英雄再来 第二十四話 ツヲ放浪記6

海の果てはどこにある?

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

その日の夜、ツヲはルアルの集落で小さな子ども達と共に夕飯を囲んでいた。ツヲはルアルと他愛もない話を楽しみ、ツヲの作り出した水精霊(アクアリウス)や水神霊(ウンディーネ)はご飯を食べた後の子ども達と一緒に遊んだ。穏やかで、温かく、そして掛け替えのない時間だった。そして、その穏やかな時間はゆっくりと終わりの時を迎える。

「皆、寝ちゃったね。」

「そうですね。」

「ツヲ、もう行くん?」

「はい。」

「そっか…。ツヲは旅人やもんね。今度、近くに来ることがあったら遊びに来て欲しか。あの子らも喜ぶと思うけん。」

ツヲは軽く微笑んで、そして歩き始めた。

「次、会えるの、わっちも楽しみにしてるけんね。」

そうして別れたツヲとルアル。その再会は意外にも次の日に実現してしまうのだった。









日が再び昇り始めた頃、ツヲは再び砂浜に来ていた。そこから広がる海はどこまで遠くを見ても果てがなかった。ツヲは意を決して海に向かって歩き始めた。この海の先には何があるのか。海の底には何があるのか。水の魔法使いとして、この海というものを全て丸ごと理解したい。ツヲはまるで新しい物語を読むかのような高揚感に包まれていた。ツヲは旅人の服を脱ぎ捨て、生まれた時の姿で海へと入っていった。

海の水はひんやりしていて、砂に足が取られる感触が新鮮だった。それも次第に足がつかないところまで来ると、ツヲは人間ではない精霊としての姿を解放した。海の水に混じって巨大な水の魔物が姿を現す。周りの水を全て自分の意のままに操り、攻撃も防御も自由自在。相手を絞め殺すことも刺し殺すことも溺死させることも容易に出来る。水を硬質化させ盾にすることも、何重にも水の膜を張って何も通さないようにすることも簡単に出来る。おそらくはこの世界で勝てるものなど片手で数えられるほどしかいない、化け物の中の化け物。ワーテル・ツヲ・チュルーリの本当の姿。しかし、その巨体すらも海は簡単に包み込む。

(『広いなあ…。』)

ツヲは改めて海の広さを全身で感じ取っていた。人間形態の時よりも水に対する感覚が更に鋭敏になり、海の水のあるところ全てが自分の手足のように感じていた。

(『この先には何があるんだろうか。』)

ツヲはそのまま海の果てまで感覚を伸ばした。水精霊の性質を持つツヲにとって水のあるところは自分の手であり、足であり、目でもある。海の果て、その果て、更に果て。ツヲは好奇心に身を任せ、海の果てを探した。

(『?』)

ところがである。急にツヲの感覚が途切れた。果ては確かにあった。しかし、そこに何かがあるという感覚がない。少なくとも水はない。どうやらそこが海の果てで間違いなさそうだった。しかし、水がなくとも水分ならあるはずなのだが、それも感じられない。それどころか何かの物質があるような感じもしない。何もないのだ。

(『どうなってる…?』)

何もないならば水はそちらに流れる。しかし、その果ては水の流れすらない。変な言い方だが、何もないものだけがある、そんな感覚。時間も空間も理すらもそこにはないような気がした。

『いらっしゃ(ザー)。』

『っ!?』

突然、ツヲの耳に機械の雑音交じりの声が聞こえてきた。

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この記事へのコメント

2017年09月10日 21:18
穏便に別れたのか・・・と思いきや、翌日に再開してしまう!?
あああ嫌な予感が止まらない。

この雑音、どこかで覚えがあるような。
あの“魔女”とか・・・。

佐久間「梅花、チュルーリ、オネ、アルパカの4体だな。」
山田「待て最後。」
佐久間「ドンが抜けていたか。」
八武「そこにミッドを加えて5名・・・いや、ここで言ってる戦闘力には入らないねぃ。」
山田「ならば5人目は、未来のツヲ自身だ!」
2017年09月10日 22:53
>アッキーさん
大地も人の心も荒廃した世界。そんな中での数少ないオアシスにも、いつかは防ぎきれない炎が押し寄せる日が来るでしょう。その顛末はどうなるのか…。

さて、聞き覚えのある雑音と共にやってきたのは例の魔女!正解です!

ツヲ「僕に勝てる相手かぁ…。」
白龍「この段階ではピアリティは病弱のためにおそらくは亡くなっているでしょう。フォールスも寿命かな。」
ツヲ「でも子どもがいるんだよね。」
白龍「そうですね。二人の子孫が後の白姫さんとかの「Engage ment ring」の魔法使いにあたる訳ですから。」
ツヲ「僕より強いのは母さんとオ姉さんはもちろんとして、その母さんより強いと言われている祖母さん。母さんはよくハイジマバイカと呼び捨てにしてたっけ。そして、闇の大精霊アルドンパカ。でも、世界は広い。どこかに祖母さんのような強い者がいるかもしれないね。」
白龍「そして魔法使いという括りではなく英雄という括りですらない、魔女という存在も…。」

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