英雄再来 第二十六話 魔女WW(ダブル)2

敵なのか、味方なのか、それが問題だ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

全身は真っ黒。輪郭だけは白。目の前の奇怪な存在、魔女WW。今のエクスにとって一番重要なのは、魔女を名乗る奇妙な生命体が自分の敵なのか、それとも味方なのか、ということだ。


判断しなければならない。それがエクスの生死を分ける。


相手が敵か味方か即座に判断出来ない場合、相手が敵であるかもしれないと疑いの目を向けるところから思考を出発させる。敵を味方であると誤認する最悪の判断を防ぐためである。

正しい判断を行う為に、出来る限り多く正確な情報を集めたい。エクスは魔女WWの様子を窺いながら思考を整理していった。


まず、魔女WWは襲ってくる様子はない。姿こそ奇妙奇天烈ではあるが、態度は好意的ですらある。しかし、魔女と名乗る以上、魔法使いと何らかの関わりがあるのではないだろうか。特に魔女WWの背中から生えた枯れ木のような突起の先で回っているものは、魔法使いが魔法を使う時に浮かび上がる魔法陣に酷似している。

また、ペリドットとの戦闘中、意識を失う直前に魔女WWの声を耳にしている。が、その後どのような経緯でここまで来たのかは不明。というか、ここがどこかも分からないし、どうして傷が治っているのかも分からないし、何故逆さまで浮いているのかも分からない。魔女WWに助けられたのかどうかも不明。ペリドットがどうなったのかも不明。分からない事だらけだ。

魔女WWに聞けば答えてくれそうな雰囲気ではあるが、敵か味方か分からない以上、回答の真偽は分からない。不確定情報を無闇に増やす訳にはいかない。出来るなら今ある情報で判断したい。

もし、ペリドットが生きていれば気絶していたアタシを殺さないはずがない。ならば、ペリドットが死んだか、魔女WWに助けられたかのどちらか、もしくはその両方か。

また、魔女WWが敵ならば今、アタシが生きていることこそが奇怪である。しかし、敵でないとするならば魔女WWがアタシを助ける理由はなんだろうか。アタシは魔女WWという存在を今まで見たことも聞いたこともなかった。つまりは初対面だ。見ず知らずのアタシを助ける理由などあるのだろうか。もしかしたら、アタシを助けるフリをしてマチネの内部情報を聞き出そうとしている、という可能性はないだろうか。

情報が足りない…。絶対に敵であるという確証もなければ、必ず味方であるという保証もない。しかし、どこかで判断しなければならない。ここは魔女WWとの対話の中で真実を探るしかない、か?



魔女WWはエクスの警戒心を解こうとするかのように、にっこりと笑っていたが、エクスは一向に臨戦態勢を崩さない。

『えっと(ザザッ)…。』

魔女WWは再び口を開いた。しかし、言葉と共に雑音も零れる。

『あっと、(ザー)調子が悪(ガガッ)。うりゃ!』

魔女WWは自分の手で自分の頭を思いっきり殴り付けた。
ガンッ!という金属音が辺りに響いた。


(えっ!!?…頭が、機械?)


瞬間、エクスの中で唐突に歯車が噛み合った。エクスの脳裏に浮かんだのはマチネの王、ジェゼナの姿であった。

王道具『侵食統一(ジェゼナ・グルード)』を四肢の代わりとしたジェゼナは、時と共に全身が機械に侵食された。一時期は意識を失って永き眠りに就いていたが、魔法使いに対する憎悪と執念の為せる業なのか、近年になって目覚めたジェゼナは全身機械であっても意思があり話すことが出来た。

そして、魔女WWの声に混じる独特の雑音。どこかで聞いたことがあると思ってはいたが、マチネの放送器具で拡散放送する時に時々混じる雑音にソックリなのだ。目の前の魔女WWの容姿と放送器具がかけ離れていたために頭の中で結びつかなかったが、魔女WWが金属であるという事実から完全に一致した。

本来なら素性も得体も知れない者を信用するなど有り得ない話だ。だが、全身が機械である者などマチネの関係者を置いて他にはいない。エクスは目の前の異形の者とジェゼナを重ねた。見ず知らずなどではない、魔女WWはマチネに縁ある者なのだ。保障こそないが、エクスはその結論が腑に落ちた。魔女WWは味方である、と。


『あー、あ~、あああっ、あっ…直った直った。ごめんなさいね、変なところ見せちゃったかな。これでしばらくは大丈夫なはずよ。』

発声練習を繰り返しながら、雑音が消えたことを確認し、魔女WWはくすくすと笑った。その声は十代の少女の声であった。


エクスは魔女WWを味方だと判断はしたが、それが正しいかどうかは分からない。自分の中で納得は出来たが、それが正しいとも限らない。それでも前に進まなくてはならない。エクスは一抹の不安と共に、意を決して魔女WWに話しかけた。

「…アタシはマチネ特務隊副隊長のエクスです。今の詳しい状況を教えて頂きたい。」

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