か失敗して落ち込んでいる時に、兄の様子を見に来た心配そうなゼロが「元気出してください、ツヲ兄様」と言って、ぎゅっと抱きしめられた時に感じる温かさと柔らかさを想像するだけで萌える!」
オネ「ほう?」
ツヲ「しかし、お兄ちゃんとしては常に妹にはカッコいいところだけを見せておきたいから、失敗なんてしたことないのが残念だ。実に残念だ。あ、でも、オ姉さんにぶっ飛ばされて気が付いたらゼロが介抱してくれてる時とかあるから、このシチュエーションも現実のものになるかもしれない!」
オネ「ふんふん。」
ツヲ「しかし、ゼロに「大丈夫ですか?ツヲ兄様?」と心配そうな声で囁かれると「大丈夫さ」と答えてしまうから抱きしめルートには突入出来ないんだ…。ここで妹に甘えたいという誘惑と兄としてカッコいいところ見せたいというジレンマの狭間に常に立たされている僕は紳士として天から試されているのだ!」
オネ「そうか、そうか。じゃあ、死ぬほどのダメージを受けるところからコンティニューだな。」
ツヲ「ギャー!オ姉さん!?いつからそこに!?」

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