英雄再来 第二十話 オネの暇潰し4

オネの回想。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(あの日も結局は…。)
オネの脳裏には昔の出来事がつい昨日のことのように浮かんでいた。


―――――――――――――――――――――――――――――――


「黙れクソババア!やってみなければ分からんだろうがあ!」

悪態を吐きながらオネは立ち上がり、呪文を唱えた。

「灼熱の炎よ!闇の爆炎よ!精霊すら喰らう真の炎よ!その姿をもって、眼前の敵を破壊せよ!炎大神霊(ジャグルドーマ)!!」

自身の魔力を放出し、精霊界から炎を導く。導かれた数多の炎は集まり練り上がり巨大な炎の化け物となる。その大きさは神話に出てくる巨人を髣髴とさせた。

「だから―――。」

「放てええええ!!」
オネの叫びに呼応にして炎大神霊(ジャグルドーマ)は灼熱の炎を吐き出す。大地を焼き尽くす無尽蔵の炎がチュルーリに襲い掛かる。

「その時点で負けていると、言っている!」

チュルーリの髪の毛が突然宙を覆うほど長く伸びた。しかし、それは突然伸びたのではない。今まで不可視魔法で見えなくなっていただけだった。

「水泡溺死散弾射!」

髪の毛一本一本から魔方陣が出現し、水の塊が次々と放たれる。その総量は炎大神霊(ジャグルドーマ)を超え、吐き出される灼熱の炎も炎大神霊(ジャグルドーマ)自身も掻き消された。

「オネ、自覚しろ!」

炎大神霊(ジャグルドーマ)が水で相殺された瞬間にチュルーリはオネに殴りかかっていた。

「今のお前は弱いんだと!」

小さな体から放たれる拳の一発、蹴りの一撃、そのどれもがオネを吹き飛ばし、叩き付け、徹底的に痛めつけた。その速過ぎる連続攻撃の前にオネはついに防御姿勢をとる事すら出来なくなっていた。

「確かに人間相手ならお前は誰よりも強いだろう!人間が何千、何万いようがお前が勝つ!だが、破壊力ではフォールスにも劣り、魔力技術ではセアルにも劣り、覚悟ではディルティにも劣る!お前はまだ自覚が足りない!自分が強いことを知っていても、人間も強いんだという感覚がない!ハイジマバイカに勝とうと豪語するなら、まずは自分に足りないものが何なのかを自覚しろ!さもなければ、足りないものを手に入れることすら出来はせん!オネ、今のお前に一番足りないものは―――――――――!」


―――――――――――――――――――――――――――――――


(ああ…。今思い出しても腹が立つ…!クソが…!クソが…!クソがあああああ…!あの頃の私は何であんなに弱かったんだ!!!!何度思い出しても自分の弱さに反吐が出る…!クソが…。)

揺らめく蝋燭の明かりの中、歯軋りが静かに響いていた。

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この記事へのコメント

2016年01月17日 21:28
火剣「オネにもこんな時があったのか」
ゴリーレッド「オネとゼロの関係だったのか」
火剣「自分がこういう痛い目を見ながら訓練されていたから、ゼロにも容赦ない」
ゴリーレッド「でも今強くなったことをチュルーリに感謝しているわけではなさそう」
火剣「相当悔しかったんだろう」
コング「♪ゆーきやコンコン、霰やコンコン」
ゴリーレッド「話の腰を折る名人か?」
コング「明日は積雪の恐れあり。早めの出勤や情報確認など万全の態勢で挑もう」
火剣「注意喚起は大事だ」
コング「オネの強さの秘訣は根性か。『あの母の厳しさのおかげ』なんて言ったら、まとも過ぎてまともなままだ。激しい怒りは向上心に繋がる」
ゴリーレッド「雪が降るのはコングのせいだったか」
火剣「今のおまえに一番足りないもの? 何だろうな」
コング「強さに関しては全てを手にしているように見えるが」
ゴリーレッド「足りないものか」
火剣「チュルーリが慈悲なんて言うわけないし」
コング「ヒントはハイジマバイカか」
火剣「そうかタイトルは英雄再来」
ゴリーレッド「サブは暇潰しだが・・・」
2016年01月17日 23:35
チュルーリのスパルタ教育! オネの異なる一面が見られるシーンですが、チュルーリも熱血?
懐かしい名前が出てきていますね。

八武「麗しき母娘愛のシーンだ!」
維澄「これが秘密の特訓かと思うと萌えてくるね。」
神邪「僕も母さんに特訓されたものでした。しみじみ。」
山田「微笑ましい・・・のか?」
佐久間「父親と息子がキャッチボールをするくらい、微笑ましい光景だろう。まァ、たとえ周囲から見て微笑ましい光景であろうとも、子供が何を考えているかは別だがな。」
山田「まず微笑ましく見えるかどうかが俺には高いハードルだ。」
八武「可愛いと思わないのかね?」
山田「まあ、姿形はな。」
佐久間「バックベアード!」
山田「やめろ。」
佐久間「それはさておき、人間は覚悟すると別物になる。これはガチ。」
八武「人間でなくとも同じことかもしれないねぃ。」
2016年01月24日 12:02
>火剣獣三郎さん
かつてのチュルーリとオネの関係は、そのまま現在のオネとゼロの関係と同じですね。肉親でありながら全力で戦える。オネのスパルタ訓練(?)は母親であるチュルーリ譲りなのです。今のオネがあるのはチュルーリの特訓の賜物ではありますが、それを素直に口に出すようなオネではありません。多分、生涯そんなことは言わないかもしれません。しかし、オネの負けん気は人一倍、いや人二倍以上かもしれません。あらゆる力及ばないことを悔しく思い、怒りに変えて、そして強さに変えることが出来るのがオネ。チュルーリは特訓のたびにオネに「足りない、まだ足りない」と色々なことを言い続けてきました。その結果、今現在のオネは強さに関することなら全て手にしたのかもしれません。それゆえに失ったものはなんだったのか…。
タイトルの英雄再来の英雄とは誰を指す言葉なのか。実は、この話を書き始めるに当たってその人を決めてから製作を開始しました。現在はのんびりと暇潰しをお楽しみください。
2016年01月24日 14:38
>アッキーさん
六児の母となったチュルーリの厳しいこと、厳しいこと。といっても、この教育を受けられたのは主にオネです。他の子ども達が成長する前にチュルーリは少し長い眠りに就いてしまうので。チュルーリの口から漏れる言葉の中にどこかで聞いたような人の名前が…?チュルーリが人間をどう見ているのかが微かに分かる場面なのかもしれません。そして、チュルーリも最初は梅花さんと、どんなやり取りがあったのやら…。歴史は繰り返しているのか…?
いやあ、実に微笑ましい母親と娘の触れ合いシーンを書けて私も少し満足です。(←これを微笑ましいと言い張る勇気)
覚悟を決めた人間の強さをチュルーリは歴史の中で幾度となく見ています。そして、見ただけでなく、実際に触れて、対峙して、戦いもした。一方で、オネ達はチュルーリほど人間と接する機会が多くありませんでした。大半は封印されていましたし、建国した真ん中の国では戦うのではなく、受け入れる関係だった。オネがそういう覚悟を決めた時の人間の強さを目の当たりにするのはこの時からもう少し後になります。

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